事前確認および相互協議に関わる担当当局の組織再編成(米国)

2011年7月27日、内国歳入庁(以下、IRS)は、事前確認(APA)業務と相互協議(MAP)となる移転価格事案を取り扱う租税条約室の人員を、大規模法人・国際部(以下、LB&I)の国際事業部門に統合することを発表した。この結果、事前確認業務は、IRS首席顧問官室(Office of Chief Counsel)からLB&Iに移管されることになる。この新たな「事前確認および相互協議業務」は一人の幹部職員が統括することになり、同室はIRSの新しい移転価格責任者であるSam Maruca氏の所管となる。

事前確認業務は、納税者が移転価格問題の解決が予め図れるよう事前確認を交渉し実行するものであり、これまでバイラテラル(二国間)の事前確認を交渉し実行する際は租税条約室と共同で対応してきた。バイラテラルの事前協議に関して、事前確認室は、IRSの当初の交渉ポジションの策定支援を行い、一方で租税条約室は、主に条約相手国との最終ポジションにつき交渉をしてきた。最近になって租税条約室は、増加する事前確認申請の未処理案件に対応すべく、バイラテラルの事前確認の交渉を最初から最後まで行うようになった。今回の再編成は、事前確認業務に対応する人員を増やし、事前確認手続きの効率性を高めることを目的として実施されたものであるが、同時に、IRS長官が国際税務執行に重要性を置いていることを示すものでもある。

またIRSは、新しい職位として「副長官補(国際担当)」を発表したが、これは権限のある当局および国際的調整の機能を統括する職位であり、非移転価格事項に関してIRSと条約相手国との調整を円滑に行う。副長官補(国際担当)は、IRSの情報交換業務を監督すること、国際タックスシェルター情報センター(JITSIC)やOECDにIRSが参加すること、および非移転価格事項に関して権限のある当局として条約相手国との合意を進めることに責任を有する。また、IRSの在外アタッシェの活動の管理や、租税条約および情報交換協定の交渉を支援することをも行う。

事前確認業務と相互協議業務を増員のうえ一つの部署に統合することにより、IRSは未済となっている大量の事前確認申請をより効率よく対処することができるようになる。バイラテラルの事前確認を交渉し実行する手続きは、かつてのように事前確認室から租税条約室に「引き継ぐ」ことが必要でなくなり、事前確認の合意条件の交渉において、対納税者と対条約相手国で同じ職員を担当させることにより、一層の効率化を図ることができるようになる。長期的に見れば、この再編成は、急増する事前確認申請や一層複雑になるこれらの申請に対処するために、IRSをより強固な立場に置くものであり、恐らくIRSの当初の交渉ポジションと条約相手国と交渉した後の最終ポジションとの間に更なる一貫性を持たせるものになろう。

出典:PwC US, Pricing Knowledge Network
「月刊 国際税務」 2011年9月号収録 Worldwide Tax Summary
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース編