財政安定化のための緊急措置(イタリア)

2011年7月17日、財政安定化のための緊急措置に関する法案(Law Decree n. 98/2011)が議会で成立した。本法による税制改正の主な事項は次に示すとおりである。

繰越欠損金

法案成立前、次の2つは区別されていた。

  1. 会社設立後3事業年度に生じた欠損金(Start –up Losses、以下「設立時欠損金」)。新規事業に基づいて生じたものであることを条件に無期限に繰り越すことができる。
  2. その他の欠損金(Ordinary Losses、以下「通常欠損金」)。発生後5事業年度内に限り繰り越して利用することができる。

本法では、通常欠損金に適用されている期間制限が廃止され、無期限に繰り越せるようになった。

しかし、設立時欠損金とは異なり、通常欠損金はいかなる事業年度においてもその課税所得の80%しか使用することができない。したがって、設立時欠損金がない場合は、たとえ課税所得を相殺できるだけの通常欠損金を有していても、法人は少なくとも課税所得の20%に対応する連邦税(27.5%)は納付する必要がある(結果として実効税率は5.5%)。

法文解釈上、この新制度は現在の事業年度以降の事業年度に生じた欠損金より適用になり、過年度に生じた欠損金については旧制度が継続適用される。

法人は当改正が財務諸表に与える影響、特に繰越欠損金が繰延税金資産の認識に与える影響について検討すべきであろう。

取得原価の引上げと代替税

合併、分割および株式交換による「継続企業(going concerns)」の出資(通常は租税中立取引)により、固定資産および無形資産の会計上の簿価が引き上げられる場合がある。

税法上、「代替税(substitutive tax)」を支払うことにより、引き上げられた会計上の簿価まで当該資産の税務上の取得原価を調整することが認められている。

この代替税は、「階層別(bracket)」計算に基づく段階税率(5百万ユーロまでは12%、5百万超1千万ユーロまでは14%、1千万ユーロ超は16%)が適用され、30%、40%、30%の割合で年3回に分けて納税することができる。また、無形資産に関しては、16%の税率で計算し1回で納税することもできる。この場合、法人は通常の18年の償却ではなく、10年で営業権および商標権を償却することができる。

本法により、当該1回払い(税率16%)の選択ができる範囲が、営業権および商標権の他、適格持分株式の高価値部分に含まれている無形資産にも拡げられた。この適格持分要件を満たす株式は、租税中立取引、「継続企業」の買収、またはターゲットである事業体の持分の取得のいずれかにより取得されたものでなければならない。

この新たな規定は、2011年11月までに代替税が納付されることを条件に、2011事業年度の開始前に完了した取引に適用される。しかし、税務上の評価替えの影響は、2013年に開始する事業年度まで繰り延べられる。当該規定が2011年以降に発生した取引にも適用されるかどうかは明らかにされていない。

受益者の要件

本法により、EU利子・使用料指令に基づく源泉税免除を受けられる他の全ての要件を満たしているものの、受け取る利子所得の受益者とみなすことのできない欧州の法人(EU事業体)への一定の利子支払いに対して、新たに5%の源泉税が課されることになった。

この5%の源泉税率は通常の12.5%の税率に代わるものである。この新たな源泉税率が適用されるためには、法人は次に掲げる要件を満たす必要がある。

  1. EU事業体はEUないし欧州経済地域(EEA)内の規定された公認の市場で取引される債券を発行する。
  2. EU事業体が取得する利子所得は債券保有者に対する利子支払いに充てる。
  3. 当該債券は利子を支払うイタリア法人、もしくは他の適格なグループ法人により保証され、0.25%の登録税が当該保証に関して支払われる。

この新しい制度は2011年7月6日以降支払われる適格な利子に対して適用になる。また、7月6日時点の貸付金残高に関して、本法施行前になされた源泉課税のなかった全ての適格利子支払いについて、2011年11月30日までに6%の源泉税(および支払遅滞による利子)を支払うことにより適正なものとされる。

出典:PwC US, WNTS Publication, European Tax Newsalert
「月刊 国際税務」 2011年9月号収録 Worldwide Tax Summary
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース編