GST(Goods and Service Tax 物品・サービス税)の導入

2017-02-26

8月3日にインド国会上院がGST(Goods and Service Tax)憲法草案の可決をしたことを契機に、同税法の来期からの施行が一気に現実味を帯びてきました。とは言え、この議論をする上で、本当に施行日がやって来るのかとか、GSTについて理解をしようとすると複雑であることは同じとか、はたまたインドの法制度の変更は誰のためにやっているのか分からないなど話が逸れてもそれに気付かず、「インド大変話」に花が咲いてしまいます。そんなGSTですが、施行日が来期になるのは間違いなさそうだとお尻に火が付きはじめ、各社日系企業様もGST導入準備に取り掛かられているかと思います。そのGSTについてここで概要を見ていきたいと思います。

施行時期

インド中央政府は2017年4月1日施行を目指し準備を進めています。GST法制定に時間を要した場合でも同10月1日までに施行と見られています。

税率

現時点では、GST中央委員会から4種の税率が提言されています。税率6%が食料などの生活必需品、12%および18%がスタンダードレート、26%が耐久消費財に対しての税率としています。この点まだ議論の余地があり、GST法制定(今年12月中旬見込)までは確定税率は発表されません。

GSTによる事業への影響

まず税制コンプライアンスへの影響ですが、GSTでは税目は3つ(CGST、SGST、IGST)です。中央政府が歳入権限を持つCentral GST(CGST)および州政府が同権限を持つState GST(SGST)は、州内で発生する取引にのみ賦課され、Inter‐State GST(IGST)は州跨ぎ取引および輸入取引に賦課されます。これら3種類ごとに毎月納付申告が要請されますので、年間12カ月で3種計36回の申告となります。そしてこれらをまとめた年間申告が1回あり、合わせて37回の申告です(州跨ぎおよび輸入取引が無い事業会社の場合はIGSTが無いため25回です)。これに加え事業ごとに異なる申告が月次(12カ月)でありますので年49回の申告となります(州跨ぎおよび輸入取引が無い事業会社の場合は年37回です)。さらにGSTは従来の間接税と異なり、州ごとに事業拠点を持つ場合は州ごとで申告納付が要請されるため、上述の回数×事業拠点のある州数による年間申告数となり、従来のそれと比較して回数は大幅に増加します。

税務コンプライアンスに加え、従来の税制による課税とは大きく異なり、一部を除く全ての物品およびサービス取引に係る間接税が統一ルールであるGST法に則ることになり、所謂日本の消費税の様に物やサービス役務を提供した時点および地点で課税となり、仕入時と販売時に発生したGSTは相殺控除可能です。つまり物品仕入もしくはサービスを受けた時点で支払ったGSTを、物品もしくはサービスの販売提供時点で受領したGSTで相殺控除できるため、実質的なコストダウン傾向となり仕入調達コストおよび販売価格を適正に下方修正し見直す必要が出てきます。この影響が、販売・仕入調達価格、同契約書、サプライチェーン、運転資金やキャッシュフロー、引いてはそれらの運用管理を司る関連ITシステムにまで派生し、ただの税制改正では無い準備が必要になってくるのです。次号ではそれら派生の影響について概要解説をしていきたいと思います。

濱田 孝一(はまだ こういち)

2005年中央青山監査法人監査部への入所を経て、2006年あらた監査法人入所。インド赴任前はハイテクノロジー、エンターテインメントを中心としたグローバル企業の会計監査業務、内部統制報告制度に基づく内部統制の導入・改善支援、東証一部上場のIPO監査、上場企業のIFRS初度適用アドバイザリーおよび監査業務に従事。2014年12月よりPwCインド(ムンバイ事務所)着任。PwCインドにおいては、西インドを中心に監査・税務・アドバイザリーを幅広く担当している。なお、本文中の意見に係る部分は、全て筆者個人の私見である。