Bodylogical®の日本検証

平均的な医療から個別化医療への転換を

次のセッションでは、国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室 室長の坂根 直樹 氏が登壇。同氏が率いる予防医学研究室のテーマは個別化医療で、減量や血糖改善の個人差の解明や楽しくてためになる糖尿病教育の開発などに取り組んでいる。「外来で患者と話していると『人と同じような食事や生活をしているのにどうして自分だけ太ってしまうのか?』などと聞くことが多い。その理由を説明できるように基礎代謝や遺伝子解析、最近では時間栄養・時間運動学などを行っているが、それでも限界があるのが現実だ」

例えば血糖反応にも個人差があり、バナナとクッキーを摂取した場合、バナナでは血糖値は上がるがクッキーでは上がらない被験者がいればその逆もあり、いずれでも上がる人もいる。「その理由の解明に務めているチームがあるが、Bodylogical®の活用により因果関係がはっきり見えてくるのではないか」と期待を寄せた坂根氏は、従来のリスクスコアとHealth Risk Appraisal(健康危険度評価)の限界について言及した。「リスクスコアは一般的な発症リスクを示すだけであり、患者個人の行動変容にはつながりにくい。患者自らの行動変容を促すには、性格タイプ別、費用、現在の症状改善等を踏まえていかにリスクを提示するかが課題となる。つまり、一般的・平均的な医療(EBM)から個別化医療(Precision Medicine)への転換と進化が必要なのであり、そこにBodylogical®は貢献できると見ている」

セッションの様子

幅広い方向性でBodylogical®の活用が期待できる

Bodylogical®を「生活習慣の変化や薬物療法に対する反応性を個人ごとに予測可能な妥当性のある機序計算モデル」と評価する坂根氏は、その最大の特徴として臓器間のネットワークも含めたシミュレーションモデルを構成できる点を挙げた。セッションの終盤では、糖尿病予防のための戦略研究であるJ-DOIT1(2型糖尿病の発症予防を目的とした大規模介入試験)のデータを用いて個人ごとに食事療法の最適化数値を予測するステップを紹介。ここでは、効果の出たケース、出なかったケースでも、このモデルを使うことでアウトカムの動きを捉えることに成功し、エネルギー収支が同じでも減量や血糖改善のアウトカムが異なるという結果も示された。

「患者ごとにモデルをフィッティングし、生活習慣に介入して改善を予測することが可能となる」とした坂根氏は、最後に今後Bodylogical®の活用ができる方向性として健康危険度評価(HRA)や個別化医療、臨床研究の設計、スクリーニングを挙げてセッションを結んだ。