2050年の世界 加速する世界経済の変動 - 課題と好機

2006年3月、PwC英国(PwC)は、2050年までの17主要国のGDPの潜在的成長を予測した報告書を作成しました。この予測は2008年3月に一度見直していますが、この度、世界不況の影響が未だ残る中、調査対象をG20参加国にまで拡大し、改めて検証しました。

PwCの出した最大の結論は、世界不況により世界経済の新興国へのシフトはさらに加速したということです。各国間の物価水準の違いを調整する購買力平価(PPP)に基づくGDP値で測定すると、2020年までに新興7ヶ国(注1)は先進7カ国(注2)を上回り、中国は米国を追い越すことになると予測されています。同じ基準でインドを測定すると、やはり2050年までには米国を上回るという結論となっています。

一方、各国間の物価水準の違いを補正しないものの実際の企業活動により関連性のある市場為替相場(MER)に基づくGDP値で測定すると、追い越すスピードは遅くなるものの、同様の結果となることは避けられないということが示されています。すなわち、中国経済の規模は2035年までには米国経済を上回り、新興7カ国は2040年までに先進7カ国を追い越すことになると予測されています。また、この市場為替相場基準によると、インドは2050年までには明らかに世界第3位の経済大国になっており、日本を大きく上回り、米国ともそれ程変わらない状況になっていることが示されています。

いろいろな意味で、多くの人口を有する中国とインドが優位に立つということは、欧米に世界経済がシフトされる契機となった18、19世紀の産業革命よりも前の世界へ回帰することであり、一時的な経済のシフトが反転したものと言えます。

この世界秩序の変動は現在の先進諸国の企業に課題と好機の両方をもたらします。すなわち一方で、新興市場における多国籍企業との競合を確実に増進させることとなりますが、その一方では、製造やサービス(景気後退後の欧米の脆弱な銀行システムを前提とする金融サービスを含む)における価値連鎖を上昇させます。

同時に、急激に増えている中産階級に関わる主要新興国の消費者市場が急速に成長してくると、このような市場に直接進出することのできる欧米企業は新たな好機を得ることになります。こういった市場での競争は激しく、容易に選択できるものではありません。長期にわたる投資も求められることになります。しかし、欧米の企業がこれを回避し、引き続き北米や西欧の市場に重点を置くのであれば、欧米企業はますます過去の時代の低速レーンで活動することになってしまうでしょう。

このことは、現在、BRICsへの売上高が(香港を中国の一部と考えたとしても)総輸出高のおよそ7%(これは現時点でのアイルランドへの輸出高と同程度)に過ぎない英国に特にあてはまっています。もし英国が長期的に2%を超える経済成長を達成したいのであれば、急速に成長している新興市場にこれまで以上の規模で参入していく方法を見出す必要があるでしょう。

(注)
1. ここでは中国、インド、ブラジル、ロシア、インドネシア、メキシコ、トルコの7カ国を指します。
2. ここでは米国、日本、ドイツ、英国、フランス、イタリア、カナダの7カ国を指します。

購買力平価(PPP)に基づくGDPランキング
2009年 2050年
順位 国名 GDP値
(10億米国ドル)
順位 国名 GDP予測値
(10億米国ドル)
1 米国 14,256 1 中国 59,475
2 中国 8,888 2 インド 43,180
3 日本 4,138 3 米国 37,876
4 インド 3,752 4 ブラジル 9,762
5 ドイツ 2,984 5 日本 7,664
6 ロシア 2,687 6 ロシア 7,559
7 英国 2,257 7 メキシコ 6,682
8 フランス 2,172 8 インドネシア 6,205
9 ブラジル 2,020 9 ドイツ 5,707
10 イタリア 1,922 10 英国 5,628
市場為替相場(MER)に基づくGDPランキング
2009年 2050年
順位 国名 GDP値
(10億米国ドル)
順位 国名 GDP予測値
(10億米国ドル)
1 米国 14,256 1 中国 51,180
2 日本 5,068 2 米国 37,876
3 中国 4,909 3 インド 31,313
4 ドイツ 3,347 4 ブラジル 9,235
5 フランス 2,649 5 日本 7,664
6 英国 2,175 6 ロシア 6,112
7 イタリア 2,113 7 メキシコ 5,800
8 ブラジル 1,572 8 ドイツ 5,707
9 スペイン 1,460 9 英国 5,628
10 カナダ 1,336 10 インドネシア 5,358

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