商用車業界に与えるGAFAのインパクトと商用車プレーヤーが持つべきマネタイズの視点

2019-03-28

現代社会に大きな影響力を持つ存在がGAFAです。彼らは商用車業界にどのような影響を及ぼしているのか、また及ぼそうとしているのか。モノ起点とテクノロジー起点の違いはありますが、人々の生活を支えるインフラやプラットフォームの雄であることに違いはありません。GAFAはディスラプターなのか、それとも、共に社会を支えるパートナーなのか、彼らの狙いと商用車業界へのインパクトを分析し、この先の「付き合い方」を考察します。

商用車業界に与えるGAFAのインパクトと商用車プレーヤーが持つべきマネタイズの視点

自動車業界ではない「モビリティ」トレンドの捉え方

車の所有が個人から社会へ移行する(所有から利用)、乗用から商用の比重が増える、などのモビリティトレンドが特に昨今盛んにうたわれています。ただ、この潮流の中で、モノ作りを起点としたメーカーのプレゼンスは高くありません。例えば、モビリティに関連した取り組み(ここではMobility as a Service)の成功事例として語られるWhim(※)では、サービスの推進を支援している政府の政策指針として乗用車(自家用車)の優先順位が低いといった背景もあり、メーカーはサービスの推進主体には入ることができていません(出資などの形では関与)。

※Whim:フィンランドのベンチャー企業「MaaSグローバル社」が提供するプラットフォームサービス。目的地までの最適な交通手段や移動ルートの検索や予約、決済まで一括して行える。

成功要因とGAFAの強み

では、モビリティに関連した取り組みを成功に導く要因は何でしょうか。それは、ヒトやモノの流れを「確実に」把握、もしくは、予測することです。流れを「確実に」把握するためには、業界や手段、地域をまたいだつながりが必要です。また、「確実に」予測するためには、大量の生きたデータと、それを活用するためのデジタル技術を持たなくてはなりません。そして、現在これらの必要事項を最も体現しているのが、GAFAと呼ばれるITジャイアントです。

ちなみに、昨今のデータ活用やデジタル化の重要性を語るまでもなく、商用車プレーヤーは以前からこれに気付いています。むしろ、商用車のビジネスモデル自体がこれを起点にしているといっても過言ではありません(紙幅の都合により次の機会に譲りますが、現在商用車領域への比重を大きくしつつある乗用車プレーヤーは、「これからのユーザー」に備え、法人ユーザーデータを起点としたビジネスモデルに変えなければなりません)。

ITジャイアントのなりわいは必ずしもモビリティではありません。しかしながら、このモビリティが業界横断であると同義であるように、人々の生活やそれに関連する企業を支えることを軸に、あらゆる業界や手段、地域のまたがりをカバー(支配)することが、彼らのなりわいです。従って、そもそも各業界(企業)の「『運ぶ』を広く支える」ことをなりわいにしている商用車業界は、この影響を広く受ける(図表1)だけでなく、ITジャイアントから見ても、商用車業界のケイパビリティ自体が手に入れたいキー要素でもあります。

図表1:BtoBマネタイズと「物流」における強み

商用車業界に対するGAFAのインパクト(具体的な動き)

あるITジャイアントの幹部は、「商用車のデータが欲しい」と発言しましたが、トラック・バス/ユーザー/積荷などの情報を手に入れ、より強力に世界中のデータを意のままにしようとしていることが伺えます。実際に、自ら乗用・商用の自動運転車を走らせ、ライバルを圧倒的に凌駕するデータを蓄積し、将来に備えていますし、2018年に開始したサービスでは、街作りそのものを手がけることで、物流や人流にかかわる商用車関連データまでを飲み込もうとしています。

別のITジャイアントは、新しいエコシステムにおける、一つの勝ちパターンである「プラットフォーマー」の上位に君臨します。「競争が起こらないように、利益を低く抑える」「(一般的に成功モデルとされるライバルの戦略を『間違い』と定義し)同じ『過ち』を犯したくない」という、事業に対する一歩飛び抜けた発想とその実践力は、自動車プレーヤーや同じITジャイアントにもまねができないだけでなく、一般市民の消費行動や事業者の販売行動までをも押さえる事業モデルを実現しています。ゆえに、ますます直接的・間接的に商用車ユーザーや商用車業界プレーヤーにとって大きな脅威となります。

自動車業界における主権が商用車に移行する中、今後、このようにGAFAと商用車業界の関係性はより緊密になっていくでしょう。

GAFAと商用車プレーヤーのポジショニングの違い

モビリティトレンド(ここではMaaS)への取り組み方は、GAFAの中でも、その違いは明らかですが、商用車そのものは、さまざまなデータを押さえ、将来のエコシステムの中で主権を握るための一つのピースにすぎないという点は、共通の見方になります。

これに対し、完成車メーカー、架装メーカーをはじめとする商用車プレーヤーも、モノ作りの強みや車両の稼働維持のノウハウを活かした「既存事業の徹底」、商用車ユーザーとの長年の信頼関係やユーザーの困りごとの深い理解を活かした、ユーザー課題の解決事業への踏み込みや、一般消費者への直接の価値提供といった「新たな価値創造」など、自らのなりわいを再定義し始めています(図表2)。

図表2:将来の事業ポジション(商用車プレーヤー vs ITジャイアント)

対応の方向性(持つべき「マネタイズ」の視点)

商用車プレーヤーが、GAFAが持ちえない資産を持っている点では、この強みを活かした勝ち方があります。その一方、敵ではなくパートナーとして組む策もあります。例えば、ある大手乗用車メーカーは、自らモビリティカンパニーとそのなりわいを再定義し、他業界のメガプレーヤーと組むことを選択しています。オープンに手をつなぐ、という一つの時流に合致しているともいえます。私たちが過去に提案し実現したように、あるITジャイアントの事業を支えるクルマを作る、という方向性もあると考えられます。

ただし周知のとおり、CASEであってもMaaSであっても、モビリティに関連する自動車業界を含めた関連プレーヤーの多くは、この新しい領域で大きく黒字化していません。その理由として、まだ市場が形成されておらず、現時点では「『創世記』である(大手商用車メーカー幹部)」ため、というのも一つの正しい見方です。しかし、最も重要なポイントは、どこから対価を得るかについて、視野狭窄(きょうさく)に陥っている点にあります。前述のとおり、モビリティは業界をまたぐものであり、多くの関係者がいます。それぞれの業界プレーヤーは強みもあれば、持ちえないケイパビリティもあり、互いに補完し得るポイントが多くあります。そのニーズを捉え、手をつなぎ、直接・間接をミックスしたマネタイズモデル(図表3)を構築することが次の世界で勝ち残る要件になります。

図表3:将来の商用車業界の利益構造

本ページの図表は、公表情報を元にPwCにて作成

執筆者

早瀬 慶

PwCコンサルティング合同会社
パートナー
kei.hayase@pwc.com

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