米国保険業界 2019年第3四半期のM&Aに関するインサイト

2020-01-23

保険業界のM&A取引金額は44億米ドルに達し好調

保険業界におけるM&A取引は、生命・損害保険会社におけるデジタル化や、ニッチな分野もしくは特定の専門分野への事業拡大を追求する動きが活発になっていることも手伝い堅調に推移しました。第4四半期も早い時期から取引が活発化しており、今年は年末まで堅調な取引が続くとの見方が広がっています。

第3四半期、(保険業界では)重要なインシュアテック関連の取引に注目が集まりました。一方で、莫大な資金と戦略的なプライベート・エクイティが業界の動きを注視しています

John Marra, US Insurance Deals Leader

トレンドとハイライト

  • 2019年第3四半期の公表済み取引金額は、同年第2四半期より54%増加した。しかし、保険会社による大型取引3件がけん引した2018年第3四半期の81億米ドル(公表済み取引金額)には及ばない。
  • 第3四半期における保険業界最大規模の買収をPrudential Financial,Inc.が発表した。同社は、ヘルスおよびウェルネス・ソリューションのプラットフォームを提供するインシュアテック企業Assurance IQ,Inc.を35億米ドルの前払いおよび条件付対価で買収。
  • 第3四半期の取引金額の大半(87%)を、保険ブローカーの取引が占める。当該サブセクターでは、統合に対する継続的な関心があり、上場企業とプライベート・エクイティが支援する企業との間で競争が激化。なお、これらの多くが条件非公表の取引となっている。

2019年第3四半期のM&Aハイライト


その他の重要案件

  • 7月、Sedgwick Claims Management Services, Inc.(以下、Sedgwick)が、York Risk Services Group, Incの買収を発表した。買収金額は非公表。Sedgwickはこの買収により、サービスの規模と範囲が強化されることに加え、保険金請求代行サービスを拡大する。
  • 9月、CopperPoint Insurance Company(以下、CopperPoint)が、Alaska National Corpとの買収合意を発表した。買収金額は非公表。この買収によりCopperPointは米国西部における商業保険事業を拡大することになる。
  • 8月、GoldenTree Asset Managementが、Syncora Guaranteeを4億2,900万米ドルで買収。Syncora社は、債券発行者の負債債務に対する金融保証保険を提供する。
  • 9月、米連邦取引委員会(FTC)は、Fidelity National FinancialとStewart Title Insurance Groupの12億米ドルの合併を阻止。この結果を受けて、両者による買収協議は終了した。
  • 7月、ProSight Global Inc.が米証券取引委員会(SEC)に1億4,000万米ドルの新規株式公開(IPO)を申請したことをきっかけにIPO活動が活発化。さらに9月には、Baldwin Risk Partnersが1億米ドルのIPOを申請。

保険業界の今後の見通し

  • 東京海上ホールディングス株式会社が Privilege Underwriters, Inc.および傘下の子会社「Pure(ピュア)グループ」を31億米ドルで買収することの合意を受け、第2四半期はじめより大型の取引が力強いスタートを切った。Pureグループは、米国の富裕層(High Net Worth)に特化した保険商品・サービスを提供する保険会社。本件買収は現在、関係当局の認可・承認を待っている。
  • 現在の保険業界のM&A活動は、取引件数のみでその実態を把握することは難しい。潜在的な提携やスピンオフに対する保険会社やプライベート・エクイティの関心は高くなっている。保険会社が自社の中核能力を見極めるとともに、あらゆる選択肢を検討する中で、非中核事業やランオフ事業の売却が続くものと予想される。こういった売却には、レガシーホールディングや年金ブロックなどの資本集約的な事業から撤退する機会を模索している企業も含まれている。
  • 保険ブローカーの統合は、保険会社やブローカーが商品の統合や新しい流通チャネルを模索する中で、引き続き増加すると考えられる。
  • インシュアテックへの投資は、保険会社が資金調達やM&Aを介してより大きな賭けをするようになったこともあり、年初来の記録的な水準に達した。昨年10月には、MunichReがNext Insuranceへの2億5,000万米ドルの出資を発表している。同社は小規模なインシュアテック企業だが、その事業規模は10億米ドル以上と推定されている。差別化された顧客エクスペリエンスや人工知能、コスト効率の高い流通モデルを提供するインシュアテック企業への関心は継続する[PDF 9,366KB]だろう。しかし、保険会社や潜在的なターゲット企業が、提携や完全買収の利点について比較検討を進めていることもあり、ディールのストラクチャーは今後も変化を続けると考えられる。

データについて

当レポートにおけるM&A活動とは、米国・バミューダ諸島に拠点を置く保険会社による米国・バミューダ諸島の保険会社を対象とした合併・買収を示します。また取引金額が10億米ドル以上の取引を大型案件としています。事業分離は米国に拠点を置く売り手による(企業全体ではなく)事業の部分売却と定義しています。当レポートは、業界で認知された情報源からのデータを基に作成しており、レポート内で引用している取引金額および件数は、2019年9月30日時点でCapital IQから取得した取引公表時のデータに、独自の調査結果を補足しています。

過去の期間に関係する情報は、過去に完了しているもののデータセットに反映されていなかった取引についてCapital IQが収集した新データに基づき、定期的に更新しています。取引情報はCapital IQを出典とし、買い手またはターゲットが保険業界のサブセクターに該当する取引が含まれています。保険業界のサブセクターには、生命・医療保険、損害保険、保険ブローカー、インシュアテック、その他(タイトル保険、金融保証、マルチライン保険など)が該当します。データ情報源では金融サービスに分類されていても、当社ではテクノロジーやその他のセクターに分類する(またはその逆の)取引があるため、情報に一定の調整を加えています。

翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

PwC US

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