欧州連合で採用されている付加価値税制度は、フランスの付加価値税制度をモデルとしています。1957年3月25日に調印されたローマ条約は、当時存在した加盟国間での制度のばらつきを容認した上で、取引高税に関する歩み寄りや調整を行う姿勢をとっていました。
ローマ条約が調印された当時、西ドイツ、ルクセンブルク、オランダはカスケード税制を持っており、ベルギーとイタリアは、ある業種には単段階税を他の業種にはカスケード税制を適用するという混合税制をとっていました。これらに共通する点は、企業にではなく製品に課せられる消費税であったことと、仕向地国制度に従って徴収されたということでした。
加盟国は1970年1月1日をもってカスケード税を廃止し、付加価値税制度を採用することを義務付けられました。1967年4月11日付で付加価値税の原則を述べたEU第一指令、適用方式についての詳細を述べた第二指令が採択され、その後ECの拡大、イタリアの遅れなどがあった結果、付加価値税はデンマークでは1967年1月1日、西ドイツでは1968年1月1日、オランダでは1969年1月1日、ルクセンブルクでは1970年1月1日、ベルギーでは1971年1月1日、アイルランドでは1972年11月1日、英国では1973年4月1日、イタリアでは1973年11月1日に施行されました。
1977年5月17日に、欧州連合内でフランスの付加価値税制度をモデルとする共通付加価値税制を定める第六指令が採択されました。欧州付加価値税のモデルとなったフランスの付加価値税は「付加価値税の父」と呼ばれるモーリス・ローレの提案を受けて1954年4月10日に付加価値税を創設する法律が採択されたことによりフランスで誕生しています。
共通付加価値税制度の検討の過程で、欧州連合の税務当局の代表者の会合では、フランスの制度はモデルにもなりましたが、同時に批判の対象ともなりました。控除の禁止を例外とすること、即時控除を認めること、タックスクレジットの繰越は適切ではないこと、小売段階や農業にも適用範囲を拡大することなどが協議されました。制度の細部に関する加盟国間の幾多の検討を経て、第6指令の最終案が1977年5月17日に採択され、加盟国の立法を第6指令の内容に合致させる調整法が1979年1月1日に施行されました。
こうして、共通付加価値税制度の根幹を担う第6指令が誕生しました。その後第6指令は幾多の改正を受けていますが、2007年1月1日から施行された2006年11月28日付改正ではその条文構成が大きく改正され、よりわかりやすい体系に整理されました。
1 取引高税は各取引段階ごとに課税される多段階の累積的な一般売上税で、日本でも1948年度の税制改正で創設されたことがある。当時の課税範囲は金融、保険業当を含む39業種であり主要食料、輸出取引、政府の専売品、義務教育教科用図書等の13項目に非課税措置があった。税率は1%で納付方法は印紙または証紙であった。1950年1月1日をもって廃止されている。
付加価値税の歴史の概略
| - | 1954年、フランスの官僚で「付加価値税の父」と呼ばれるモーリス・ローレ(Maurice Lauré)による提案、以降欧州の数多くの国で地域的に導入される。 |
| - | 1977年、欧州付加価値税第6指令が採択され、欧州連合で統一された共通の付加価値税制度が確立される。 |
| - | 1993年、欧州統一市場の実現のため、財政国境における監視が廃止される。欧州統一市場の共通ルールとして、加盟国間の取引を定める複雑な付加価値税制度が導入される。仕向地課税(=VATの消費地での課税)を原則とする制度を採用するも、原産地課税を共通の付加価値税制度のあるべき姿として認める経過規定を同時に採択。 |
| - | 2004年(加盟国15カ国)から2007年(加盟国27カ国)の間に急速に進んだ欧州連合の拡大により、原産地課税の達成はより困難になる。 |
| - | 2007年、第6指令が大幅に改正( 2006/112/EC )される。 |
| - | 2010年、「VATパッケージ」が導入される予定。欧州連合内でのサービスの課税の改革が行われる。 |