2009年1月12日に、「合併についてのEU指令」を実施する法律がベルギーの官報に公布された。同法はクロスボーダーの組織再編に対する非課税制度を導入している。さらに、国内の組織再編に適用される現行の税規定について「合併についてのEU指令」に沿って改正がなされている。大部分の規定が公布時点から適用される。
背景
1990年7月23日付の「合併についてのEU指令」(2005年2月17日付EU指令で修正)はクロスボーダーの合併、会社分割、部分的分割、株式交換、資産の現物出資、登記済事業所の移転等組織再編に対しては租税中立(tax-neutral)の税制を定めている。租税中立は組織再編に関係する会社およびそれらの会社の株主に対しても適用される。これまで、ベルギーの税法では、クロスボーダーの組織再編が適切にカバーされていなかったという意味で、「合併についてのEU指令」は施行されていなかったといえる。今やこの状況は新税制の公布により解決された。同税法は、ベルギーの法人および/またはベルギーの恒久的施設(PE)が関わるクロスボーダーの組織再編に対して租税中立の税制を定めている。さらに、国内の組織再編に適用される現行の諸税務規定についてもまた、「合併についてのEU指令」に沿うように定められている。組織再編にかかわる現行の一般の税務規定に対してもまたその他の改善がなされた。
汎欧州組織再編
税務上のベルギー居住者法人および/またはベルギーの恒久的施設については、以前は、多くのクロスボーダーの組織再編に対して租税中立の税制が存在しなかったが、今や一定の条件の下で汎欧州の祖税中立の組織再編の対象になった。
殊に、同法はクロスボーダー(インバウンド/アウトバウンド)での合併、および会社分割ならびにクロスボーダー(インバウンド/アウトバウンド)での資産(事業ライン/恒久的施設)の現物出資および株式交換を取り扱っている。
この新税法での主要な点は次のとおりである。
| ・ | 組織再編にかかわる会社は、税務上のベルギー居住者および/またはEU内に設立された会社に限るという意味で、原則的に汎欧州の枠組みの中で組織再編は実行されなければならない。 |
| ・ | アウトバウンドの組織再編については(たとえば、ベルギー会社の合併、欧州会社European Company(SE)または欧州協同組合European Cooperative Company(SCE)のベルギーから他の加盟国への移転、ベルギー居住者法人の現物出資による事業ラインまたは全資産の総合移転等)は、出資または移転されるベルギー資産が、ベルギーの恒久的施設に配賦されるにとどまる部分に限り租税中立が適用される。しかし、納税者が望めば(一定の)資産をベルギーの恒久的施設に配賦しないで(部分的)課税を受ける選択肢もある。 |
| ・ | 新税法は、新しく租税回避への対応についても規定している。合併、会社分割または現物出資行為が“その主たる目的またはそのひとつに脱税または租税回避がない”場合であれば、真に租税中立で実行できる。これは、今や課税は例外で、租税中立が一般的原則になったことを意味する。したがって、ベルギー税務当局がそれらの行為の主たる目的または主たる諸目的のひとつに脱税または租税回避があることを立証できる場合に限って課税されることを意味する。つまり、挙証責任はベルギー税務当局にあるということである。もし、それらの行為が事業目的で実行されていない場合は、反証可能であるが脱税または租税回避の推定がなされる。納税者はその推定を覆すことができる。 |
結論
この新法は、税実務家に高い評価を受けている。というのはベルギー会社が関与する多くのクロスボーダーの組織再編に対する税務上の障壁を著しく引き下げているからである。これは、現在の経済情勢の下で、EUの市場内で事業の効率を高めたり、資金の自国への還流を効率化したりすることを企図した組織再編を行っている多国籍企業に、たとえばクロスボーダーでの税控除の利用または組織構成の単純化をもたらすような機会を提供している。
出典:PwC Belgium Newsalert
「月刊 国際税務」 2009年3月号収録 Worldwide Tax Summary
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース編