PwC、「第21回世界CEO意識調査」の結果をダボス会議に合わせて発表

CEOの世界経済への楽観的見方が急拡大する一方、成長への脅威に対する懸念も同時に強まる

 

  • 世界経済の成長に対する楽観的見方は過去最高水準に達し、あらゆる国で強まる
  • 2018年の自社の成長を牽引する市場として、米国は中国を引き離しリードを広げる
  • CEOの半数以上が自社の人員拡大を見込む
  • テロリズム、地政学的な不確実性、サイバー脅威、気候変動が成長への脅威として浮上

2018年1月23日
PwC Japanグループ

*本プレスリリースは、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)開催に合わせ、PwCが2018年1月22日にスイスのダボスで発表した「第21回世界CEO意識調査」に関するプレスリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

2018年1月22日ダボス(スイス)-世界経済の環境に関して、少なくとも短期間において楽観的なCEOの割合は過去最高水準に達しています。これは、世界のCEO約1,300名を対象に行ったPwCの「第21回世界CEO意識調査」の主要な結果の1つであり、この調査結果は本日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の開催に合わせて発表されました。

今後12カ月間で世界経済の成長が改善すると回答したビジネスリーダーは57%でした。この割合は昨年(29%)の約2倍であり、PwCが2012年に世界経済の成長に関する質問を設けて以来の最高水準となりました。

米国では世界経済の成長に楽観的見方をしているCEOの割合が59%と、選挙を巡る不確実性があった期間(2017年)の24%から2倍以上となりました。ブラジルでも世界経済の成長回復を楽観視するCEOの割合は大きく増加しました(38%増の80%)。また、日本(2017年の11%に対し2018年は38%)や英国(2017年の17%に対し2018年は36%)のように、それほど楽観的でない国でも、世界経済の成長に楽観的なCEOの割合は昨年の2倍を上回りました。

「CEOが世界経済に対して楽観的見方をしている背景には、非常に強い経済指標があります。株式市場が活況を呈しており、世界中の主要市場の多くでGDPの拡大が予想されているため、CEOが非常に強気になるのは当然のことです」と、PwCのグローバル会長であるボブ・モリッツは述べています。

短期的な自社の売上拡大に自信を深める

経済に対するこうした楽観的見方は、自社の見通しに対するCEOの自信につながっています(その伸びはあまり大きくないものの)。自社の今後12カ月間の成長見通しに「非常に自信がある」と回答したCEOは42%と、昨年の38%を上回りました。

国別の結果はさまざまです。CEOの見通しは一部の主要市場で改善し、オーストラリアが4%増の46%、中国が4%増の40%となるなど、自社の今後12カ月間の成長見通しに「非常に自信がある」と回答したCEOの割合は上昇しました。

米国では、CEOの自信が回復しています。前年の神経をとがらせた選挙を経て、新政権が早々に規制や税制改革に重点を置いたことから、1年後の自社ビジネスの成長見通しに対する自信は2017年の39%から2018年には52%まで大きく高まりました。また、北米は、過半数のCEOが自社の今後12カ月間の見通しについて「非常に自信がある」と回答した唯一の地域です。

英国では、ブレグジットの交渉に大きな進展があったのはごく最近であるため、ビジネスリーダーの短期的な自信が落ち込んだことに意外性はありません(2017年の41%に対し、2018年は34%)。

今年、自社の今後12カ月間の見通しに最も自信を持っている業種のトップ3は、テクノロジー(48%が「非常に自信がある」)、ビジネスサービス(46%)、医薬品・ライフサイエンス(46%)であり、これら3つの業種全てにおいて「非常に自信がある」と回答したCEOの割合は、世界水準の42%を上回りました。

成長戦略は昨年の調査とほぼ変わらず、CEOは本業の成長(79%)、コスト削減(62%)、戦略的提携(49%)、M&A(42%)に注力すると回答しています。起業家やスタートアップ企業との協業に関心があると回答したCEOの割合は、小幅な伸びにとどまりました(2017年の28%に対し2018年は33%)。

成長が見込める上位国:引き続き米国が強く、さらに中国を引き離す

米国市場におけるCEOの自信はそれ以外の国にも広がっており、米国以外を拠点とするCEOが挙げる、今後12カ月間に成長を見込める市場でも、米国はトップとなりました。今年、米国は中国を引き離して差を広げました(米国の46%に対し中国は33%と、中国に対する米国のリードは2017年に比べ2%拡大しました)。

ドイツ(20%)は引き続き3位、次いで英国(15%)が4位となった一方、インドが日本を抜いて2018年の最も魅力的な市場の5位に躍進しました。

PwCのグローバル会長であるボブ・モリッツは次のように述べています。「世界経済の成長に対する自信が強いとはいえ、ビジネスリーダーは短期的成長を確保するために、安全な投資先を求めており、また必要としています。消費者へのアクセス、人材スキル、資金、ビジネスを支える規制環境が主要市場の地位を確固たるものとし、ビジネスリーダーにとって短期的な成長目標の達成につながります」

雇用とデジタルスキル:従業員数は増加すると見込まれ、ビジネスリーダーはデジタルスキルを持つ人材の確保に懸念を抱いている

短期的な売上拡大への自信は雇用の伸びにつながっており、2018年にはCEOの54%が人員拡大を計画しています(2017年は52%)。人員削減を見込んでいるCEOは18%にとどまっています。

新規雇用に最も強い意欲を見せている業種は、ヘルスケア(71%)、テクノロジー(70%)、ビジネスサービス(67%)、通信(60%)、ホスピタリティ&レジャー(59%)です。

特に、デジタルスキルに関しては、CEOの4分の1以上(28%)が、拠点を置く国での人材確保に強い懸念を示しており、強い懸念を抱いているCEOの割合は南アフリカで49%、中国で51%、ブラジルで59%まで上昇しています。

全体をみると、CEOの22%が鍵となるデジタルスキルを持つ従業員の確保について、27%が自社の業界での確保、23%が経営層における確保に強い懸念を示しています。

必要なデジタル人材を惹きつけて育成するための重要な戦略として挙げられたのは、デジタル化時代の労働環境の整備、研修および開発プログラム、他のプロバイダーとの協業です。

テクノロジーが雇用や人材スキルに与える影響

PwCの最近の調査によれば、労働者はテクノロジーが雇用見通しを改善することに楽観的であると示されている一方、CEOは従業員の再教育を推進することや、オートメーションやAIがどのように雇用へ影響を及ぼす可能性があるかについて透明性を高めることが、一段と重要な問題になりつつあることを認めています。

主にエンジニアリング・建設(73%)、テクノロジー(71%)、通信(77%)の業種では、3分の2のCEOが、テクノロジーに役割を取って代わられる従業員を再教育する責任があると考えています。CEOの61%はオートメーションやAIが自社の従業員にどのように影響を及ぼすかについて、ある程度透明性を高めることで、従業員との信頼を築いています。

PwCのグローバル会長ボブ・モリッツは以下のように述べています。

「今後も成長するため、私たちの教育システムは、適切なスキルを持つグローバル人材を強化する必要があります。政府、地域社会、企業は、人材と機会をマッチさせるため、密接に連携する必要があります。これは学生を教育し従業員を訓練するための新たなアプローチを開発することを意味し、テクノロジーが創出する(新たな)雇用市場において重要な役割を果たします。また、従業員が働き続け、キャリアを通じて新たなスキルを習得することを奨励し、その機会を提供することも意味します。見習い(アプレンティスシップ)やインターンシップへの関心が示すように、ビジネスや業界に関連した生涯にわたる訓練は不可欠です」

デジタルやオートメーションへの移行は、金融サービス分野で急速に進んでいます。銀行・資本市場および保険業界のCEOの4分の1近く(24%)は雇用削減を計画しており、銀行・資本市場の雇用の28%はテクノロジーやオートメーションを要因に大幅に消失すると予想されています。

成長に対する脅威:CEOはコントロール不可能な社会的脅威が広がることを恐れている

世界経済に対する楽観的な見方にもかかわらず、ビジネス、社会、経済など非常に広範囲の脅威に対する懸念が高まっています。CEOは地政学的な不確実性(40%)、サイバー脅威(40%)、テロリズム(41%)、鍵となる人材の獲得(38%)、ポピュリズム(35%)に関して「非常に懸念している」と回答しています。これらの脅威は、為替相場の乱高下(29%)や消費行動の変化(26%)といったビジネスの成長見通しに関する従来馴染みのある懸念を上回っています。

この変化が裏付けるように、テロリズムについて非常に懸念しているとの回答は前年の2倍となり(2017年の20%に対し2018年は41%)、テロリズムは成長に対する脅威のトップ10に入りました。CEOにとって最大の懸念は依然として過剰な規制の脅威であり(42%が非常に懸念していると回答)、3分の1以上のCEO(36%)が引き続き租税負担の増加を懸念しています。

中国のCEOは鍵となる人材の獲得を最も強く懸念しています(2017年の52%に対し、2018年は64%)。米国(63%)と英国(39%)では、CEOの最大の脅威として、サイバー脅威に対する懸念が過剰な規制を抜いてトップとなりました。また、ドイツでは、サイバー脅威が2017年の5位から2018年に3位(28%)まで順位を上げました。

気候変動や低炭素投資に対し自発的に取り組むことで合意したパリ協定が190カ国を上回る国々に採択されてから1年が経過し、気候変動や環境破壊が自社の成長見通しに及ぼす脅威を懸念すると回答したCEOの割合は、2017年の15%から、現在31%まで倍増しています。

注目を集めた異常気象やパリ協定からの米国の離脱により、気候変動のリスク、規制、回復力に対する企業の取り組みへの関心は大きく高まりました。中国では、ビジネスリーダーの半数以上(54%)がビジネスの成長への脅威として気候変動や環境破壊を非常に強く懸念していると回答し、その割合は地政学的な不確実性や保護主義に対する懸念と同水準に達しました。

ボブ・モリッツは次のように述べています。「懸念を強めている要因は、ビジネスリーダーが属する市場の動向よりも、社会的および地政学的な変化が大きくなっていることにあります。産業界が自ら直接対応することに慣れていない脅威により、売上拡大への中長期的な自信が損なわれていることは明らかです」

信頼とリーダーシップ:将来の経済成長が多くの人に恩恵をもたらすのか、それとも少数の人のみにとどまるのかという点に関して、CEOの意見は割れる

今年の世界経済フォーラムのテーマに共鳴するように、CEOは私たちが分断された世界に生きていることを認識しています。将来の経済成長が多くの人に恩恵をもたらすのか、それとも少数の人のみにとどまるのかという点に関して、CEOの意見は割れています。彼らは将来の繁栄を評価するにあたり、世界が新しい多面的な基準を取り入れつつあると考えています。

ボブ・モリッツは次のように述べています。

「社会的脅威の広がりに対してCEOが懸念を強めていることから、企業がますます分断されていく世界をどのように舵取りするかに注目が集まっています。PwCが調査を行った全ての地域や国のCEOは、成長や利益を測定する上で、従来の方法だけでは将来的に機能しなくなることを認識しています。特に、持続可能な成長目標という点から、今後数年間にわたり企業のステークホルダーにとって適切な方法で、企業の目的を捕捉して伝える測定基準を開発・定義する作業が増えると考えられます」

企業に対する信頼について重要な課題をみてみると、CEOはより短期間に結果を出すこと(60%)が最大の課題であることを認識しています。しかし、これに次ぐ重要な課題には大きな変化が見受けられ、リーダー個人が不祥事を含めて説明責任を果たすべき(59%)というプレッシャーが高まっていることについて、半数以上のCEOが指摘しています。CEOの3分の1以上は、政治的・社会的なスタンスを公に示すべきである(38%)という従業員や顧客からのプレッシャーが強まっていると回答しています。

銀行・資本市場(65%)、ヘルスケア(65%)、テクノロジー(59%)の業種では、経営層の説明責任の割合が平均を上回りました。これは、米国(70%)やブラジル(67%)、英国(63%)でも同じように期待されています。ダイバーシティ、移民、インクルージョン(多様性の受容)、同一賃金に関する議論が注目を集めていることから、特に米国(51%)や中国(41%)、英国(38%)で、CEOが政治的・社会的な問題に主体的に関わることへの従業員の期待が高まっています。

以上

*本調査の詳細[英語]は、http://www.pwc.com/ceosurveyに掲載しています。


注記

  1. この調査は2017年8月から11月にかけて実施され、85カ国1,293名のCEOから回答を得ました。データのサンプル数は全ての主要国におけるCEOの見解を公平に反映するために、各国のGDP加重で算出されています。インタビューは、電話(11%)、オンライン(77%)、郵送または面談(12%)によって行い、定量インタビューはいずれも極秘扱いで実施されました。売上高別では、10億米ドル以上の企業のCEOが40%、1億~10億未満の企業のCEOが35%、1億米ドル未満の企業のCEOが20%でした。非上場企業のCEOは56%でした。
  2. 気候変動:気候変動と環境破壊は、アジア太平洋や西欧でビジネスに対する脅威のトップ5に挙げられており、エネルギー(石油・ガスを含む)および電力・公益事業、建設・エンジニアリング、輸送・物流の企業の成長見通しにとってトップ5に入る脅威として認識されています。
  3. グローバリゼーション:グローバリゼーションは「貧富の格差縮小」を促すのかという設問に対し、CEOの約40%が「全くそう思わない」と回答しています。CEOの30%は、グローバリゼーションが「気候変動や資源不足の回避」に寄与していないと回答しました。4人に1人以上のCEOは、グローバリゼーションが「世界的な課税システムに係る整合性と公平性」の改善に全く寄与していないと回答しています。
  4. 信頼:現在、CEOの71%が従業員と経営層との間の信頼関係の強さを、74%が自社と顧客との間の信頼関係の強さを測定しています。サイバーセキュリティ、ダイバーシティおよびインクルージョン(多様性の受容)、事業戦略や計画における透明性向上への取り組みは、注目を集めている重要な分野です。
  5. 人員削減を見込んでいるCEOは18%にとどまった一方、CEOは従業員の5人に4人(80%)がテクノロジーにより、何らかの形で、ある程度(52%)または大幅に(28%)影響を受けると予測しています。 
  6. PwCの2018年グローバル・イノベーション1000の調査結果によれば、回答者の52%は、経済的ナショナリズムが企業のR&Dへの取り組みに中程度もしくは重大な影響を及ぼし、現在の統合された相互依存のネットワーク型から独立した自律的なR&D拠点へと発展すると考えています。

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