PwC 調査報告書 - Paying Taxes 2011

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Paying Taxes 2011: 「納税のしやすさ」ランキング - 景気低迷の中でも納税はよりしやすく

世界銀行と国際金融公社(IFC)が実施している「the Doing Business (”ビジネス環境の現状”)」のプロジェクトに「Paying Taxes(納税)」の指標を取り入れるようになってから、これで6年目になります。この指標は世界183カ国の「納税のしやすさ」を測定するものです。「ビジネス環境の現状」のプロジェクトではこの「Paying Taxes」以外に8つの別の場面、すなわち、起業、設置許可、資産登録、信用の取得、投資家保護、貿易、契約の実行および廃業の各過程における規制について定量的測定を行うものです。

この「Paying Taxes」の指標は、各国の異なる税法や規制に準拠している内国法人の視点から税制を評価するものです。調査対象とした企業は中小の製造業者と小売業者で、その事業が国際的に特定しやすく、比較可能となるよう、慎重に選び出されました。

当該指標は、調査対象とした企業が負担する税金費用および企業の税務コンプライアンスに関する管理上の負担を対象としています。この両者はビジネスを行う上で大変重要な要素です。これらを測定するために、3つの指標、すなわち、総公的負担率(負担するすべての税金費用)、主要な税金(利潤税、雇用関連税と負担金、消費税)の納付に要する時間、および納税の回数を用いています。

各行政レベル(国、州、市)により納付が義務付けられているすべての税金および負担金が標準的なビジネスに適用になるため、「Paying Taxes」の指標はこれらすべてを測定します。総公的負担率の指標は、企業の財務諸表に影響を与える税金および会社負担金の影響力を測定するものです。ここには、法人税、会社負担の社会保険料や雇用関連税、資産税、譲渡税、配当税、キャピタルゲイン税、金融取引税、廃棄物収集税、自動車および道路税などが含まれます。他の2つの指標、すなわち、納税に要する時間および納税回数は、負担する税金と徴収する税金を測定するものであり、ここには売上税や付加価値税(VAT)のような徴収ないし回収する税金や負担金も含まれます。

「ビジネス環境の現状」の調査に基づくと、2009年6月から2010年5月までの間に、40カ国で納税がよりしやすくなりました。

  • 納税はよりしやすくなっている。ここ6年間で「ビジネス環境の現状」が対象とした国のうちの60%超が納税をよりしやすくしている。
  • 2006年と2011年の両年度の「Paying Taxes」の調査に名前のある国をみると、税金費用は平均で5%減少し、納税に必要となる時間は1週間分短縮され、納税回数は概ね4回分減っている。
  • 良い結果をもたらす助けとなった実例としては、効果的な電子申告および納税のシステム(60カ国で採用)、ひとつの課税標準につき複数の税金ではなくひとつの税金のみを課すこと(50カ国で採用)、および自主申告システム(74%の国で採用)が挙げられる。
  • 最も大きく改善された国はチュニジアである。チュニジアでは法人税および付加価値税において完全に電子納税システムが採用され、大多数の企業にこのシステムの利用が普及している。「ビジネス環境の現状」の調査によると、この改善により、年間の納税回数が14回減り、納税に要する時間は84時間短縮された。
  • 過年度において最も一般的な方策は利潤税率を引き下げることであった。
  • 全世界の平均で、調査対象とした企業の総公的負担率(利益に占める納付税金の割合)は47.8%であり、納税のために1年間に282時間を費やし、29.9回の納税を行なっている。
  • 全世界の平均で、調査対象とした企業は9種類以上の異なる税金を納付している。また平均で、法人税は総公的負担率の38%、納税に要する時間の25%、納税回数の12%を占めているに過ぎない。2009年から2010年にかけて、17カ国で法人税率を引き下げた。
  • 昨年最も改善が見られた地域は中央アジアと東ヨーロッパで、総公的負担率は3.1%減少し、納税に要する時間は16時間短縮され、納税回数は5回分減った。
  • 納税に要する時間は地域によって差がある。OECD加盟国(209時間)およびEU加盟国(222時間)では比較的少なく、中央アジアと東ヨーロッパ(332時間)、G20加盟国(370時間)および中南米(385時間)では長くなっている。
  • 納税回数もまた、地域によって大きく異なる。中央ヨーロッパと東ヨーロッパでは年間平均で45.3回納付しているのに対し、OECD加盟国では平均で13.2回の納付で済んでいる。
  • 調査対象とした企業が納付のために最も時間を費やした税金は消費税、特に付加価値税である。付加価値税は世界で最も普及している消費税の形態である(183カ国中148カ国で付加価値税型の売上税システムを採用している)。こういった国では、64%近くの時間を付加価値税の納付に費やしており、これは法人税の納付に要する時間の2倍に相当する。
  • 本調査の回答者は、税務調査や紛争への対応方法と税務当局からの接触を、税制面で最も改善を必要とする事項として認識していた。
地域別の詳細 – アジア・太平洋地域
  • アジア・太平洋地域のうちの9カ国で2009年から2010年にかけて納税をよりしやすくする改正が実施された(ブルネイ、中国、香港、インド、インドネシア、ラオス、台湾、タイ、トンガ)。
  • アジア・太平洋地域における「Paying Taxes」の調査結果は、3つの指標のいずれにおいても全世界の平均を下回った。平均総公的負担率は36.9%(全世界平均は47.8%)、納税に要する時間の平均は233時間(全世界平均は282時間)、納税回数の平均は24.6回(全世界平均は29.9回)であった。
  • 法人税は企業負担の大きな要素となっている。アジア・太平洋地域の総公的負担率のうち、法人税は51.2%を占めている(全世界平均は33.8%)。これは他の地域と比べても高い割合となっている。法人税の納付に要する時間は全体の32%を占め、地域別に見て最も高い割合となっている。
  • 企業に課される税金の数は全世界の平均で9種類である。アジア・太平洋地域の平均は8.5種類であり、香港の3種類から日本の20種類まで幅がある。
  • 消費税は調査対象とした企業の税金費用には原則として含まれていないが、コンプライアンスの負担には相当程度含まれている。アジア・太平洋地域で消費税の納付に要する時間は他の税金の納付に要する時間よりも長くなっており、平均で消費税の納付には84時間を費やしている(雇用関連税および社会保険の負担分は75時間、利潤税も75時間)。

本報告書の英文フルレポートはこちらをご参照ください。

(参考)「納税のしやすさ」ランキング - トップ10および主要国のランク
  総合ランキング 項目別ランキング 項目別データ
国名 納税の
しやすさ
(順位)
納税回数
(順位)
申告納税等に
要する時間
(順位)
税負担率
(順位)
納税回数
(回/年)
申告納税等に
要する時間
(時間/年)
税負担率
モルディヴ 1 2 1 3 3 0 9.3%
カタール 2 2 3 6 3 36 11.3%
香港 3 2 12 24 3 80 24.1%
シンガポール 4 6 15 28 5 84 25.4%
UAE 5 43 2 7 14 12 14.1%
サウジアラビア 6 43 11 8 14 79 14.5%
アイルランド 7 24 9 30 9 76 26.5%
オマーン 8 43 7 19 14 62 21.6%
クウェート 9 49 25 11 15 118 15.5%
カナダ 10 15 34 37 8 131 29.2%
キリバス 10 9 27 50 7 120 31.8%
英国 16 15 23 76 8 110 37.3%
東ティモール 20 7 119 1 6 276 0.2%
オランダ 27 24 37 90 9 134 40.5%
スウェーデン 39 1 30 146 2 122 54.6%
韓国 49 43 101 40 14 250 29.8%
フランス 55 9 36 163 7 132 65.8%
チュニジア 58 15 41 155 8 144 62.8%
米国 62 35 66 124 11 187 46.8%
ドイツ 88 53 84 128 16 215 48.2%
ロシア 105 35 132 123 11 320 46.5%
日本 112 43 143 130 14 355 48.6%
中国 114 9 154 158 7 398 63.5%
ブラジル 152 33 183 168 10 2600 69.0%
インド 164 167 104 157 56 258 63.3%