不動産の新しい動向アジア太平洋2016年レポート

  • 不動産投資と開発投資の見通しランキングで東京が首位の座を確保
  • コア市場や安全な市場に資金が流入

本プレスリリースは、2015年12月7日にアーバンランド・インスティテュート(ULI)とPwCが発表したプレスリリースの翻訳です。

2015年12月7日
PwC Japan

2015年12月7日 東京 -アーバンランド・インスティテュート(ULI)とPwCは本日、不動産動向調査報告書である「Emerging Trends in Real Estate® Asia Pacific 2016(不動産の新しい動向 アジア太平洋2016年)」を共同発表しました。本調査の結果、豊富な資金がコア市場に流入し、また最も先進的で流動性の高い市場への動きを反映し、東京が不動産投資と開発投資の見通しランキングで昨年に続き首位に選ばれました。今回の調査では総じてオーストラリアと日本の評価が高く、東京、シドニー、メルボルン、大阪がアジア太平洋地域の最も有望な市場として上位4位を占めており、続いてホーチミンシティが5位にランクされています。

投資見通しと開発見通しのいずれも一位となった東京はアジアでナンバーワンの一番手市場であり、投資家のチェック項目をすべて満たし、市場の厚みと流動性で他を凌駕しています。さらに、量的緩和政策の継続により不動産価格の上昇とキャップレートの圧縮が大幅に進んでおり、優れたキャッシュ・オン・キャッシュ・リターンを生み出しています。ただし、金融緩和と低金利に支えられ取引が活発に行われているものの、市場の減速を懸念する声も聞かれます。短期的な見通しは良好とはいえ、価格の停滞や下落を伴う減速は、高LTVの借入金のリファイナンスが必要な投資家にとって問題になりかねないと報告書は指摘しています。

ULIジャパンカウンシル会長の森 浩生・森ビル株式会社取締役副社長執行役員は「アジアの不動産市場は、世界の中央銀行が約8年間にわたって行ってきた金融緩和の産物です。米国では緩和政策が終了したようですが、日本では流動性の供与が続いており、また多くのアジア諸国で金利が一年前に比べ低下しています。アジアと世界の機関投資家もアジアの不動産への資金配分を増やしており、その結果、取得対象資産が減っている中でそれを狙う資金が増え、現在のサイクルが峠越えの様相を強めているにもかかわらず、ほとんどの市場と部門にわたって不動産価格を押し上げています。この状況はまだ数年続くと考えられ、多くの投資家が、低リスクで納得の行くリターンが得られ確実性が高いと見られる市場に関心を向けると思われます」と述べています。

PwC税理士法人の不動産セクターのリーダーである高木 宏は、不動産投資市場の首位に立つ東京の見通しの明るさに寄せて「Jリートはキャッシュリッチな状態で、海外投資家は優良資産をアグレッシブに買いにきています。海外で起きているさまざまな事件や中国の不安定な不動産市場がネガティブなインパクトを及ぼす可能性がある点に注意が必要ですが、現状の不動産マーケットと金利動向を考えると今後も優良資産には強い購入意欲が寄せられるものと思います。」とコメントしています。

本報告書は投資家、デベロッパー、不動産会社のトップ、金融機関、仲介業者、コンサルタントなど、343名の国際的に著名な不動産専門家の見解に基づいて作成されたもので、アジア太平洋地域における不動産投資と開発のトレンド、不動産金融・資本市場の状況、および不動産部門別・都市別の動向に関する見通しを示しており、本日東京で開催されたULIジャパンEmerging Trends昼食会で発表されました。

今回の調査で東京に続く投資・開発見通しの上位4都市について、本報告書は以下のようにまとめています。

  • シドニー(投資見通し・開発見通しとも2位)‐シドニーはコアのオフィスビルを投資対象とする機関投資家を惹きつけています。そうした資産が不足する一方、新たな投資家が取得を目指して殺到いるため、豪ドルの下落とも相まって、キャップレートが大幅に低下しました。シドニーの不動産は、オーストラリア経済がコモディティ主導からサービス部門主導モデルへと移行しつつあることからも恩恵を受けています。さらに、オフィスから住宅への転用や再開発プロジェクトも多数行われ投資家の関心を呼んでおり、シドニーの不動産業界の見通しを非常に明るいものにしています。
  • メルボルン(投資見通し・開発見通しとも3位)‐メルボルンの投資環境はシドニーと同様と受け止められていますが、メルボルンの不動産価格は2015年に二桁の大幅な上昇を見せたとはいえ、依然としてシドニーを下回っています。これは中心業務地区(CBD)拡大の受け皿となる土地がシドニーより多いことが主な理由です。新規設立企業や郊外から都心部に移転する企業からのアブソープション(吸収需要)も引き続き堅調です。
  • 大阪(投資見通し4位、開発見通し5位)‐競争が激烈ではない、より小規模な都市へと投資家が目を転じる中、大阪は引き続き東京から溢れ出た需要の恩恵を受けています。取引利回りは住宅部門で特に高くなっていますが、事業用不動産も堅調なパフォーマンスを見せています。大阪の目覚ましい成長は「何年も悩みの種だった長期にわたる供給過剰の終了を告げる」ものと言えます。
  • ホーチミンシティ(投資見通し5位、開発見通し4位)‐ホーチミンシティの順位は過去2年間で急上昇し、2014年の19位から今回は上位5位に食い込みました。これは政府が通貨の安定化とインフレ抑制に努めて成功を収めたことに対する評価に加え、銀行が不動産向け融資を再開したことによるものです。また、外国人投資家による市場アクセスが改善され外国の資金を引き寄せており、それによって住宅と事業用資産の取得が大幅に拡大するものと見込まれます。

不動産タイプ別では、来年の投資見通しにおいて引き続き産業施設/物流施設部門がアジア太平洋地域全域にわたり最も高い評価を獲得しました。本報告書は「アジアのほぼすべての市場で近代的な物流施設が不足しているため、需要が引き続き拡大することは確実で、特に中国についてそう言える」としています。この需要を牽引する要因として、e コマースがブームとなっており迅速な配達が求められることやコールドフードのチェーン構築が進んでいること、およびアジアの製造業が構造変革を進めベトナムなど新興市場に拠点を移していることが挙げられています。

このほか、本報告書はアジア太平洋地域の全体的な傾向を以下のようにまとめています。

  • 2015年上半期の土地取引の減少は中国での売買の減速が主因
    ただし下半期については、中国本土に対して慎重な姿勢を保つ外国人投資家もいるものの、取引は全域にわたって大幅に持ち直し、過去最高水準となった昨年に並ぶか、あるいは超えると予想されています。
  • キャップレートもほとんどの市場で過去最低を記録しているが、2016年も取得の勢いは弱まりそうにない
    その結果、一部の投資家は現在の不動産価格が最高水準に達したと見ているとはいえ、拡大する投資資金が引き続き価格を押し上げ、キャップレートを押し下げる(ただしそのペースは減速する)と考える投資家が大半であり、一方、世界金融危機後に取得した資産からエグジットを行って利益の確保を図ろうとする投資家が増えています。
  • 現在、アジアの利回り水準は米国や欧州の取引利回りに比べ競争力に劣ると見られがちのため、一部の投資家はリスクテーキングを強める動きを続けており、より高リターンの資産クラスや地域に投資している
    とはいえ、このトレンドは昨年以来減速している模様です。景気サイクルのピークに達したと見ている投資家が、安心できる一番手市場のコア資産に関心を転じていると思われるためです。
  • オーストラリアや日本などの市場ではまだキャップレートの圧縮余地があるものの、今後の利益源として(キャップレートの圧縮ではなく)賃料収入の拡大を考えている投資家が多い
    ただしこの見方には賛否両論あり、両国とも景気サイクルの点では賃料収入の拡大が考えられる段階にあるものの、そうした期待は自分の理屈を正当化しているだけだとする投資家もいます。
  • 現在の環境ではオポチュニスティックなリターンは獲得しにくいが、多くのファンドがオポチュニスティック投資を行っており、しかも利益をあげている模様
    現在、オポチュニスティック投資で最も良好なリターンが得られる市場は日本(借入コストが低くレバレッジが高いため金融工学的な手法により格段に大きな利益が可能)と中国(デベロッパーがキャッシュに飢え、流動性が供給不足で、経済の減速により他の資金源が中国を敬遠)です。一方ディストレス投資の機会は、おそらく中国とインドを除けば、依然として見えていません。
  • フィリピンやベトナム、インドネシア等の新興市場は、他を凌ぐ利回りと成長率により絶えず魅力をふりまいている
    しかしながら、米国がまもなくベースレートの引き上げに向かう中、為替レートとキャピタルフローのボラティリティが拡大しリスク水準が高まるという現在の環境にあって、多くの投資家がこれらの市場を避けているのが実情です。
  • さらに多くの機関投資家がアジア市場に殺到している
    機関投資家が巨額の資金の投入先を探しており、その結果M&Aやポートフォリオ取引が拡大しています。
  • 多くのリスクが存在している
    その中でも、金利の引き上げ幅が予想を上回ることと、長らく言われてきたように中国がハードランディングし、それがアジア全域に連鎖反応を引き起こすということが、今後考えられるシナリオとして最も多く聞かれました。

以上

アーバンランド・インスティテュートについて

アーバンランド・インスティテュート(www.uli.org)は土地利用・不動産開発に関する国際的な非営利研究教育機関(会員制)です。責任ある土地利用にリーダーシップを発揮し、世界中のコミュニティを維持し繁栄をもたらすことを使命としています。1936年に設立され、あらゆる分野の土地利用と開発分野を代表する3万5千人以上の会員が所属しており、うちアジアの会員は1,850人にのぼっています。

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