付加価値税は、現在では世界中に存在します。全世界的に見ると、付加価値税は、生産・流通過程のどの段階からどの段階までを課税対象とするか、資本的支出(生産設備の調達等)に対して控除を認めるか否か、そして税額の計算方法によって、さまざまな種類に区分されています。欧州で採用されている付加価値税は生産・流通過程の全ての段階を課税対象とし、事業に必要な全ての設備の調達に課された税額の控除を認めることにより、最終消費者のみが税金を負担する消費課税型の付加価値税であり、また、税額の計算にはクレジット・インボイス方式を採用しています。
欧州の付加価値税制度の特徴として、このクレジット・インボイス方式が、帳簿方式を採用している日本の消費税との比較で取り上げられます。このクレジット・インボイス方式(省略してインボイス方式とも呼ばれる)とは、付加価値税の計算方式の一つで、付加価値税の計算の際に、付加価値そのものを課税ベースとして計算しようとするのではなく、売上に対して課税される付加価値税から、仕入れに対して課税される付加価値税を控除させる方式を意味しています。クレジット・インボイス方式を理解するためには、クレジット・インボイス方式以外の付加価値税の計算方法との比較が必要です。付加価値税の計算方法には、理論上、以下の四つの可能性があります。
1. 税率×(賃金+グロス利益)(いわゆる加算型直接方式)
2. 税率×賃金+税率+グロス利益(いわゆる加算型間接方式)
3. 税率×(売上-仕入れ)(いわゆる減算型直接方式)
4. 税率×売上-税率+仕入れ(いわゆる減算型間接方式)
加算型とは、付加価値を創出する要素を足し合わせて課税ベースとする方法で、取引単位で税額を計算するものではないため、国境調整が困難であること、会計年度と異なる申告期間を設定することが困難であること、中立性が保たれていることが確かでないことなどの欠陥があります。これに対して、付加価値を計算しようとするのではなく、売上に対して課税される付加価値税から、仕入れに対して課税される付加価値税を控除させる方法が4. であり、この4. の方法を他の方法と比較してクレジット・インボイス式付加価値税と呼びます1 。
クレジット・インボイス方式は国境調整が容易であること、前段階税の還付が適時に行われることを前提とすれば中立性が確保されること、流通の特定段階で政策的に免税または軽減税率を導入することが容易であること、取引を単位として課税することから、会計年度より短い期間で申告期間を設定することが可能であることなど、さまざまな点で他の制度より優れているとされ、欧州以外でも付加価値税の主流を占めています。
1 以上の分類についてA guide to the European VAT Directives 2008, Ben Terra et al, Julie Kajus, IBFD, 2008、Value Added Tax: A Comperative Approach, Alan Schnek, Oliver Oldman, Cambridge University Press, 2008