データ駆動(データドリブン)型:インテリジェンス時代の重要な意思決定

エグゼクティブは、意思決定にスピード向上と高度化を求めていますが、現状はそれとは大きくかけ離れています。

人工知能が発達しつつある新しい時代の中で真のデータ駆動(データドリブン)型の企業とはどういうものなのでしょうか?そして重要な意思決定に影響する全ての変動要因について、どのように組織はバランスを図っているのでしょうか?

機械学習、自然言語処理、チャットボットなどの新たな技術は、効率性や重要性を飛躍的に高め、企業や社会に埋もれていたインサイトを引き出すことができます。ビジネスリーダーにとってはより多くの情報を活用して効果的な意思決定を行う絶好の機会です。従って、この機会を捉えるためには、人工知能と人間の知能、両方のパワーと影響力を測り、それぞれ固有の能力を最大限に生かすバランスの取れた手法を見いだすことができるリーダーが求められます。

PwCの最新調査では、企業の重要な意思決定に取り組む執行役員以上のエグゼクティブ、ビジネス部門のトップ、上級副社長など2,100名余りを対象にアンケートを実施し、彼らの考え方を伺いました。これらのビジネスリーダーは、データとアナリティクスについて、解決すべき問題に対するインサイトを引き出すものとして、その有用性を認識していると回答しています。データ駆動(データドリブン)型組織を目指していますが、クリアすべき課題が残っているとことも認識しています。自社が意思決定をする際、ややデータ駆動(データドリブン)型である、またはほぼデータ駆動(データドリブン)型でないと回答した割合は3分の2(61%)に上りました。

多くの企業が機械の持つ力を認識し、変わろうとしていますが、それでも現状のやり方に固執し、相変わらず直感と経験に基づく意思決定に頼っています。機械はその能力を発揮する機会を与えられていないのです。例えば、非線形性の影響を計算したり、複雑な価格変数など、さまざまな因子を扱ったりすることに機械ははるかに優れています。物理学者であり、アルゴリズムの専門家でもあるMichael Feindt氏は次のように述べています。「たとえどんなに経験豊富で優秀な人材であっても、影響因子を3つも4つも同時に扱うことはできません。でも機械であれば、確率分布を計算し、数学的な観点から最適な決定を行うことができるのです」

アンケート結果

意思決定の際、データを信用したからといって決断が遅れることにはなりません。検討すべき点は、問題をどう組み立てるのか、どうすればそこにあるデータを完全に活用することができるのか、データ活用アプローチの長所と短所は何か、ということです。

Dan DiFilippo, Global and U.S. Data & Analytics Leader, PwC

私たちに分かることは増えています。「人間というものは意思決定に際して同じやり方に満足する傾向があります」と語るのはFloyd Yager氏(Chief data officer, Allstate社)です。エグゼクティブの多くは詳細な分析的手法を用いて物事を把握していません。しかし、アルゴリズムの目覚ましい進歩に直面し、ビジネスリーダーは機械がもたらすチャンスを生かして恩恵を享受すべく、自社の風土、カルチャーを破壊する必要があります。Yager氏はこうも述べています。「私たちに分かることは増えています。そして私たち自身が予想する必要は減っています。ですが、だからといって人間の判断が必要なくなるわけではありません。ただプロセスが変わるだけです」

PwCのDan DiFilippo(Partner, Global and US data & analytics leader)は、エグゼクティブは往々にしてチームが提示したデータを軽視していると述べています。意思決定に関するPwCの2014年の報告書によると、エグゼクティブの半数強(52%)が提示されたデータを全面的には信じていないと回答しました[1]。DiFilippoは、分析の説明が明快でない場合や分析手法になじみがない場合、エグゼクティブはそうした分析を信用しない傾向が強いとみています。

また、DiFilippoは「意思決定の際、データを信用したからといって決断が遅れることにはなりません。検討すべき点は、問題をどう組み立てるのか、どうすればそこにあるデータを完全に活用することができるのか、データ活用アプローチの長所と短所は何か、ということです」と指摘しています。

「成功したベテランのビジネスリーダーに不可欠な能力は経験と直感です」と語るのはPwCのPaul Blase(Principal and global and US data & analytics consulting leader)です。このようなリーダーは自分自身と直感に自信がありますが、それにはそれだけの理由があります。しかし、その直感が間違っているとデータが教える場合もあります。データ駆動(データドリブン)型の組織になるために必要なのは、リーダーが方針を示すことです。「実験と失敗を受け入れる心構えが必要です。しかし、意思決定の場面において、データとアナリティクスを調査と発見のために利用するのではなく、自分たちが望む結論を裏付けるために利用しようとする傾向が多く見られます」

[1]PwC「データとアナリティクスに関するグローバル調査:Big Decisions™」2015年9月

スピードと高度化。目まぐるしく変わるクリックストリームやセンサストリームの中で、企業が意思決定するスピードと、正しいインサイトを見いだすために使用する手法の高度化は極めて重要です。

Feindt氏はデータのスピードと高度化の専門家です。欧州原子核研究機構CERNの元研究員であり、瞬時に移動する大量のデータの中から目に見えず捉えどころのない素粒子‐ヒッグス粒子を発見したことで知られています。Feindt氏は、実験グループの超大型粒子加速器で素粒子を衝突させて得たペタバイト級のデータによって変化するアルゴリズムを作成しました。

現在、Feindt氏は自身の予測的アナリティクス技術を小売業などの企業に提供するBlue Yonder社を設立、チーフサイエンティフィックアドバイザーを務めています。Feindt氏は1秒にも満たない間に繰り返される何千万回もの粒子の衝突について、「私たちは生データには興味ありませんでした。そのほとんどが、私たちの問いにとって全く意味がなかったからです」と指摘した。「関心があったのは、統計的分析でした。パターンを見つけ、予測をするのです。ものすごいスピードで何かが起きるとき、必要なのは知識を抽出し、不確実性を定量化するための精度の高い測定アルゴリズムです」と述べています。

今、ビジネスリーダーは自社のヒッグス粒子を追いかけているのです。2016年の調査結果からは、エグゼクティブがスピードと高度化を強く求めていることが分かりました。PwCのDiFilippoは「エグゼクティブは口を揃えて向上が必要だと言っています。しかも早急にと言っているのは、自分たちの置かれている状況の受け止め方を示しています。ただ、ほとんどのエグゼクティブが2020年までに実現したいレベルに到達することは難しいとみています」と伝えています。

意思決定能力の向上は大きな課題です。DiFilippoは次のように指摘しています。「2014年にこの問題を考察したとき、ほとんどの企業が対応を始めていることが分かりました。何かをする機会があり、あなたは対応するとします。しかし、その機会を特定し、分析するのに何カ月もかけることはできません。数日でも遅すぎます。価格設定のようなことであれば、瞬時でなければなりません。瞬時に正しい判断をすることはできますか?私がいう意思決定のスピードと高度化への取り組みとは、そういうことをいうのです」

「私が求めるのは、問題を把握し、適切な問いを立てる上で役立つ現場の人間の判断です。その判断と合わせてデータとアナリティクスを利用することで、最善のモデルを構築することができます」

Floyd Yager, Chief Data Officer, Allstate

意思決定のスピード向上と高度化を求めるエグゼクティブ

意思決定のスピード向上と高度化を求めるエグゼクティブ

人間による判断から始める。どうすれば企業は意思決定を向上させることができるのでしょうか?データアナリティクスや新しい技術を利用することで、パターンを発見し、そこから新たに予測を立てることができます。Blue Yonder社のFeindt氏が言うところの「あらゆる将来の可能性の予測」によって、エグゼクティブやその現地チームは不確実性を拭い去ることができます。データへの取り組みが進んでいない、あるいはデータを効率的に活用していない企業であっても、部門ごとの記録管理をやめ、情報を中心とする企業風土を醸成すれば、成果を出すことができます。そして、Feindt氏は次のように続けます。「欠測データに対して堅牢なモデルもあります。ビッグデータ、すなわちインターネットのデータのほとんどは、世の中の問いのほとんどにとって全く意味を持っていません。特定の問いに対する回答に関係するのは、ごくわずかにすぎないのです。ですから興味深いパターンを特定するための秘訣は、まずノイズを取り除くことです」

PwCの調査では、過半数の意思決定者(59%)が、必要な分析については、機械のアルゴリズムよりもまずは人間の判断に頼ると回答しています。これは問題を組み立て、適切な問いを立てられるという人間の判断に基づいているということです。

Allstate社のYager氏は、チームが執行役員以上のエグゼクティブに尋ねることを中心にして、思考を組み立てることに賛成しています。「私が求めるのは、問題を把握し、適切な問いを立てる現場の人間の判断です。その判断と合わせてデータとアナリティクスを利用することで、最善のモデルを構築し、今後を予測し、出そうとしている最善の結果を理解することができ、そこにたどりつくためのより良い方法が把握できます。とはいえ、それは今よりも良い方法というものではなく、自分が考えた通りのものかもしれません。ただ私たちに言えるのは、それが私たちにとっての最善の方法だということです」

データ駆動(データドリブン)型であるかどうかは、人間にかかっています。有能な人材とリーダーシップ能力があれば、的確な情報を適切な場所に適時に届け、行動を起こすことができます。Blaseは次のように述べています。「つまりそれは、判断に基づいて適切な問いを立て、データに基づいて自社のバリューチェーンと従業員基盤のあらゆる側面をきめ細かく認識し、それを強力な能力に転換するということに他なりません。執行役員以上のエグゼクティブから業務の最前線や店舗に至るまで、自社の人材とデータから得たインサイトを調和させることができれば、外の混乱にももう煩わされることがなくなります。そして先を読み果敢に行動できる企業は、業界さえ作り変える立場を確保するのです」

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