欠損金の繰り戻し期間の延長が可能に(米国)

2009年11月6日、労働者、持ち家および事業支援法(Worker, Homeownership, and Business Assistance Act of 2009)にオバマ大統領が署名した。これにより多くの納税者は2008年と2009年に発生した欠損金の繰り戻し期間の延長を選択することができ、大きな利益がもたらされることになる。本制度の概要は次のとおりである。

現状
一般に、欠損金は2年間の繰り戻しと20年間の繰り越しが認められている(一定の特別負債損失、災害損失、農業損失、その他一定の損失はより長い繰り戻しが認められている)。納税者はまた、欠損金の繰り戻しをせずに、繰り越しを選択することもできる。米国再生再投資法(American Recovery and Reinvestment Act of 2009、ARRA)は一定の適格小企業(ESBs)が2008年に発生した欠損金を繰り戻す期間の延長の選択をできるようにしている。ここでいう適格小企業は原則、1500万米国ドルの年平均総収入の基準を満たす企業である 。

規定の概要
適用となる欠損金は2008年1月1日以降に終了し、2009年12月31日以前に開始する課税年度の欠損金である。それゆえ納税者は、2008年もしくは2009年中に終了もしくは開始する課税年度に本規定を選択できる。この選択は1課税年度についてのみ行なうことができるが、現行法に基づき2008年度の欠損金の適用を選択した(選択する)適格小企業には例外が認められる。適格小企業は2009年度の欠損金の適用も選択することもできるので、繰り戻し期間の延長は、結果として2008年度と2009年度の欠損金に適用できるといえる。

本規定を選択した納税者は、適用対象となる欠損金の繰り戻しの期間を、2年ではなく、最大5年まで延ばすことができる。なお本規定により繰り戻しの期間の延長を選択した場合は、代替ミニマム税計算における欠損金控除の90%の使用制限については適用が停止される。

5課税年度前までの繰り戻しに関する制限
発生年度の5年前に繰り戻す欠損金額は課税所得の50%に制限される。ただし、2008年度の欠損金の適用を現行法に基づき選択した(選択する)適格小企業には50%制限の適用除外が認められている。この除外規定は、2008年度の欠損金の繰り戻し額の全額を控除することを認めている現行のルールに準拠するものといえる。

手続上のルール
本規定に基づく選択は2009年に開始する直近の課税年度の確定申告書の申告期限(申告延長を含む)までにしなければならない。

乱用防止策
法律上、財務省は欠損金の繰り戻し期間の延長の乱用を防止するためのルールを設けることになっている。この乱用防止策には、水増し防止策、過当取引防止策および1091条の仮装取引防止策と同等の規制を含むものとなる。

不良資産救済プログラム(TARP)参加者の適用除外
繰り戻し期間の延長は次の納税者には適用にならない。

  • 連邦政府が2008年緊急経済安定化法に基づいて、いつでもその資本持分もしくは何らかの資本持分を取得するためのワラント(もしくはその他権利)を取得できることになっている納税者。ただし、小企業向けの税額控除の適用可能性を広げることを明らかに目的としている財務省のプログラムに基づいて法律の制定日以降に支援を受けた金融機関に対しては一定の例外が認められている。
  • 連邦全国抵当権協会と連邦住宅貸付抵当金融会社
  • 2008年か2009年のいずれかの時点で、上記2つのグループの納税者として同じ関連グループ
    (原則として1504条に定義されている)のメンバーである納税者。

経過措置
以前繰り戻しをしないことを選択してしまった納税者のために、また、仮還付のための申請書の提出期限が過ぎてしまった場合のために、次の経過措置が、本法制定の日よりも前に終了する課税年度に繰り戻しが可能な欠損金(もしくは営業損失)を有する納税者に用意されている。

  • 欠損金の繰り戻し期間についての権利放棄は、2009年中に開始する納税者の直近の課税年度確定申告書の提出期限(申告延長を含む)の前であれば取り消すことができる。
  • 欠損金のフォーム1139に基づく仮繰り戻し調整の申請は、2009年中に開始する納税者の直近の課税年度確定申告書の提出期限(申告延長を含む)の前になされれば、適切な時期に提出されたものとして取り扱われる。
出典:PwC米国、 Washington National Tax Services, WNTS Insight
「月刊 国際税務」 2010年1月号収録 Worldwide Tax Summary
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース編