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スピードと高度化:業務フローに取り入れるアナリティクス

スイス・ジュネーブ郊外にある大型ハドロン衝突型加速器で実験を行う科学者は、エグゼクティブであれば分かり合える難題を抱えていました。その難題とは目に見えず捉えどころのない存在、すなわち物理的な意味では存在しないものを発見することであり、それを成功させる唯一の方法は、光の速さで瞬時に移動する原子粒子の衝突を観察することでした。そこでアルゴリズムを使い、正しいデータに注目した結果、ヒッグス粒子と呼ばれる理論上の素粒子が存在することを証明し、宇宙の本質に関する新たなインサイトを明らかにしたのです。

ビジネスリーダーもまた説明のつかない何かを探し求めています。それは市場やクライアントに関する深いインサイトと気づきであり、やはり目に見えず捉えどころがないものです。理論に基づき実験を行う科学者同様、ビジネスリーダーも膨大な量のデータをもとに、新たなインサイトを得られるような方法で問題を組み立てる必要があります。しかし、ビジネスの世界では新たなインサイトを発見するだけでは十分ではありません。企業はデータを活用して、より良い意志決定をしなければならないのです。

PwCの最新調査では、企業はますますデータ駆動(データドリブン)型に向かっているという発想から出発し、この方向性がいかに意思決定のあり方を変えのるか、エグゼクティブに質問しました。その際には、意思決定の2つの重要な側面である、スピードと高度化について具体的に伺っています。スピードは、組織がいかに迅速に行動に移せるかということであり、問いに対する回答、決定、行動、そして結果として創出された価値の測定にかかる時間を指します。一方、高度化は、意思決定の参考になる情報を提供するアナリティクスの範囲と精度のことです。この高度化とは、データプラットフォームの進歩やデータから有意義なインサイトを生成する能力の発達によってもたらされるものであり、一部のエグゼクティブには慣れ親しんでいる意思決定サイクルのようなものではありません。

2,100名余りのエグゼクティブに自社の意思決定能力の現状と2020年までに実現したいレベルを座標上で示してもらいました。その回答からは変革に向けた意欲が伺われますが、実現したいレベルに達する可能性については、多くの組織が控えめな見解を示しています。

エグゼクティブは意思決定について変革の必要があると回答

組織の意思決定能力の現状とエグゼクティブが求める2020年までに「実現したいレベル」

自社の意思決定能力について、現状と期待するレベルのそれぞれを最もよく表していると思う位置に丸をつけてください。

出典:PwCの「データとアナリティクスに関するグローバル調査2016:Big Decisions TM)」、2016年7月

質問:自社の意思決定能力について、現状と期待するレベルのそれぞれを最もよく表していると思う位置に丸をつけてください。

全世界調査対象者:エグゼクティブ2,106名

PwCのAnand Rao(Innovation lead, data and analytics practice)は、「多くのエグゼクティブは、特に機械学習や自然言語処理、知的エージェントといった先端技術と組み合わせた場合、アナリティクスが生み出す可能性を感じています」との見解を示した上で、「その一方でこの調査から分かるのは、その実現に向けた意欲は比較的控えめだということです。意思決定の質とスピードを向上させたいという気持ちはありますが、現状から期待するレベルに引き上げるにはどうすればいいのか、その点が明確になっていない場合が多いのです」と述べています。

自らに問う

Barbara Wixom氏(Principal research scientist, MIT Sloan Center for Information Systems Research)は、次のように述べています。「データとアナリティクスがもたらすメリットはとても大きいものです。ただ、可能性を目にすればするほど、それを活用する自らの能力について不満を感じてしまうのです。何ができて何ができないのか、そして全てのことを直ちにできるわけではない、ということを私たちははっきりと意識するようになります。物事を前進させるために重要なことは優先順位付けです。つまり、どの問題に取り組むのか、そしてどう戦略的な選択をするのか、じっくり考えなければなりません」

エグゼクティブとして、自らにこう問いかけてみてください。企業の意思決定においてスピードと高度化をさまざまに組み合わせることがなぜ重要なのかと。この方法で意思決定について考えてみると、会社の持つスキルと資源をどう利用し、最も重要な業務フローをどう改善させるかについて、優先順位を決めることができるようになります。

次の観点から自社の意思決定能力について考えた場合、どうなるか検討してみてください。

例えば、自社が交通渋滞の改善のために3Dのナビゲーションマップを扱っているとした場合、スピードと高度化の両方が必要となります。パノラマカメラや道路状況、ドライバーのフィードバックから得たリアルタイムの情報を階層化し、組み合わせることは極めて高度な作業であり、こうした作業には、地図上の表示を継続的に精緻化するために役立つ精度の高い情報やその瞬間の真のインテリジェンス、ラーニングループが必要となります。

一方で、自社が目まぐるしく変わる消費者の好みに左右される企業であれば、長期的なデータクレンジングやより高度なアナリティクスよりもむしろアジリティ(機敏性)の向上に優先的に取り組むことでしょう。構造化する前のフィードバックをそのまますぐに活用できれば、専門スタッフに迅速なフィードバックループ(分析‐判断‐行動)を提供することができます。

あなたは自社が本当に必要としているのは、シンプルなデータの分析を行い、マネジャークラスの社員に対して適切なレベルの情報を提供し、分析を有効活用してもらうためのインセンティブを与えるなど、データアナリティクスについて基本的なところを網羅すればよいとお考えかもしれません。

しかし、多くの企業がリスクもリターンも高い複雑な決定に直面し、包括的かつ入念な分析を必要としています。新製品の市場導入を短縮する方法を決定しなければならない場合を考えてみてください。いかに迅速に行動するかは、問題の分析への取り組み方ほど重要ではありません。むしろ立体チェスのストラテジーに似ているといえます。チェスの指し手を習得したいのであれば、問題全体を最もよく表している数多くのデータセットを調べることが重要です。そうすれば、より包括的なシミュレーションを作成することができます。新製品の市場導入の場合であれば、競合他社のプライシングデータの収集、消費者のブランドスイッチング行動のモデル化、競合他社の反応の予測などが考えられます。また、現地の季節性や経済状況が需要に及ぼす影響についても理解する必要があります。こうした類の意思決定に伴う経済的影響の大きさを踏まえると、企業がその能力を拡大する機会は極めて大きいといえます。

共に進化するプロセスとデータ

今日、データとアナリティクスを応用する際、会社または部門に最適なアプローチを特定することは極めて大きな課題です。「このゲームの秘訣は膨大なノイズを取り除くことです」と語るのは、ヒッグス粒子の発見につながったアルゴリズムを作成した物理学者でBlue Yonder社の創立者でもあるMichael Feindt氏です。同社は予測的アナリティクスと処方的アナリティクスのサービスを企業に提供しています。「当然のことですが、人はシンプルな答えをすぐに得たいと思い、スピードと高度化の点で常に妥協が生じます。自社のデータをもとにもっとできることがあるのではないかと考える企業は多く、そのデータを単に入力で終わらせることなく業務フローに取り入れるプロセスを求めています」

エグゼクティブが、自社のデータ収集あるいは人材(またその両方)が同期していないことにいら立ちを覚えることはよくあることです。プロセスに穴があったり、人材に訓練が必要であったり、あるいは説明責任が実行されていなかった場合には、それらを導入する必要もあります。PwCのPaul Blase(Principal ,Global and US consulting analytics leader)は、「自らが望む結果とそれに関連する指標を最初から理解している必要があります」と述べています。Blaseによると、それさえ把握できていれば、業務フローの適切な位置にデータとアナリティクスを組み込み、適切な水準のスキルと説明責任を構築することができるということです。

例えば、ある消費者梱包業のクライアントは、現場の営業担当者から集めたインテリジェンスを利用して、需要計画改善のためのプロセスを強化したいと考えていました。難しかったのは手順の策定でした。そこで、営業担当者が紙ベースで計画を立てる代わりに、業務フローをデジタル化しました。「営業担当者の携帯用デバイスにアルゴリズムが設定されれば、終日、データ収集と分析の高度化が可能になります。そしてアルゴリズムを変更することで需要計画の精度が向上し、モデルを構築することができます」

プロセスの重要性と変化に常に適応することの重要性を説くFeindt氏は、「データには価値があるということが組織全体に認知されると、データの質は急速に向上します」と述べています。プロセスとデータは共に進化します。「データが変わることに伴い、つまりデータが増え、質が改善することに伴い環境が変わります。するとアルゴリズムも変わります。データ駆動型であるということは、2年後に今と同じアルゴリズムを使っていないということです」

「正しい方程式には大きな強みと価値があります」と語るBlaseは、プロセスを中心に意思決定を構築することでデータ駆動型組織ができあがると言います。「ただ、人材や文化、組織、変革を相手にするので時間はかかります。しかし、人工知能や機械学習、自動化の将来性が広がりつつある今、新興企業であれば、私たちが予期しなかった方法を用いてずっと簡単に重要な業務フローの中にこうした技術を取り入れることができるでしょう」

データ駆動型意思決定のための4つのモデル

4つの基本的ニーズに基づいてプログラムをモデル化することができます。

データ駆動型意思決定のための4つのモデル

   

この方法で意思決定について考えてみると、会社の持つスキルと資源をどう利用し、最も重要な業務フローをどう改善させるかについて、優先順位を決めることができるようになります。