米国の銀行および資本市場 2017年第3四半期のディール・インサイト・アップデート

2018-03-01

概要

当初は、大統領選挙後の銀行株の上昇を受けて、M&A取引が拡大するとの強い期待があったものの、2017年の年初から9月までの実績を見ると、その上昇は実際のところM&Aの障害となっているように見受けられます。当該期間におけるM&A関連の「銀行および資本市場(BCM)」の取引件数は前年同期比5%減少し、2017年第2四半期に対して横ばいとなりました。現在、多くの人々は、いわゆる「トランプバンプ」が銀行のM&A取引を後押ししたのではなく、結果的にはむしろ減速させたのではないかという疑問を抱いています。

BCMの取引件数(銀行取引および、スペシャルティファイナンス、投資銀行、ブローカーディーラー、為替取引業者のディールを含む)は、2014年以来最低の水準にあります。2014年の公表済みディール件数が620件であったのに対し、2017年の年初から9月までのディール件数はわずか291件にとどまりました。2017年の年初は、大統領選挙から2016年末にかけて銀行株価を約23%押し上げたトランプラリーを背景に、好調なスタートを切りました。減税への期待が株式市場の全面高を支えたことに加え、銀行株の上昇は、今後予測される銀行規制の変更によって規制関連コストが削減され、より強い成長を後押しする事業活動を行うことが可能になるとの期待に支えられたものです。

2017年第1四半期はディール件数が109件と好調なスタートを切り、そのうちの5件は買収価格が10億米ドル超の大型案件でした。このようなディールの急増は銀行株価の上昇によるものであると一部では見られていましたが、活況は長くは続かず、2017年第2四半期と第3四半期のディール件数はそれぞれ90件および92件にとどまり、大型案件はこれら四半期でわずか1件ずつとなりました。

M&Aおよび倍率に関する出典:S&PキャピタルIQおよびPwCアナリシス・エクイティ・オファリング

公募に関する出典:ディールロジックおよびPwCキャピタル・マーケッツ・ウォッチ

主要なトレンドと注目点

  • 銀行および資本市場のディール件数は前四半期からほぼ横ばいとなり、商業銀行とリテール銀行のディールがその大半を占めました。小規模な地方銀行の統合は引き続きこの業界の基調にあり、2017年第3四半期にはそれらがディール件数の47%を占めました。
  • 第3四半期には地方銀行やコミュニティーバンクのディールが多くありましたが、それらの大半は少額(2億5,000万米ドル未満)のディールでした。金額が5億米ドルを上回ったのは2件の地方銀行によるディールのみでした。
  • M&Aトランザクション倍率は前四半期から小幅な上昇にとどまりましたが、前年同期の水準に対しては47%上回りました。これは2016年の米国大統領選挙後の「トランプバンプ」による影響を反映しています。

銀行のM&A取引は金融危機後の最低水準まで落ち込んでいます。大統領選挙後のラリーは、銀行にディールのための豊富な資金を与えた一方、ディール市場に悪影響を及ぼす不透明な状況も作り出しました。銀行の業績に大きな変化がないにもかかわらず、その株価は大統領選挙以降33%上昇しており、このような株価水準での買収はこれまでよりもリスクが高くなると思われます。また、現在のところ、規制の撤廃、税制改革、金利環境の実質的な改善がどこまで進むかについては、明らかになっていません。銀行経営幹部らは慎重な姿勢をとっていますが、それにはきちんとした理由があるのです。取引が銀行の成長戦略を支えるという説得力のある論拠がなければ、効率的かつ有機的な取引の実現は不可能であり、銀行経営幹部らが「様子見」姿勢を崩すことはないでしょう。

スコット・カルメリターノ PwC米国 銀行および資本市場ディールリーダー

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