OECDモデル租税条約第5条(恒久的施設)の改正提案

OECD は、恒久的施設に関する修正提案、”OECDモデル租税条約第5条(恒久的施設)の解釈および適用に関する修正提案”と題する書面を最近公表した。当該書面では、恒久的施設(PE)認定に係る条約の適用に関し、多くの修正提案をしている。本提案は、先の2011年10月のディスカッションドラフトに続くものである。OECDは、本修正提案の内容ではなく、勧告部分に関するコメントを求めているに過ぎないことから、本提案について、大幅な修正の余地は少ないと見込まれる。

OECDは、第5条(恒久的施設)に関して、4年にわたり検討を行っている。本件は、OECDモデル租税条約第5条そのものの改正ではなく、そのコメンタリーの特定分野に着目したものであり、多くの追加、修正が提案されている。モデル租税条約の次の改定予定時期、2014年に今回の修正が反映される見込みである。

2011年10月のディスカッションドラフトには25の論点があるが、このうち、今回OECDが提案している重要なポイントは次のとおりである。

「当該場所が当該企業の自由になる」(”at the disposal of”)のテスト:

PEに該当する要件の1つである、事業を行う一定の場所に該当するためには、当該場所が当該企業の自由になる(at the disposal of)必要がある。これに関して、今回、3段階のテストを提案している。具体的には、①場所の実質的使用権限(”Effective power to use” the location)、②実際の継続存在期間、③関連する活動の性質、である。③に関して、一般的には、多国籍企業の従業員が子会社の事務所を訪問しても、PE認定とはならないという表現が加えられたことは有益であるが、①に関しては、実務上の不明点が残る。

代理人PEにおける「当該企業の名において契約を締結する」(”to conclude contract in the name of the enterprise”)の意味:

2011年10月のディスカッションドラフトの段階でも本件は共通認識に至っていなかったが、契約の文言上はそうでなくても、代理人の行為が本人を法的に拘束する国もあるという記載が提案されていた。これは、欧米のコモンローの国における代理人のケースを念頭においていることは明白であったが、今回の提案では、むしろ曖昧であり、解釈の幅が出てきている。従って、経済的に拘束される場合(economically bound)でも代理人PEに該当するとも解釈されるようになっている。ただ、これはOECDの本意ではなく、また本件で合意が得られていないというのであれば、このような表現が残っているのは奇妙である。

PEに該当するための期間要件:

各国の実情は一律ではないが、一般的な実務としては、最低限、6カ月の期間が必要であることには変わりがない。例外として、新たに、①毎年ある国で継続的に短期間の活動がある場合、②短期間で事業全体が終了する場合、の二例を挙げている。①に関しては、いつの時点でPEになるかという点が明確でない。②に関しては、ある国で事業のすべてが完結する場合とはどのような場合か、明確化されていない。

出張、出向従業員の存在:

2011年10月のディスカッションドラフトから大きな変更はない。多国籍企業では、比較的頻繁に従業員が一時的に他のグループ会社に出向し、出向先の業務に従事するが、そのような場合、通常は出向元ではなく、出向先での業務に従事するのであり、出向元のPE認定とはならないとしている。

元受業者による下請業者への契約の一任:

2011年10月のディスカッションドラフトから変更はない。元受業者が下請業者との契約により、下請業者を通じて自らの事業を行っているとしても、PEというためには、他の要件も満たす必要がある。つまり、下請業者がPEとなるためには、当該場所が、元受業者の自由になる(at the disposal of)一定の場所(a fixed place) かどうかということである。

在宅業務とPE:

2011年10月のディスカッションドラフトから大きな変更はない。具体的な事象やそれを取り巻く状況によるので一概には言えないが、在宅勤務は多くの場合、単なる補助的な業務であるから、PEを構成しないとしている点は有益である。

独立代理人規定に関する議論:

独立代理人に関する規定(独立代理人は除かれる)については懸念事項である。独立代理人の意味については最も曖昧であり明確化が望まれるが、2011年10月のディスカッションドラフトからの明確化はなかった。今回でないとすると、今後いつどのような形で明確化が行われるのか、現時点では未定である。

OECDは、本修正に関して、2013年1月31日までコメントを受け付けている。

出典:PwC Tax Policy Bulletin
「月刊 国際税務」 2013年1月号収録 Worldwide Tax Summary
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース編