資金プーリング機能を誘致するための源泉税と印紙税指令の改正(スイス)

スイス議会で源泉税と印紙税の指令の改正案が可決され、2010年8月1日に施行された。同日より関連会社間ローンは、源泉税および印紙税の課税上、広く社債または社債類似証券として取り扱われないこととされた。本改正は資金プーリング機能の拠点をスイスに置こうとしている企業にとって魅力的なものといえる。

従来の制度でも、スイス法人の有する関連会社間ローンの数が少ない場合は、関連会社間での資金提供における源泉税と印紙税が課税対象外とされていた。しかし、有する関連会社間ローンの数が10(ローンの条件が同様の場合)または20(ローンの条件に関係なく)を超える場合は、これらのローンは、スイスの源泉税および印紙税の課税上、社債または社債類似証券とみなされていた。この取扱いは「10/20ノンバンク・ルール」としても知られていた。

関連会社間ローンが社債または社債類似証券として取り扱われると、利子の支払いはスイス源泉税の対象とされ、また、「社債または社債類似証券」の発行は、印紙税の対象とされた。貸主が外国法人の場合、多くのケースにおいてスイス源泉税の一部または全部が源泉還付の要件を満たさず、結果として実際の税金コストとされていた。それゆえに、スイス法人に資金プーリング機能を持たせることは多くの場合で推奨されていなかった。

これとは対照的に、スイスのファイナンス支店は、スイス源泉税および印紙税の対象とならないため、企業グループ内のファイナンス事業に広く用いられている。ただし、米国とスイスとの間の租税条約における特典制限条項に規定する三角支店ルール(triangular branch rule)により、米国内の事業への資金提供のためにスイスのファイナンス支店を用いることは抑止されている。その結果、少なくとも新しい指令の適用になるまでは、「10/20ノンバンク・ルール」の対象となってしまうものの、米国のグループ会社に資金提供をすることに関しては、スイスのファイナンス法人の方が好ましいとされてきた。

2010年8月1日以降、「10/20ノンバンク・ルール」は廃止され、関連会社間ローンはその数にかかわらず、スイス源泉税および印紙税の対象とならなくなる。ただし、スイス法人が国外のグループ会社の外債発行につき保証をし、この外債に基づく資金がスイス国内で事実上使用される場合は、今回の改正事項の適用は制限される。

本改正は、スイス法人以外の法人にとって、資金管理機能をスイスに集中させることにより、ファイナンス法人に有利となる事業環境および税制環境の恩恵を受けることができるという点において有益であるといえる。10(または20)超の関連会社間ローンを有する資金プーリング機能は、改正後、スイスのファイナンス支店による場合のみでなく、米国へのファイナンスで用いられているスイスのファイナンス法人による場合も可能となった。米国法人は、本改正による潜在的な便益を考慮してファイナンス法人を利用することにより世界的規模の資金プーリングが可能となるであろう。

出典:PwC US, WNTS Publication, Europe Newsalert
「月刊 国際税務」 2010年10月号収録 Worldwide Tax Summary
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース編