「有価証券報告書の開示に関する事項‐「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」を踏まえた取組‐」等の公表(FASF、金融庁・法務省)

2018-04-04

日本基準のトピックス 第352号

主旨

  • 2018年3月30日、公益財団法人 財務会計基準機構(FASF)は、「有価証券報告書の開示に関する事項‐「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」を踏まえた取組‐」(以下、「本取組」)を公表しました。
  • 本取組は、FASFが、金融庁・法務省の要請を受け、金融商品取引法に基づく有価証券報告書と会社法に基づく事業報告並びに計算書類及び連結計算書類(以下、「事業報告等」)の記載の共通化を図るうえでの留意点や記載事例について、金融庁・法務省の協力を得つつ、検討し、取りまとめたものです。
  • また、同日、金融庁・法務省は「『一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について』を踏まえた取組について」を公表し、本取組に掲げられた「作成にあたってのポイント」及び「記載事例」の内容は、関係法令の解釈上、問題ないものと考えられる旨を示しています。

原文については、FASF及び金融庁のウェブサイトをご覧ください。

https://www.asb.or.jp/jp/other/web_seminar/kaiji_20180330.html

https://www.fsa.go.jp/news/30/20180330/20180330.html

経緯

我が国においては、現在、金融商品取引法に基づく有価証券報告書と、会社法に基づく事業報告等の2つの開示書類を作成する実務が行われており、「日本再興戦略2016」(2016年6月閣議決定)では、企業と投資家の建設的な対話を促進する等の観点から、「制度的に要請されている事項を一体的に開示する場合の関係省庁による考え方等を整理」することとされました。

その後、2017年12月に、内閣官房・金融庁・法務省および経済産業省は連名で、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」(※)を公表しました。これを受け、同日、金融庁と法務省は「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」を公表し、有価証券報告書と事業報告等の一体的開示をより行いやすくするための環境整備の一環として、一定の事項について、ひな形における明確化または法令解釈の公表等の対応を行うこととされていました。

これらを受け、一体的開示をより行いやすくするための環境整備の一環として、本取組において次の対応がなされました。

(1)ひな形における明確化

財務会計基準機構が公表した本取組は、「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」を踏まえ、金融庁・法務省の要請を受けて、金融庁・法務省の協力を得つつ、財務会計基準機構内に設置された「有価証券報告書等開示内容検討会」において議論された結果等を反映して作成されました。有価証券報告書と事業報告等の記載の共通化を図るうえでのポイントや記載事例を示すことを目的としており、ひな形における明確化を図っています。

(2)法令解釈の公表

金融庁・法務省が公表した「『一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について』を踏まえた取組について」では、「本取組に掲げられた「作成にあたってのポイント」及び「記載事例」の内容は、関係法令の解釈上、問題ないものと考えられ、企業において、有価証券報告書と事業報告等の記載内容の共通化を行う際には、本取組が参考になるものと考えられます。」と示されています。

(3)金融庁での相談受付窓口の設置

このほか、金融庁は、有価証券報告書と事業報告等の記載内容の共通化や両書類の一体化を希望する企業へのサポートのため、企業からの共通化等に係る相談を受け付ける窓口を設置しています。

記載の共通化に向けた留意点

本取組では、以下の15項目について、有価証券報告書と事業報告等の記載の共通化を図るうえでの有価報告書作成にあたってのポイントや記載例が示されています。

本取組における記載事例は、事業報告等との記載の共通化に取り組むための有価証券報告書の記載事例となっています。本取組における記載事例はあくまでも例示であり、有価証券報告書と事業報告等の記載を共通化する場合の様式及び内容を拘束するものではないとされています。したがって、実際の作成にあたっては、関係法令等を参照のうえ、有価証券報告書・事業報告等の利用者の適切な判断に資するよう、個々の企業の実態に応じた適切な開示を行うことが望まれるとされています。

  1. 「主要な経営指標等の推移」/「直前三事業年度の財産及び損益の状況」(開示府令第三号様式記載上の注意(5)/施行規則第120条第1項第6号)
  2. 「事業の内容」/「主要な事業内容」(開示府令第三号様式記載上の注意(7)/施行規則第120条第1項第1号)
  3. 「関係会社の状況」/「重要な親会社及び子会社の状況」(開示府令第三号様式記載上の注意(8)/施行規則第120条第1項第7号)
  4. 「従業員の状況」/「使用人の状況」(開示府令第三号様式記載上の注意(9)/施行規則第120条第1項第2号)
  5. 「経営上の重要な契約等」/「事業の譲渡」等(開示府令第三号様式記載上の注意(14)/施行規則第120条第1項第5号ハからヘまで)
  6. 「主要な設備の状況」/「主要な営業所及び工場」の状況(開示府令第三号様式記載上の注意(18)/施行規則第120条第1項第2号)
  7. 「ストックオプション制度の内容」/「新株予約権等に関する事項」(開示府令第三号様式記載上の注意(19)/施行規則第123条第1号)
  8. 「大株主の状況」/上位十名の株主に関する事項(開示府令第三号様式記載上の注意(25)/施行規則第122条第1項第1号及び第2項)
  9. 「役員の状況」/会社役員の「地位及び担当」並びに「重要な兼職の状況」(開示府令第三号様式記載上の注意(36)/施行規則第121条第2号及び第8号)
  10. 「社外役員等と提出会社との利害関係」/社外役員の重要な兼職に関する事項(開示府令第三号様式記載上の注意(37)及び開示ガイドライン5-19-2/施行規則第124条第1項第1号及び第2号)
  11. 「社外取締役の選任に代わる体制及び理由」/「社外取締役を置くことが相当でない理由」(開示府令第三号様式記載上の注意(37)/施行規則第124条第2項)
  12. 「役員の報酬等」/「会社役員の報酬等」(開示府令第三号様式記載上の注意(37)/施行規則第121条第4号及び第5号並びに第124条第1項第5号及び第6号)
  13. 「監査公認会計士等に対する報酬の内容」/「各会計監査人の報酬等の額」及び「株式会社及びその子会社が支払うべき金銭その他の財産上の利益の合計額」(開示府令第三号様式記載上の注意(38)/施行規則第126条第2号及び第8号イ)
  14. 財務諸表及び計算書類の表示科目(財規第17条第1項第7号等/計算規則第74条第3項第1号トからヲまで等)
  15. 財務諸表及び計算書類の1株当たり情報に関する注記(財規第68条の4及び第95条の5の2並びに連結財規第44条の2及び第65条の2/計算規則第113条)

(凡例)

開示府令:企業内容等の開示に関する内閣府令(昭和48年大蔵省令第5号)

開示ガイドライン:企業内容等の開示に関する留意事項について(平成11年大蔵省金融企画局)

財規:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令第59号)

連結財規:連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和51年大蔵省令第28号)

施行規則:会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)

計算規則:会社計算規則(平成18年法務省令第13号)

会社法の要請を満たす有価証券報告書の作成について

金融商品取引法と会社法の両方の要請を満たす一つの書類を作成し開示する際の実務の参考として、本取組の末尾に「III.(参考資料)有価証券報告書及び事業報告等の記載項目の対応表」が記載されています。

(参考)

「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」の公表(内閣官房・金融庁・法務省・経済産業省)(日本基準のトピックスNo.341号)

このニュースレターは、概略的な内容を説明する目的で作成しています。この情報が個々のケースにそのまま適用できるとは限りません。したがいまして、具体的な決定を下される前に、PwCあらた有限責任監査法人の担当者にご確認されることをお勧めします。