豪州への投資がもたらす新たな展望―オーストラリア

Season’s Report from Global

特派員 加藤 靖之

PwC オーストラリア メルボルン事務所 ディレクター(PwC アドバイザリー合同会社から出向中)

「“U.S・アジア”への海外展開に向け、〇〇〇億円のM&A予算を確保」。毎日のように、このような記事を紙面で目にします。マーケット規模、成長率などから教科書的に戦略を描くと、ほぼ全ての業界で“U.S・アジアへ展開”という答えにたどり着きます。それが誰もが納得しやすい「理想」的な海外戦略なのでしょう。

このようなグローバル市場において、人口が日本の約5分の1にすぎない豪州市場への投資が、日本企業の戦略で最優先されることはありません。しかし2017年には、人材派遣業界のパーソルホールディングスが豪州の業界トップクラスのProgrammed Maintenanceを約690億円で買収※1、野村総合研究所が大手SIerのASGとSMSを計約400 億円で買収する※2など、従来の資源関連に限らずサービス産業に対する日本企業からの投資件数、金額が増加しています。豪州企業を買収した企業にその理由を問うと「U.Sで良いポジションにある企業を買おうとすると、数千億円クラスの買収額となり手が出なかった。アジアの良い企業はすでに他のグローバル企業が手を付けており、リスクの高い案件しか残されていない。一方、豪州は業界トップ3に入る企業でも数百億円レベルで買収ができる。法制度や税制が整備されており、カントリーリスクが比較的低く日豪関係は長期にわたって良好である」という声が聞かれました。海外M&A戦略の「理想」に対して、豪州は「現実」的な答えなのかもしれません。海外M&A戦略を描いたものの「理想」どおりに進展していない日本企業は、豪州のM&A機会を探ってみてはいかがでしょうか。

※1:2017年7月14日付 日本経済新聞電子版

※2:2016年12月26日付 日経クラウドファースト
    2017年6月1日付 日本経済新聞電子版

オペラハウス