石油下流業界における在庫評価影響を除いた利益

2015-07-21

アジアの原油価格の一般的な指標であるドバイ原油価格は、2014年前半は1バレル当たり100 米ドル前後で推移し、6月には一時1バレル当たり110米ドル超まで上昇しました。その後、米国のシェールオイルの増産やOPECの減産見送りによる供給過剰に対する懸念などの影響を受け、一転して大幅に下落し、2014年12月末以降は1バレル当たり50米ドル前後で推移し、2015年3月末においても同水準を維持していました。
わが国の石油元売り各社は、「石油の備蓄の確保等に関する法律」に基づく備蓄義務による在庫保有の必要性などから、価格変動による在庫評価の影響が重要なものとなる場合があります。2014年12月期および2015年3月期は、前述のとおり原油価格が急落したことによって、石油元売り各社は多額の在庫評価損を計上し、軒並み赤字決算を強いられています。

従来より、主要な石油元売り各社は、在庫評価の影響が損益全体に与える影響が大きいことから、実質的な利益水準を表すために在庫評価影響を除く利益を開示しています。これは通常、会計基準に準拠しない数値(いわゆるNon-GAAP数値)として開示されているもので、監査の対象ではなく、また、各社算定方法が異なる可能性があり、その呼び方もさまざまです。加えて、在庫評価影響を除く利益を開示しているケースもあれば、その影響額を開示しているケースもあります。

この慣行は日本に限られたものではなく、海外の石油精製事業を行う企業も開示を行っており、当該業界においては一般的に、Non-GAAP数値であっても投資家やアナリストなどが重視する重要な指標として考えられています。本稿では、各社の業績理解に資する在庫評価影響を除く利益の一般的な考え方について解説します。なお、本稿では在庫評価影響を除く利益を「実質的な利益」と表現しています。冒頭に記載したとおり、昨今の原油価格の変動によって、わが国の主要な石油元売り各社の在庫評価の影響がどのように表れているかについてご注目ください。

在庫評価影響を除く実質的な利益

在庫評価影響を除く実質的な利益は、期首と期末の在庫量が変わらなければ、後入先出法(Last In First Out:LIFO)による利益とほぼ同じとなります。一方で、わが国の主要な石油元売り各社は棚卸資産の評価方法として総平均法を採用しています。

総平均法を採用する場合、原油価格が上昇しているケースでは、会計期間全体に比較して価格の低い期首の在庫が平均されて売上原価に含まれるため、売上原価を押し下げる効果があります。一方で、原油価格が下落しているケースでは、会計期間全体に比較して価格の高い期首の在庫が平均されて売上原価に含まれるため、売上原価を押し上げる効果があります。原油価格の変動幅が大きい場合には、それに伴い会計上の利益が大きく変動しやすい状況にあります。

後入先出法を採用する場合、期首と期末の在庫量が変わらなければ、期首の在庫は売上原価に含まれないため、原油価格の変動による在庫評価影響を除いた実質的な利益を計算することが可能となります。

設例:実質的な利益のイメージ

【前提】原油価格が下落しているケース

 

数量

金額

期首在庫

1

120

当期仕入(1)

1

80

当期仕入(2)

1

50

当期仕入(3)

1

30

売上

3

300

【実質的な利益と会計上の利益との比較】

 

売上高

売上
原価

売上
総利益

期末
在庫

実質的な利益との差異

備考

実質的な利益

300

160

140

120

在庫評価影響を除いた結果として当期仕入=売上原価となる。

平均法

300

210

90

70

△50

価格の高い期首在庫が平均されて売上原価を引き上げる。

後入先出法

300

160

140

120

期首と期末の在庫量が一致しているため、実質的な利益と一致する。

在庫評価影響を除いた各社の業績

わが国の主要な石油元売り各社の連結損益計算書上の利益は、以下のとおりです。

(単位:億円)

 

JXホールディングス株式会社

出光興産株式会社

コスモ石油株式会社

東燃ゼネラル石油株式会社

昭和シェル石油株式会社

2015年
3月期

2015年
3月期

2015年
3月期

2014年
12月期

2014年
12月期

売上高

108,825

46,297

30,358

34,511

29,980

営業損失(△)

△2,189

△1,048

△384

△729

△181

経常損失(△)

△1,501

△1,076

△496

△734

△167

※東燃ゼネラル石油株式会社および昭和シェル石油株式会社については、12月決算のため、2014年12月期の数値を記載しています。

実質的な利益に関して、JXホールディングス株式会社は在庫影響を除いた場合の経常利益相当額2,552億円、出光興産株式会社は在庫評価影響除きの営業利益285億円、コスモ石油株式会社は在庫評価損1,161億円および在庫評価損の影響を除く経常利益665億円(石油事業にかかる在庫評価の影響を除くセグメント利益220億円も開示)、東燃ゼネラル石油株式会社は在庫評価損865億円(石油事業にかかる在庫評価損益を除くセグメント利益177億円および在庫評価損失857億円も開示)、昭和シェル石油株式会社はたな卸資産評価の影響などを除いた場合の経常利益相当額345億円を開示しています。

前述のとおり実質的な利益の算定方法は各社異なる可能性があり、開示の仕方もさまざまであることから、企業間比較を正確に行うことは難しい側面もありますが、各社とも在庫評価影響が営業損失、経常損失の金額を上回っており、在庫評価影響を除いた実質的な利益は黒字であることから、原油価格の変動による影響を除けば、一定のマージンの確保に成功しているといえます。

PwCあらた監査法人
第二製造・流通・サービス部
マネージャー 影平 真也
マネージャー 鈴木 海航
マネージャー 田島 靖大

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