小規模事業援助法が施行(米国)

2010年9月27日、オバマ大統領は小規模事業援助法(Small Business Jobs Act of 2010)に署名し同法は正式に施行された。この法律は小規模事業の融資援助と活性化が主な目的であるが、大・中企業、及び個人にも有益な税務上の措置が多く含まれている。その概要は次のとおりである。

特別減価償却の適用延長
現行法では2008年と2009年に事業の用に供された一定の固定資産の取得価額の50%が特別減価償却(Bonus Depreciation)として初年度に損金算入可能であるが、2010年に購入し事業の用に供された固定資産にも適用されることになった。2009年の米国再生再投資法で特別減価償却とともに延長された試験研究費及び代替ミニマム税控除の未使用額の現金化は、今回は延長されなかった。
また、 長期請負契約に関する工事進行基準の計算(内国歳入法第460条(b)(1)(A))において、2010年度の特別減価償却が工事進捗率の計算上考慮されないことになった。これにより、特別減価償却を適用したために進行中の工事に関する所得の認識が加速されることはなくなった。

固定資産の一括損金算入制度の緩和措置の延長
一定の固定資産の取得価額を一括損金算入できる制度(内国算入法第179条)に関して、3月に施行された雇用促進法では、2010年は25万ドルまで一括損金算入ができ、年間の固定資産取得価額の合計が80万ドルを超えると損金算入額は段階的に減額され、105万ドル以上になると一括損金算入はできないとされていた。2011年以降は、一括損金算入額は2万5千ドル、年間合計取得価額が20万ドルを超えると一括損金算入額が減額される予定となっていた。しかし、今回の改正により2010年と2011年の一括損金算入枠が50万ドルに増額され、更に年間合計取得価額が200万ドルを超える場合に一括損金算入額が減額されることになった。
更に、適格内装工事費(Qualified Leasehold Improvement)等一定の不動産についても、2010年と2011年のみ179条が適用されることになった。一括損金算入額は25万ドルまでであるが、課税所得が一括損金算入額より少ないため2010年に損金算入できなかった額は2011年に繰り延べることができる。しかし、2011年に使用できなかった額は無効となる。

携帯電話、モバイル機器の不適格資産からの除去
乗用車など不適格資産(Listed Property)は、事業目的を立証できない限り、その費用は控除できず、更に事業目的が立証された場合でも減価償却費の損金算入は一定の制限を受ける。この不適格資産の中に携帯電話、モバイル機器も含まれていたが、新法により除外された。これにより、携帯電話、モバイル機器についての事業目的の立証は不要となり、減価償却費の制限も不適用となる。この改正は2010年1月1日以降に終了する事業年度から適用となる。

新規事業の立上げ費用の損金算入緩和措置
新たに事業を立ち上げる際に発生した費用(Start-Up Expenditure)は、納税者の選択により、現行法では5千ドルまで一括損金算入が可能である。ただし、その総額が5万ドルを超えると段階的に減額され、5万5千ドル以上になると損金算入はできず、残額は15年に渡り減価償却される。今回の新法では控除額が1万ドルまで増額され、6万ドルを超えると段階的に減額されることになった。この改正は2010年1月1日以降に開始する事業年度から適用となる。

適格中小法人株式譲渡益の免税(個人所得税)
現行法では個人納税者は最低5年間所有した適格中小法人株式の譲渡によるキャピタルゲインを50%まで免税にすることが可能である(適格中小法人とは株式発行当時の総資産が5千万ドル以下の事業法人である)。ただし、キャピタルゲインの免税額は代替ミニマム税の課税所得の計算上加算項目となるため、代替ミニマム税を支払う納税者はこの50%免税の恩恵を受けることはできなかった。新法では免税率が50%から100%に引き上げられ、更に代替ミニマム税の調整は不要となった。したがって、適格中小法人株式の譲渡益は通常の所得税と代替ミニマム税の両方で免税となる。この免税措置は2010年に取得された適格中小法人株式のみに適用となる。

受動的活動から発生する支払いに対する報告義務
上術の減税以外の主な改正として、支払いに対する報告義務が強化された。原則的に全ての事業者は、法人以外の者に年間600ドル以上の支払いを行った場合、その旨をForm 1099 等によりIRSおよび本人に報告する義務がある。2010年3月に施行となった医療保険制度改正法では、法人に対する支払いについてもこの報告義務が適用されることになったが、減税財源確保のため、今回の新法では更に納税者が事業を営まない場合、つまり受動的活動から発生する支払いに対しても報告義務が発生することになった。これにより、不動産の賃貸等を行う個人納税者にも支払調書の発行義務が生じる。

債務保証料の源泉国判定の明文化
2010年2月、租税裁判所はContainer社の事案で外国親会社に支払われる債務保証料は外国源泉所得であるという判決を下した。しかし、今回の新法では、債務保証料は債務者の所在国が源泉地であることを明文化した。日米間の債務保証料は原則的に日米租税条約により免税となっているが、日本企業の米国子会社が日本に支払う債務保証料が米国源泉であれば条約の恩恵開示のための申告が必要となる場合がある。

出典:PwC米国 日系企業部
「月刊 国際税務」 2010年11月号収録 Worldwide Tax Summary
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース編