新規上場企業(IPO企業)の公開価格、初値、および初値PERの比較(2017年上半期)‐情報通信業界

2017-08-29

業種別会計事例

今回は、新規上場した企業(以下、IPO企業)の株価の騰落率に注目し、情報・通信銘柄の市場の期待について分析しています。

公開価格と初値の比較

まず、2017年上半期(2017年1月1日~2017年6月30日)のIPO企業について、その公開価格と初値【表1】を見ていきます。以下の表は、2017年上半期に新規上場した企業の初値が、公開価格と比較してどの程度騰落したかを、東証一部・二部と新興市場(JASDAQ、マザーズ、アンビシャス)に区分したものとなります。

【表1】2017年上半期公開価格と初値の比較

 

東証一部・二部

企業数:7

新興企業

企業数:32

平均値

+16%

+136%

最大値

+105%

+361%

最小値

-5%

0%

注記:

  1. 2017年1月1日~2017年6月30日までに新規上場した企業を対象
  2. 騰落率は (初値-公開価格)÷公開価格 により算定
  3. REIT、Pro Marketを除く

2017年上半期IPO初値における特徴として、東証一部・二部の平均騰落率が新興市場に比して低いことが挙げられます。

東証一部・二部の平均騰落率は16%となっています。近年のIPOの傾向として、大手企業や地方の老舗企業の上場といったように、会社の規模が大きく、比較的安定成長している企業の上場が増えてきており、2017年上期においても、株式会社LIXILビバや株式会社スシローグローバルホールディングスなどが上場を果たしています。そのため、東証一部・二部の平均騰落率は新興企業に比較して小幅な騰落率におさまったと考えられます。それに加え、2017年上半期の日経平均株価、TOPIX共に上昇基調であることを反映し、騰落率はプラス方向に推移したと考えられます。

これに対して新興市場の平均騰落率は136%と高い結果となりました。昨年(2016年)は、Brexitの影響などから、マーケットの大幅な変動が懸念される中、IPOを控えた企業も多かったことなども影響してか、平均騰落率は82%と100%を下回るものではあったものの、新興市場IPO銘柄の平均騰落率は極めて高いという例年の傾向を踏襲しています。2014年126%、2015年103%となっており、2017年上半期もその傾向は同様となりました。これは、一因として特にマザーズが東証一部への市場変更を視野に入れた成長企業向け市場として認知されており、投資家の成長期待の大きさによるものが挙げられます。そこでどのような業種が突出した騰落率となるのかについて、以下で新興企業の業種別騰落率を見ていきます。【表2】は2017年上半期の新興市場IPO企業32社を騰落率の高い順に並べたものになります。

【表2】2017年上半期新興市場IPO企業32社の騰落率

業種

騰落率

企業数

倉庫・運輸関連業

221%

1

情報・通信

168%

10

小売業

155%

4

卸売業

144%

3

サービス業

134%

9

不動産業

74%

1

電気・ガス業

50%

1

電気機器

50%

1

医薬品

26%

1

建設業

4%

1

注記:

  1. 2017年1月1日~2017年6月30日までに新規上場した企業を対象
  2. REIT、Pro Marketを除く

上記表より、情報・通信銘柄の騰落率の高さが顕著であることが分かります。この傾向は、2014年以前より続いているもので、新興市場における情報・通信銘柄への期待の大きさを垣間見ることができます。

初値PER(株価収益率)の比較

次に、2017年上半期IPO企業の初値PERを見ていきます。PERは「株価÷1株当たり当期純利益」によって算出され、一般に成長率の高い企業ほど大きくなる傾向にあります。【表3】は2017年上半期の初値PERを市場ごとに算出したものになります。

【表3】2017年上半期IPO企業初値PER

 

東証一部・二部

新興市場

 

IPO

市場全体

IPO

市場全体

平均PER

19.0

16.6

73.4

110.0

注記:

  1. 2017年1月1日~2017年6月30日までに新規上場した企業を対象
  2. REIT、Pro Marketを除く

2017年上半期における東証一部・二部IPO企業の平均PERは19.0倍であり、これは同期間における東証一部・二部上場企業の平均PER16.6倍とほぼ同水準となりました。

これに対して2017年上半期新興市場IPO企業の平均PERは73.4倍であり、極めて高い数字となりました。当期間における新興市場全体の平均PERが110.0倍であることからも、IPO銘柄を含めた新興市場銘柄全体に対する投資家の将来成長期待が大きいものであることが伺えます。

PwCあらた有限責任監査法人
第1製造・流通・サービス部

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