「収益認識に関する会計基準(案)」(企業会計基準公開草案第61号)等の公表(ASBJ)

2017-07-21

日本基準のトピックス 第333号

主旨

  • 2017年7月20日、企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」)は、「収益認識に関する会計基準(案)」等を公表しました。コメントの期限は2017年10月20日です。
  • ASBJは、2015年3月に、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を踏まえた我が国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定し、検討を開始しました。
  • こうした検討の初期の段階となる2016年2月に、ASBJは、「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(以下、「意見募集文書」)を公表し、当該意見募集文書に寄せられた事項を踏まえ、課題の抽出を行い、それらを検討したうえで、本公開草案を公表しています。
  • 本公開草案は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することを提案しています。早期適用として、2018年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することができることを提案しています。さらに、年度末に係る連結財務諸表および個別財務諸表から早期適用する場合には、2018年12月31日に終了する連結会計年度および事業年度から2019年3月30日に終了する連結会計年度および事業年度について適用することができることも提案しています。

原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。

https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/exposure_draft/y2017/2017-0720.html

経緯

わが国における収益認識に係る会計実務は、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」(企業会計原則 第二 損益計算書原則 三 B)とする企業会計原則に従って行われてきていますが、収益認識に関する包括的な会計基準はこれまで開発されていませんでした。

このような中、国際会計基準審議会(IASB)および米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、2014年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic 606)を公表しています。IASBおよびFASBから公表された基準は、文言レベルで概ね同一の基準となっています。すなわち、両基準の適用が開始されると、IFRSと米国会計基準により作成される財務諸表では、実質的に同一の基準に基づいて認識された収益の額が損益計算書上のトップラインとして報告されることになります。

これらの状況を踏まえ、ASBJは、2015年3月に、IFRS第15号の内容を出発点として、わが国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定し、検討を開始しました。その後、適用上の課題等に対する意見を幅広く把握するため、意見募集文書を公表し、意見募集文書に寄せられた意見を踏まえ、課題の抽出を行い、それらを検討したうえで、本公開草案を公表しています。

主な内容

1. 基本的な方針

収益認識に関する会計基準の開発にあたっての基本的な方針として、IFRS第15号と整合性を図る便益の1つである国内外の企業間の財務諸表の比較可能性の観点から、IFRS第15号の基本的な原則を取り入れることを出発点とし、会計基準を定めることとしています。また、これまでわが国で行われてきた実務等に配慮すべき項目がある場合には、比較可能性を損なわせない範囲で代替的な取扱いを追加することとしています。

また、基本的には、連結財務諸表と個別財務諸表において同一の会計処理を定めることとしています。

 

2. 範囲

本公開草案は、次の(1)から(6)を除き、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理および開示に適用されることを提案しています。

(1)「金融商品に関する会計基準」の範囲に含まれる金融商品に係る取引

(2)「リース取引に関する会計基準」の範囲に含まれるリース取引

(3)保険法に定められた保険契約 

(4)顧客または潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品または製品の交換取引

(5)金融商品の組成又は取得に際して受け取る手数料

(6)「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」の対象となる不動産の譲渡

なお、本公開草案では、棚卸資産や固定資産等、コストの資産化等の定めがIFRSの体系とは異なるため、IFRS第15号における契約コスト(契約獲得の増分コストおよび契約を履行するためのコスト)の定めを範囲に含めていません。ただし、IFRSまたは米国会計基準を適用している企業が当該企業の個別財務諸表(並びに当該企業の連結子会社の連結財務諸表および個別財務諸表)に会計基準を適用する場合には、IFRSまたはTopic 606における契約コストの定めに従った処理をすることは妨げないものと提案しています。

 

3. 会計処理

(a) 5つのステップの適用

本公開草案の基本となる原則は、約束した財またはサービスの顧客への移転を、当該財またはサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益の認識を行うこととされており、基本となる原則に従って収益を認識するために、次の5つのステップを適用することを提案しています。

 

ステップ1:顧客との契約を識別する。

定められた要件のすべてを満たす顧客との契約を識別する。

ステップ2:契約における履行義務を識別する。

契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財またはサービスを評価し、次の(1)または(2)のいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別する。

(1)別個の財またはサービス

(2)一連の別個の財またはサービス

ステップ3:取引価格を算定する。

取引価格とは、財またはサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額であり、第三者のために回収する額を含まないものをいう。取引価格を算定する際には、変動対価や契約における重要な金融要素などの影響を考慮する。 

ステップ4:契約における履行義務に取引価格を配分する。

取引価格を履行義務に配分する。それぞれの履行義務(あるいは別個の財またはサービス)に対する取引価格の配分は、独立販売価格の比率に基づき、財またはサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額を描写するように行う。

ステップ5:履行義務を充足した時にまたは充足するにつれて収益を認識する。

企業は約束した財またはサービス(資産)を顧客に移転することによって履行義務を充足した時にまたは充足するにつれて、収益を認識する。資産が移転するのは、顧客が当該資産に対する支配を獲得した時、または獲得するにつれてである。 

具体的には、定められた要件のいずれかを満たす場合、資産に対する支配が顧客に一定の期間にわたり移転することにより、一定の期間にわたり履行義務を充足し、収益を認識する。 

当該要件のいずれも満たさず、履行義務が一定の期間にわたり充足されるものではない場合には、一時点で充足される履行義務として、資産に対する支配を顧客に移転することにより、当該履行義務が充足される時に、収益を認識する。

(b) 特定の状況または取引における取扱い

本公開草案では、次の(1)から(11)の特定の状況または取引について適用される指針を定めることを提案しています。

(1)財またはサービスに対する保証(ステップ2)

(2)本人と代理人の区分(ステップ2)

(3)追加の財またはサービスを取得するオプションの付与(ステップ2)

(4)顧客により行使されない権利(非行使部分)(ステップ5)

(5)返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払(ステップ5)

(6)ライセンスの供与(ステップ2および5)

(7)買戻契約(ステップ5)

(8)委託販売契約(ステップ5)

(9)請求済未出荷契約(ステップ5)

(10)顧客による検収(ステップ5)

(11)返品権付きの販売(ステップ3)

 

(c) 重要性等に関する代替的な取扱い

本公開草案では、これまでわが国で行われてきた実務等に配慮し、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で、IFRS第15号における取扱いとは別に、次の個別項目に対する重要性の記載等、代替的な取扱いを定めることを提案しています。

(1)契約変更(ステップ1)

  • 重要性が乏しい場合の取扱い

(2)履行義務の識別(ステップ2)

  • 顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合の取扱い
  • 出荷および配送活動に関する会計処理の選択

(3)一定の期間にわたり充足される履行義務(ステップ5)

  • 期間がごく短い工事契約および受注制作のソフトウェア
  • 船舶による運送サービス

(4)一時点で充足される履行義務(ステップ5)

  • 出荷基準等の取扱い

(5)履行義務の充足に係る進捗度(ステップ5)

  • 契約の初期段階における原価回収基準の取扱い

(6)履行義務への取引価格の配分(ステップ4)

  • 重要性が乏しい財またはサービスに対する残余アプローチの使用

(7)契約の結合、履行義務の識別および独立販売価格に基づく取引価格の配分(ステップ1、2および4)

  • 契約に基づく収益認識の単位および取引価格の配分
  • 工事契約および受注制作のソフトウェアの収益認識の単位

 

(d) 設例

本公開草案の設例には、IFRS第15号の設例を基礎とした設例に加え、収益を認識するための5つのステップについての設例および以下のようなわが国に特有な取引等についての設例を設けています。

  • 消費税等
  • 小売業における消化仕入等
  • 設備工事のコストオン取引
  • 他社ポイントの付与
  • 有償支給取引
  • 工事損失引当金

 

4. 開示

(a) 表示

本公開草案では、企業が履行している場合または企業が履行する前に顧客が対価を支払う場合には、企業の履行と顧客の支払との関係に基づき、契約資産、契約負債または債権を適切な科目をもって貸借対照表に表示することとしていますが、経過措置として、契約資産と債権を区分表示しないことができることを提案しています。

 

(b) 注記事項

本公開草案では、顧客との契約から生じる収益については、以下を注記することを提案しています。

  • 企業の主要な事業における主な履行義務の内容
  • 企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点) 

IFRS第15号では、従来の会計基準に比較して、注記の定めを拡充していますが、本公開草案を最終化した会計基準を早期適用する段階では、上述した必要最低限の定めを除き、注記事項は基本的に定めないこととし、本公開草案が最終化され、会計基準として適用される時(2021年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首)までに、注記事項を検討し、定めることとしています。

適用時期等

1. 適用時期

本公開草案は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することを提案しています。

また、早期適用として、2018年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することができることを提案しています。なお、早期適用については、追加的に、2018年12月31日に終了する連結会計年度および事業年度から2019年3月30日に終了する連結会計年度および事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表および個別財務諸表から適用することができることも提案しています。

2. 経過措置

本公開草案では、IFRS第15号およびTopic 606を参考として適用初年度の経過措置を定めることを提案しています。また、IFRSまたは米国会計基準を連結財務諸表で適用している企業(またはその連結子会社)に対しては、IFRS第15号またはTopic 606における経過措置に従うことができることを提案しています。

このニュースレターは、概略的な内容を説明する目的で作成しています。この情報が個々のケースにそのまま適用できるとは限りません。したがいまして、具体的な決定を下される前に、PwCあらた有限責任監査法人の担当者にご確認されることをお勧めします。

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