東北の未来をつくるために私たちができること

2015-01-28

本コラム“あらたなView”では、さまざまな市場や業種、サービスにおける最新情報について現場のナマの声をお伝えしていきます。第1回は、東北地区における、PwCあらた監査法人の活動状況をご紹介します。

PwCあらた監査法人、成長戦略支援本部の椎野です。当コラムに目を留めていただきありがとうございます。

さて、東北未来創造イニシアティブという名前の活動をご存じでしょうか。その名のとおり、震災復興地域である東北の未来を、民間経済人の叡智を集めて切り拓いていこうとの思いで、東北大学地域イノベーションセンターと東北ニュービジネス協議会を運営母体とし、経済同友会や復興庁の後押しを得て2012年に始まった活動です。

PwC Japanでは、プライスウォーターハウスクーパース株式会社所属の大達 一慶が同イニシアティブの運営事務局(仙台)に出向しています。加えて、東北未来創造の活動の一つの柱である事業家支援人材育成道場の運営にあたって、PwCあらた監査法人所属の5名(水野 文絵、眞田 崇、志村 博、髙橋 秀一、椎野 泰輔)が、地元事業家の皆さんの構想を事業戦略や会計の視点から支援するため、2週間に一度宮城県気仙沼市を訪問して活動にあたっています。

当初、プライスウォーターハウスクーパース株式会社の東北イノベーション推進室から私に『人材育成道場のために会計士を選抜して派遣してくれないか?』とのお話しをいただいた時は、私たちに何ができるのか全く分かっておらず、ぜひ協力させてくださいと手を挙げてからも、2014年10月の気仙沼道場開講日までは大変不安な気持ちで過ごしたのを今でも覚えています。今となってはこのような機会に参画できた喜びと使命感、また何より気仙沼の事業家の皆さんと顔を突き合わせ、東北の未来に向けて共に真摯な活動をさせていただいていることに、声をかけてくれた東北イノベーション推進室とこのご縁に心から感謝しています。

人材育成道場自体は気仙沼地区以外にも釜石・大船渡地区で並行的に運営されていて、それぞれ20名弱の塾生をいくつかのグループに分け、グループ単位の活動をしています。そこでは、道場のメンターとして参加しているあらた、あずさ、トーマツ、新日本の4つの監査法人から派遣された会計士や、日本政策投資銀行、マッキンゼー、博報堂といった各分野の専門家集団が、塾生一人一人の将来を描いた事業構想を半年間にわたって具体化していく支援をしています。特に、将来3年間の事業計画(利益計画)を具体的な数値を用いて策定する際には、キャッシュフロー計算書を含む基本財務諸表の作成や決算の締め方といった経理財務の基本知識と経験が重要です。普段からその分野で多くのクライアントに対して厳しい立場での監査やアドバイスを実践している私たち会計士が貢献できることが非常に多く、私たちの業務現場で培った会計スキルには多様な役立て方があるのだなと改めて気付かされる毎日です。

塾生の多くは気仙沼・南三陸で永年にわたって営業していた家業ないし就職先が震災により大幅な縮小に追い込まれた方々ですが、これらの事業を地元で復興させ、あるいは全く新しい事業を始めることで、地域経済の回復に寄与したいと切に願っておられます。日ごろ震災復興地域に身を置かない私たちのような立場の者は、塾生の皆さんの複雑な感情や内なる心の声を簡単に理解できるはずもありませんが、冷静に(ある意味では冷徹に)、彼らが描いた事業計画が現実的なのかを数字の面から見極め、その実現可能性を徐々に高めていくという作業を一緒に繰り返すことで、将来の地域経済を担う経営者の皆さんの熱い想いに寄り添うことができると考えます。

今回担当している気仙沼道場は、3月下旬に卒塾式を迎えます。PwC Japanでは今後も東北沿岸地域の事業家の皆さんの未来を応援するため、人材育成道場への派遣者も増員して活動の規模を大きくしていきたいと思います。ご興味のある方はぜひ一度東北未来創造イニシアティブのホームページもご覧いただき、いつでも椎野までお問い合わせください。

PwCあらた監査法人
成長戦略支援MDS本部パートナー
椎野 泰輔