商用車が中心となる将来の自動車業界動向

2018-12-04

いわゆる”CASE”(Connected、Automated driving、Sharing & services、Electrification & alternative fuels)が乗用車業界に与える影響が「乗用車の商用車化」を引き起こすこと、ヒト・モノ移動需要が純増(2017年比2.3倍)すること、都市物流におけるラスト“ワンインチ”対応の必要性が増すことなどにより、2030年には商用車が乗用車の販売台数を超えることが予想されています。

このような状況を踏まえ、2018年9月の第67回ハノーバー国際モーターショーから商用車業界の内外のプレーヤーの描く未来像と戦略を読み解くと、生業の再定義と新しいオープンイノベーションという、将来に向けて商用車プレーヤーが生き残っていく上での必須要件が浮かび上がってきます。

商用車が中心となる将来の自動車業界動向

商用車化の時代への突入

現在のグローバル自動車需要のうち、商用車と乗用車の割合は1:3、つまり商用車は25%です。いわゆる“CASE”のうち、シェアリング(Sharing & services)+自動運転(Automated driving)の影響により、乗用車は個人の所有物から公共のインフラに変容します。この変化は、ヒトやモノを運ぶ商用車への役割の交代を表しています。

既に、乗用車のシェアリングが進んだ地域では販売台数が落ち込んでいるという現実があります。一方で、ヒトとモノの移動需要は今後も増え続け、都市物流におけるラスト“ワンインチ”を埋める新しい商用モビリティの出現も含めると、2030年には、商用車は52.0%に達する見込みです(図表1)。いよいよ、商用車がクルマの半数以上を占める“商用車化”の時代に突入すると言ってもいいでしょう。

図表1 グローバル“商用車”割合の変化

商用車業界における”CASE”+αのトレンドとは?

商用車と乗用車の”CASE”は、利用特性上大きく異なりますが(図表2)、それ以外にも商用車特有のトレンドがあります。

  • 人手不足を背景にした「ドライバーが商用車を選ぶ」時代への回帰
  • 「架装プレーヤーのメーカー化」やサプライヤーの「乗用車から商用車の比重シフト」
  • ミレニアル世代の価値観変化(商用車ユーザーや最終消費者としてのニーズに対するインパクト)

一方で、ヒト・モノを運ぶ、その領域で価値を提供する、という商用車の本質は変わらず健在です。そのような中、“架装”の重要性が相対的に増加するため、架装プレーヤーの業界トレンドをけん引する構図やその動向が注目されます。

図表2:CASE CV VS PV

商用車”CASE”の将来動向

Connected

最も競争が激しく、最も“もうかる”領域、もしくはもうけの源泉となり得る領域。ただし、各社の位置づけ・戦略は大きく異なり(図表3)、戦略に応じた念入りな収益プランが必須(図表4)

Automated driving

政策やインフラなど、商用車業界外の環境によるところが大きく、長期視野が必要な領域である一方、モビリティ全体における最大の変革ドライバー

Sharing & services

メーカーの収益にダイレクトに影響を及ぼすだけでなく、複数のシェアリング“型”がある。開拓/改善余地が大きいため、経営判断が求められる領域

Electrification & alternative fuels

本音と建前が交差する領域。電動化は、超小型を含む小型から浸透し、一部他業界プレーヤーに置き換わるものの、長い目で見ると、メーカーの強みが参入障壁になる。ただし、直近アフターセールスにはマイナスインパクトあり(図表5)。“すみ分け”がキーワード

図表3:Connected サービス戦略
図表4:Connected収益モデル
図表5:電動化に伴うAS収益インパクト

生業の再定義と協業の仕方の重要性

このような状況下、一概に「こうすべき」という処方箋は存在しません。「生業は何か?」「勝負する領域はどこか?」を改めて定義し、「どうマネタイズしていくのか?」「そのために誰と組むのか?」を意思決定することが重要になります。

大手プレーヤー(シャシ、架装、サプライヤー)各社の経営陣への聞き取り調査では、引き続き、自社を「商用車メーカー」と定義付けるという回答もありましたが、「プラットフォーマー」「ソリューションプロバイダー」「Vehicleパートナー」「モビリティテクノロジーリーダー」など、従来の立ち位置とは異なる定義付けをしようとしているプレーヤーも存在することが明確になり、実際にそれに呼応するかのように、会社形態の再編、ビジネスパートナーの入れ替え、新事業の開始などを強力にかつオープンに推進している状況がうかがえます。(図表6)

図表6:オープンイノベーションマップ(大手A社)

CASE+α時代の対応の方向性

自社の再定義の結果によって、もうけの源泉をどこに置くか?CASE+αにどう対応するのか?が変わります(図表7)。スピード感をもって進めることとやみくもにはやりものに飛びつくことは別物です(自転車シェアリング大手が多額の負債を抱えて市場から撤退したのは記憶に新しい)。

一方で、どのような戦い方になろうとも確実に必要なのは、ユーザーおよびユーザーデータを“グリップ”することです。ITジャイアントに代表される他業界や新興のメガプレーヤーとの競争領域もそこです。ある大手商用車メーカーは、既にトラックを“販売しない”ことを決定しました。社会における商用車のプレゼンスがますます増加するCASE+αの時代、この大きな意思決定は、業界に一つの示唆を提示していると言えるのではないでしょうか?

図表7:欧州商用車プレーヤーとCASEの方向性

本ページの図表は、公表情報を元にPwCにて作成

主要メンバー

早瀬 慶

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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