COVID-19がESGに及ぼす影響とアセットマネージャーにとっての意味

2020-07-27

※本稿は、2020年5月14日にPwC英国が発表したコラムの翻訳です。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

長期的な視点でESGに取り組む意義

世界が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による深刻な変化に適応しようとする中、ESG(環境、社会、ガバナンス)を考慮することは後回しでもよいと考える人もいるかもしれません。しかし、グローバルなパンデミックの中、原油価格が下落し、気候変動に関する議論が停滞していることを踏まえると、現在ほどESGが重要な時期はないと言えるでしょう。

短期的には、アセットマネージャーは、現在の危機によって浮き彫りとなっているESGのリスクと機会を深刻に考慮する必要があります。特に、今後ESGに関する規制の検討が進むことでもたらされるリスクと機会を精査しなければなりません。

長期的な回復に向けては、アセットマネージャーはESGを自らのビジネスに統合することが規制当局とクライアントの双方にとってさらに重要となるのだと認識すべきです。

COVID-19からESGインテグレーションを考える

COVID-19によって、バイサイドの企業がESGのリスクと機会を投資の意思決定やより広範な組織プロセスに統合する上で注意すべき数々の重要なESG課題が明らかになりました。

例えば、グローバルサプライチェーンの脆弱性が露呈したことで、投資家は投資先企業のガバナンスフレームワークの健全性や複雑な外部ネットワークの監視を精査することに一層の重点を置くようになるでしょう。

また、現在の危機によって、ESGインテグレーションにおいて考慮すべき事項として、社会的な要因への関心が高まっています。特に企業倫理と従業員への対応に関する領域で、その傾向が顕著に見られます。

一方、一部のコモディティや株式は、関連する二酸化炭素排出量が高いことから拙速に価値が切り下げられており、エネルギー需要の急激な減少にともなって「座礁資産」化がさらに進む可能性があります。この現象は欧州グリーンディールではすでに長期的なリスクとして認識されていますが、現在の環境下では予想よりも早く変化が起こり、バランスシート上も大きなリスクとなることが考えられます。

このようなESGの考慮が最終的にリターンにつながるのかという疑問を投げかける向きもあります。しかし、多くのESG投資戦略の特徴である非伝統的なリスクに焦点を当てるという方針は、すでに成果を生んでいるようです。COVID-19のパンデミックの間の平均的なESGファンドの損失は、S&P 500指数の損失の半分となっており、ボラティリティも非常に小さくなっています。

また、危機に際して企業が革新的な技術やビジネスモデルを採用することでパフォーマンスを向上するなど、新たなESG要因が投資パフォーマンスに与える潜在的なプラスの影響についても考える必要があります。

規制上求められること

アセットマネージャーは現在、タクソノミーやESG開示規則など、気候関連や広範なESGリスクの統合と開示に向けた多くの規制に直面しています。こうした動向を考えると、企業は、COVID-19に関連するESG課題が業界全体でどのように取り扱われるか、規制当局が大いに関心を持っていると想定すべきでしょう。

また、アセットマネージャーは、スチュワードシップへのアプローチを精査する際にも、これらの問題に規制上いっそうの注目が集まっていることを考慮する必要があります。英国で改正スチュワードシップ・コードが公開されてからわずか数カ月、EUで改正「株主権利指令」が発効されてからまだ1年も経っていませんが、投資家には、短期需要よりも持続可能なリターンを優先することでスチュワードシップへのコミットメントを示す機会が提供されています。企業は、労働者の安全を確保する、経営者への報酬や投資家への支払いよりも慎重な財務を優先するといった課題に、投資先企業とともに取り組むことを考えなければなりません。

英国の金融行動監視機構(FCA)は金融商品のガバナンスを注視しており、企業がどのように「グリーンウォッシング」のリスクを管理しているかを評価しようとしています。市場が不安定な状況では、企業はESGへの注力を緩める誘惑にかられるかもしれません。しかし、サステナブル投資として販売されているファンドは、うたい文句通りであると規制当局と顧客を満足させるためにも、その方針を遵守すべきです。

グリーンリカバリーに向けて

COVID-19の状況が落ち着き、サステナビリティの重要性が再認識されると、将来の経済回復の動向に影響を与える可能性も大きくなるでしょう。EUのサステナブルファイナンスの専門家グループがすでに述べているとおり、サステナブルファイナンスアクションプランの下で策定された多くの主な規制イニチアチブは、持続可能な経済再生を支援するために不可欠なものとなるでしょう。したがって、サステナブルファイナンスの課題は、今後政策決定者にとってより重要なアジェンダとなることが予想されます。

COVID-19からの回復がどのような形になったとしても、ESGの課題に関しては、従来のビジネスの状況に戻ることはないと言えます。COVID-19が浮き彫りにした環境・社会課題は、今後も企業のリスク管理において重要性を増し続けます。より先進的な企業は、最低限の規制遵守を超えて、根本的な改革という観点でどのようにESG課題に取り組むべきかを考え始めているはずです。不確実な市場環境においてもますます確実なのは、ESGがこれからも投資家にとって最も考慮すべき事項の1つだということです。

英語の原文はこちら

主要メンバー

坂野 俊哉

シニア・エグゼクティブ・アドバイザー, PwC Japan合同会社

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磯貝 友紀

パートナー, PwCあらた有限責任監査法人

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