無形資産に係る討議草案の検討状況(OECD)

2012年11月中旬、120名を超える実務家と、OECD租税委員会第6作業部会の代表・事務局との2日半にわたる公開協議が開催された。事業会社、コンサルティング会社、弁護士事務所、業界団体等、少なくとも70団体からの参加があった。本協議の主要議題が、無形資産に係る討議草案である。

2010年に無形資産に係る検討プロジェクトを開始してから4回目の公開協議になる。

第6作業部会は、無形資産プロジェクトの目的は、無形資産の移転価格に係る側面に関して、納税者、税務当局の双方に、明確で、一貫性のあるガイダンス(原則)を示すことであると繰り返し表明した。可能な限りのコンセンサスを得ることで、二重課税、紛争の不確実性を減らすことを目的としている。また、2012年6月6日の討議草案(本誌2012年7月号参照)は、無形資産の章に関して早い段階で意見をいう機会がほしいという産業界のリクエストにこたえたものであるとした。したがって、現在の草案はコンセンサスを得たものではなく、多くの論点について代表者間の議論、合意が必要であり、また、事例についても更なる検討が必要である。

次の特定の論点が議題となった。

無形資産の定義:

法的・経済的視点が求められる極めて重要なポイントであり、最も議論が白熱した議題である。昨年6月の討議草案では、有形資産や金融資産ではないもので、商業活動における使用上所有または支配することができるもの、と定義し、独立企業間ではどのような条件で無形資産を含む取引に同意するかという観点での分析が重要としているが、産業界からは、無形資産の定義が過度に広範であるため、範囲を狭めることを支持する意見が多かった。実務上、納税者が無形資産を含む取引を特定し評価するためには、まず何が無形資産に含まれるか特定することが第一で、そのうえで、その後の分析(所有権、評価)が可能になるとした。定義が曖昧なままでは実務上使えず、納税者に不合理な立証負担を強い、また、基本的な論点が不明確なことに伴い当局と無意味な論争につながる懸念がある。無形資産の定義が難解なのは、営業権(Goodwill)において顕著である。営業権は、会計、法律、経済それぞれに定義があるほか、営業権の種類により検討ポイントも異なり、また、積み上げで計算するか、差額で計算するかという論点もある。実務上、第三者間で営業権単独で譲渡するケースはまれであるという意見もあり、本質的に難解であるという意見もある。

濫用防止について:

産業界は、経済実体、濫用防止への対応の必要性は理解するものの、OECD移転価格ガイドラインをそのプラットフォームにすべきではないという意見が主流である。第1章(独立企業原則)、第9章(事業再編に係る移転価格上の側面)にそったものにすべきであるとしている。

無形資産に関連するリターン(Intangible related return)の帰属先:

この討議草案の中でも最も一般的濫用防止規定に関係するとみられるセクションであり、支配(control)、重要な機能(important function)、外部委託(outsourcing)という概念を、実務的にどのように適用するのか、第9章(事業再編に係る移転価格上の側面)にそった形での明確化が求められた。グループ間でのR&D・販売機能の外部委託の事例等も示された。

また、実務上重要なのは、金融リスク(financial risk)であり、能動的な支配(active control)というリスクを過度に強調するのではなく、バランスが大事であるという意見が多い。

いわゆる販売に係る無形資産(local marketing intangible)の利益の帰属も大いに議論のあるところであった。

無形資産の価値算定方法の選択:

無形資産の使用(ライセンス)と無形資産の譲渡(売買)に対するアプローチは分けて考えるべきという意見が多い。

現在の討議草案ではそれとなく利益分割法を推奨しているようにも見受けられているが、ガイドラインの第1章から第3章にしたがって、最適な方法(特に、独立価格比準法(CUP)、取引単位営業利益法(TNMM))の適用について十分検討すべきであるとされている。利益分割法に関しては、どのようなケースで適用されるのか、第三者間でこのような取引は現実的か、また、この方法の煩雑性、負担の問題についてもかなり議論された。

ライセンスに関しては、独立価格比準法(CUP)が比較対象取引も多く、実務的であるとみられるが、無形資産の特殊性、第三者取引の比較可能性により、さらなる検討は必要である。

評価手法に関しても議論は大きく分かれる。現在の討議草案では、特定の評価方法は、その適用に制約を受けるとされるが、産業界からはOECDガイドラインでは特定の方法を推奨するべきではなく、ガイドラインの第1章から第3章にしたがい、個々の状況、事実関係に応じて、最適な方法を採用すべきであるとの意見が表明されている。

合理的に利用可能な他の選択肢と当事者双方の観点:

何をもって合理的に利用可能と考えるか、場合によっては取引の否認等に使われる懸念があり、十分な配慮が求められる。たとえば、無形資産の使用(ライセンス)のような単純な取引にこの概念を拡張適用しないか、あるいは、無形資産の譲渡に関して売手、買手双方の立場を考慮するのは理屈上わかるが、現実的にどう整合性をとるか、という懸念もある。OECDは、第1章(独立企業原則)、および第9章(事業再編に係る移転価格上の側面)にしたがって、合理的に利用可能な他の選択肢の適用可能性を制限すべきである、と産業界は合意している。

出典:PwC US, Pricing Knowledge Network
「月刊 国際税務」 2013年2月号収録 Worldwide Tax Summary
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース編