2008年7月28日、歳入関税庁(HMRC)は、英国の利子支払繰延規則(late interest rules)の変更案に関する諮問文書(consultation document)を発表した。この改正案は、英国に多額の資金融資をしている米国の企業グループに対して大きな影響を与えるものとみられる。
英国での利子支払繰延規則では、関連者間利子で、会計年度終了後12カ月以内に支払われず、英国法人税法上全額控除されないものは、支払いがなされるまで費用控除は認められない。主として租税回避防止規定の一つであるが、この規則が極めて有効なタックスプラニング手法として利用され、英国での課税利得がこれらの控除を行うに不足する場合に利子費用控除が繰延べられている。
改正案の詳細
この改正案は、EU条約が保障する諸自由のもとで、これらの法律が差別的であるとの歳入関税庁に対する納税者からの各種申立てを受けた結果、作成されたものである。この歳入関税庁の改正案は、利子支払繰延にかかわる規則の改正を意図したものであり、関連者の貸し手が英国ないし外国の会社であっても同等に適用される。歳入関税庁の案では二つの主な選択肢が提案されている。
(選択肢A) 利子支払繰延規則をすべての関連者間債務(すなわち、英国―英国間のローンも含む)
に拡大適用し、おそらくその場合は、支払基準で利子課税がなされることとなろう。したがって、外国の関連会社からのローンの利子については今後も費用控除を繰延べられるが、英国―英国間のローンについては実務上の負担が増えるであろう。当年度に利子費用控除を適用したい会社は従来どおり決算日後12カ月以内に利子を支払う必要があろう。
(選択肢B) 現行法を廃止して租税回避防止テストを適用し、利子を支払わないことで税務上恩典を
得るという“主たる利益”がある場合には控除が否認される。この規則がどのように立案されるかは明確ではないが、企業グループにとっては利子費用控除時期の操作は制限される。
現在のところ、諮問案が出ているのみで、歳入関税庁の発表もこの改正の導入時期について触れていない。しかし、早ければ改正は2009年4月にも導入される可能性がある。
この諮問文書と同時に、歳入関税庁は実務要綱(business brief)を発出し、この発表時点(2008年7月)以後に提出された申告書ないし新税制の導入前に終了する会計期間について、外国の関連者への支払利子にかかわる利子支払繰延規則を適用することは求めないことを表明した。
これは直ちに適用される“譲歩的”取扱いのようである。すべてが明らかというわけではないが、当初の考えは、実際に税制が改正されない限り、納税者が望めば依然として利子支払繰延規則を利用できるということなのである。逆に、会社は外国の関連者への未払利子を発生基準で控除申告できることになるようである。
この経過規定についての意見も求められているが、これまのでところ歳入関税庁からの見解はない。そのため、法改正時点で支払われていない利子のその後の取扱いについては明らかでない。経過規定の存在と性質については、疑いなく更なる説明が求められる。
これらの提案に対する諮問の期間は、10月末までとなっている。
行動
企業グループとしては、繰延利子控除の水準を見直すとともに、繰越利子を支払うことおよび当年度の利子を繰延べること(譲歩的取扱いの対象となる可能性がある)が有利か否かを検討することとなろう。
提案されている選択肢のいずれかによって純粋に商業上の取引に悪影響が出るおそれがあるのであれば、企業グループとしては歳入関税庁に意見を述べるべきであろう。
「月刊 国際税務」 2008年9月号収録 Worldwide Tax Summary
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース編