2010年3月に成立した雇用対策法の一部である「外国口座税務コンプライアンス法」 (Foreign Account Tax Compliance Act, FATCA) により、内国歳入法6038D条が新たに追加されました。同条により、一定の国外金融資産を有する納税者は確定申告書に様式8938を添付しその内容を開示することが義務付けられました。この様式の最終版は昨年12月19日に内国歳入庁(IRS)より発表されています。
従来の外国預金報告書 (様式TD F 90-22.1)は、1970年に導入されたTreasury Department Bank Secrecy Act Ruleによるもので申告書とは別に提出されますが、今回は内国歳入法に基づくものであり、通常の確定申告書の一部として開示が義務付けられております。よって、納税者によっては、同じ資産を二重に報告しなくてはならない場合もあります。様式TD F 90-22.1で報告したからといって様式8938の開示義務を回避することはできませんので留意が必要です。
既婚者、非既婚者の各々について、国外にある報告対象資産の年間合計最高残高、又は12月31日時点の残高のいずれかが下記の限度額を超える場合に開示・報告義務が発生します。米国外に住む米国市民(永住権保有者を含む)には別途限度額が設定されています。現時点では米国非居住者に対する開示義務は免除されております。米国居住者となる日本人の皆様は「米国居住者」の欄をご覧ください。
| 年度末残高 | 年間最高残高 | ||
| 米国居住者 | 独身者・個別申告者 | 5万ドル | 7万5千ドル |
| 夫婦合算申告者 | 10万ドル | 15万ドル | |
| 国外居住の米国市民等 | 独身者・個別申告者 | 20万ドル | 30万ドル |
| 夫婦合算申告者 | 40万ドル | 60万ドル | |
| 米国非居住者 | 報告義務は無い | ||
なお、夫婦個別申告者の場合、夫婦共同名義の口座、その他の共有財産が上記の限度額を超える場合はそれぞれの申告書で報告する必要がありますので留意が必要です。
- 外国金融機関に有する口座
(預貯金・社内預金・住宅積立や年金積立金等を含む)
- 外国企業の株式または持分(持株会も含まれる)
- 外国の匿名組合や合名会社等の持分
- 外国の投資会社に預託している証券
- 外国信託預金
- 外国人に対する貸付金や債権
- 外国に有する年金、繰延給与等
- その他、先物投資等外国企業が発行している金融商品も含まれる
- 米国以外の国の厚生年金等
- 米国内の証券会社によって管理されている国外資産
- 外国金融機関の米国支店に有する口座
- 米国金融機関の海外支店に有する口座
外国預金の場合
その他の資産の場合
期限内の報告を怠りますと、1万ドルの罰金が科せられます。当局から未報告である旨の通知を受け取った後に申告を怠ると最高5万ドルの罰金が追加で科せられます。また、報告対象資産に関わる所得の申告を怠ると税額不足額に対して40%の罰金が課せられます。
所得税の確定申告の時効は申告日から原則として3年ですが、確定申告でこの報告対象資産の開示を怠りますと、この3年の時効が適用されなくなる場合がありますので注意が必要です。
米国居住の日本人駐在員の方も2011年度の確定申告書よりこの開示義務が適用となります。開示内容は幅広いので、今年4月15日期限の確定申告に向けて必要な資料を準備しておく必要があると思われます。
また、6038D条は新しい規則で、不明瞭な点も多々あり、国外資産が多岐にわたる場合は確定申告が複雑となる恐れがあります。この新しい規則に関してご質問がある場合は早めに専門家にご相談ください。