統合報告-あらたなステージへ-

2016-03-18

国際統合報告フレームワークの公表から2年あまりが経過し、わが国で統合報告書を発行する企業も200社を超え、その作成に取り組み始める企業も増えています。より実のある統合報告とするためのヒントをご紹介します。

統合報告書作成担当者の悩み

国際統合報告フレームワーク(以下、フレームワーク)の公表から2年あまりが経過し、わが国で統合報告書を発行する企業も200社を超えました。このような状況の下で、統合報告書の作成に取り組み始める企業も増えています。しかし、既に統合報告書を作成、公表した企業の担当者からは、労多くして功少なしという声も聞かれます。
本コラムでは、より実のある統合報告とするための3つのヒントをご紹介します。

統合報告への取り組み3つのヒント

1)統合報告書の読者は明確ですか?

フレームワークでは投資家や債権者といった、いわゆる「財務資本の提供者」を主な統合報告書の利用者とし、それ以外の全てのステークホルダー(従業員、顧客、サプライヤー、地域社会、規制当局など)に対しても統合報告書は有益なものになるとしています。(同1.7、1.8項)。
したがって統合報告書を作成する際には、まず以下の点を明確にする必要があります。

  • メインの利用者である「財務資本の提供者」もいくつかのカテゴリに分かれます(例 機関投資家、金融機関、個人株主など)。この中で最も重視しているのは、どのカテゴリですか?
  • 「財務資本の提供者」以外のステークホルダーを、どの程度読者として想定していますか?
  • 統合報告書の読者と考えているステークホルダーのリストを、順位づけをしつつ作成することができますか?

統合報告書は価値創造に関するコミュニケーションであるとされています。コミュニケーションは、伝える内容が同じでも相手が異なればその伝え方は異なるため、読者となるステークホルダーを特定することは統合報告書作成のための最初の一歩となります。逆に言えば、読者が明確ではない八方美人なレポーティングは捉えどころがなく、読者にとって「伝わらない」統合報告書となるのではないでしょうか。

2)統合報告書は社内の対話を経て作成されていますか?

統合報告書は原則主義アプローチにより作成されるため、その過程で判断を下す必要があります(フレームワーク1.9項、1.10項)。また、統合報告書のコンテンツである企業の価値創造プロセスは、概念的な要素が多く各人の想定に違いが生じることから、これを擦り合わせていく必要があります。
これらの過程は、統合報告書の作成担当者(部署)のみが行うものではなく、マネジメント層をはじめ社内での対話を通して行うべきものです。統合報告書に含まれるガバナンス責任者からの表明に「ガバナンス責任者の集団的思考に基づき、統合報告書が作成、表示されたことに関する同意」を含めることを求められるのは、その表れと言えるでしょう(フレームワーク1.20項)。

この点、以下の点から検討することが有意義です。

  • 統合報告書の作成に際して、作成担当者(部署)は社内の他の部署とコミュニケーションを取っていますか?
  • 社内で意見の相違はありますか。意見の相違があった場合、最終的にそれをどのように解決しましたか?
  • マネジメント層は、統合報告書の作成にどの程度関与していますか?

このような取り組みが、統合報告の大きなメリットの一つとしてあげられる『サイロ(障壁)の打破』に結びつきます。社外のステークホルダーとの対話の前に、社内での対話が必要なのです。

3)統合報告書は適切な業務プロセスや情報システムの下で作成されていますか?

統合報告に取り組み始めた段階では、成果物である統合報告書を作成することばかりに目がゆきがちです。しかし、それを作成する業務プロセスや情報システムにも目を向ける必要があります。

  • 統合報告書を作成するための情報と、マネジメント層が経営上の意思決定をする際の情報は整合しているでしょうか?また、両者は同じ業務プロセスや情報システムで入手されるものでしょうか?
  • 財務情報に限らず、非財務情報の収集に関する業務プロセスや情報システムに関しても、内部統制は有効に機能しているでしょうか?

統合報告書は外部向け、経営上の意思決定情報は内部向けと位置付けられますが、重大な競争上の障害が生じる場合は別として(フレームワーク3.51項)、二枚舌のコミュニケーションにならないためにも、両者の情報は乖離(かいり)することなく整合性が取られていることが望ましいです。

また、2013年5月に行われたCOSOのフレームワークの改訂により、財務情報ならず非財務情報も内部統制の対象に含まれることとなりました。統合報告書の指導原則の一つに「信頼性と完全性」がありますが、その信頼性を高める手段の一つに内部統制が挙げられています(フレームワーク3.40項)。昨今、コーポレートレポーティング、特に財務報告をめぐる不適切な事例があります。統合報告においてもこのような視点を先んじて考慮することで、信頼性あるコーポレートレポーティングによりステークホルダーからの支持を得ることが必要になります。

PwCが提供できるサービス内容

2015年11月に公表した「統合報告の導入ガイド」にも記載していますが、単に既報告書の構成を変える、あるいはあらたな情報を付け加えるだけでは統合報告の質の向上は望めないとPwCあらた監査法人(PwC)は考えています。PwCが考える統合報告導入のロードマップとは、外部のステークホルダーからの声を聞きながら自社にとっての重要な課題を見定め、その課題に対して自社がどのような価値創造を行っているかを把握しつつ、内部の業務プロセスや情報システムを自社の戦略と整合したものにした上で、外部公表用の統合報告書につなげていく、というものです。

しかし、これらのロードマップを全て達成しないと統合報告書は公表できない、と考えるのは正しくありません。実情を踏まえたあるべき統合報告の姿を見定めながら、継続的にその質を向上させることこそが重要であるとPwCは考えています。この取り組みはロングジャーニーと評されることもあり時間を要しますが、その長い道のりを自らの足で進んでいく企業を、PwCは多くの形でサポートします。

サービスの詳細については、こちらからお問い合わせください。

PwCあらた監査法人
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