シンガポール、2009年11月12日
最悪の経済危機は過ぎた。しかし長期の課題は、政府による財政支援がなくなった後に安定的・持続的な世界経済の成長を作り出すことである。プライスウォーターハウスクーパス(PwC)と2009 APEC・CEOサミット組織委員会の共同調査によると、この慎重かつ楽観的なメッセージが、350人以上のAPEC域内のビジネスリーダー達から伝わってくる。
本調査は経済危機の影響と世界経済の再生におけるAPECの役割についての回答者の見解を調べたものである。調査結果は、「再安定化」「連帯」「持続性」がここ数年間の世界経済の検討課題であるとした。
回答者の過半数(58%)が最悪の危機に直面したと思っている。回答者の28%が、「失業は向こう12カ月内に経済危機以前の水準に戻る」という見解に同意している。失業に関する悲観論は南北アメリカで最も高いが(21%)、一方、北東アジアでは、「経済危機以前の水準に戻る」と考える比率は相対的に高い(31%)。これは、回復は長引き、失業状態は継続するだろうという一般的心情を示唆している。
プライスウォーターハウスクーパース・インターナショナルのチェアマンであるデニス・ナーリーは、シンガポールで開かれたAPEC・CEOサミットで講演し、「APECは変換の先頭にあり、その多くの国が経済危機をうまく乗り切った。世界がこの未曾有の危機の暗がりから抜け出したとき、APECは安定的・持続的経済成長をもたらすための重要な役割を担うことになる。警戒感を維持しつつも、経済危機後の環境の変化には期待と寛大さを持っている。」と述べた。
再安定化
国際秩序の再起動
経済危機は世界の大国における構造的転換を加速させた。新興国は輸出市場の縮小によりその成長がスローペースになっていることに直面しているものの、その多くの金融システムは比較的無傷で経済危機から脱却している。事実何カ国かは、先進国よりも安定的で強固な経済環境を示している。これは、回答者の37%が世界経済が完全に回復するのに2、3年はかかると思っているという調査結果によって裏付けられている。APEC地域内で、南北アメリカからの回答者の45%が、世界経済は2、3年で回復すると思っている。
この調査結果に応えて、PwC中国のエグゼクティブ・チェアマンのサイラス・ヤングは、「多くの新興国の規模は、今後数年内の世界経済成長の推進力になることを示している。最大の新興市場として、中国の強い経済復興は主に多額の財政投資と一連の政府による景気刺激策と助成金によって促進された国内消費の上昇によってもたらされた。この成長率を長期間維持するために、中国は過剰な輸出依存度を減らし、国民により一層の消費を促すことにより国内消費市場を助成しなければならない。」と述べた。
世界金融の再構築
ほとんどの回答者(97%)は、世界の金融構造を見直すにあたり、米国のリーダーシップが引き続きその重要な地位にあると認識している。この見方はほとんどの南北アメリカからの回答者(96%)が共有している。彼らは米国が世界金融の舞台で中心的役割を演じること、特に、世界の他の国々に発言権を与えることにより世界通貨基金(IMF)の活動を促すこと、世界金融の規則の中に基準を設けること、固有の国内規制制度を整備することに期待している。短期的には準備通貨としての米国ドルの役割は変わりそうもない。しかし、回答者の47%は、向こう10年内に代替的な通貨が現れることを期待している。
消費と貯蓄のバランス
回答者の多数は、米国を除くAPEC諸国は一層の消費により経常黒字を減少させるべきであると考えている。南北アメリカは回答者の68%が同様の考えを支持しており、一方、北東アジア諸国はその考えへの支持が低い(44%)。世界経済危機を踏まえ、再安定化のためには、政策決定者と民間のリーダーが、消費と貯蓄の適切なバランスを見出すための公共政策を正しく判断し、新しい世界政策的経済的秩序に順応することが求められる。
連帯
規則の整備と保護貿易主義の抑制
経済危機により、今日の世界の相互依存関係が明白になり、経済危機後世界的に調和した規則の必要性が強調されている。世界各国はこの経済危機を世界貿易が促進される機会としても捉えるべきである。この点において、世界貿易機構のドーハ開発ラウンド折衝の成功は、世界貿易を促進することを可能なものとし、各国に競争上の優位性を活かすことを認めるものであるため、世界中のビジネスにとって重要なものとなる。過半数の回答者は、ドーハラウンドの成功はビジネスにとって重要なものであるとみなしている。特に南北アメリカでは、67%がドーハラウンドはビジネスにとって重要または非常に重要であると考えており、特に高い期待を持っている。北東アジアでは、回答者の54%がドーハラウンドは重要または非常に重要であると考えている。
特に南北アメリカからの回答者が、ビジネスを促進するために主要な国と締結する自由貿易協定(FTAs)に関心を寄せている(77%)一方で、東南アジアの回答者はビジネスを促進するために地域諸国と締結する二国間協定に期待している(59%)。
回答者の多く(72%)は、APEC内の自由貿易協定の進展を、ビジネスにとって重要なものまたは非常に重要なものと見ている。これは南北アメリカの回答者から圧倒的な支持を受けている(93%)。
貿易障壁の破壊
維持継続できる経常収支を保つべく、地域貿易の促進は全ての回答者の中で最も重要な方策(74%)として認識されている。南北アメリカからの回答者が、「社会的セーフティネットの強化による消費刺激」が「地域貿易の促進」よりも重要であるとしている一方で、北東アジアの回答者は、「地域内資本移動と投資の促進」を、米国を除くAPEC諸国が経常黒字を転換するために重点的に取り組むべき最重要命題と位置づけている。ほとんど全ての回答者(96%)が、米国を除くAPEC諸国内貿易が、近い将来増加することを期待している(南北アメリカからの回答者が最も高い期待を示している)。
自由貿易を論評して、プライスウォーターハウスクーパース・シンガポールのエグゼクティブ・チェアマンであるガウタム・バネルジーは、「自由貿易はこれまで以上により早く富を分配し、シンガポールはその受益者として経済をさらに開放する。自由経済によってもたらされる競争上の優位性は新興国に活力を与え、多くの人々を貧困から救うことができる。失業率は依然として高く、内需は縮小しているため、先進国のビジネスリーダーは政治的圧力に屈するべきではなく、保護貿易主義の障壁を作り出すべきではない。むしろ、世界の新興国が力強く成長し続けられるよう、より高い価値のある活動を推し進めるべきである。」と述べた。
持続性
気候変動と食糧安全保障
気候変動への対応、食糧安全保障の確保、技術革新への投資は、将来の経済成長の下支えとなる。ほとんど全ての回答者が、今後持続性のあるビジネス環境を作り出すために、立法の役割は非常に重要であると考えている(90%)。これは東南アジアからの期待がもっとも高い(94%)。3分の2の回答者は環境保全技術への投資の重要性を認識しており、特に北東アジアと南北アメリカが他の地域よりも高くその重要性を認識している。
技術革新への投資
技術革新への投資は世界経済危機の中で後回しにされた訳ではない。回答者の58%以上が向こう12カ月間に、これまでの12カ月間より多額の研究開発費用が使われると予測している。この予測は北東アジアの回答者で最も高く(66%)、南北アメリカのほとんど半分の回答者(48%)は研究開発予算の下方修正を予定していない。
「経済危機は私たちが政治的、経済的、生態学的にどのように相互に関連し合っているかを浮き彫りにした。これまで以上に私たちは世界および地域の連携を高めて、共同で経済危機に取り組むことができるようにしなければならない。米国のリーダーシップの性格が明らかに変わってきたことに気付くと、非常に興味深く思う。米国は引き続き世界経済の中で重要な役割を担っているものの、新興国の復興こそが、景気低迷から世界経済を救い出そうとしている。」とナーリーは結んだ。
以上
<調査について>
本報告は、PwCインターナショナルの調査部門の協力のもと、PwCシンガポールによって2009年8月から11月までの間に実施された3カ月間の長期調査の結果である。定量的調査はAPEC地域内で働くまたは地域内に住む350人の回答者を対象に実施された。調査は、中国語、英語および日本語の3つの言語でオンライン上で行われた。全体の7%ほどの回答者はオンラインでなく、書面の質問書に記入する方式をとった。加えてAPEC地域内の24の業界のリーダーがPwCのパートナーによる個別インタビューで答えた。調査結果はPwCシンガポールのコア・チームによって照合、分析された。
分析の目的上、全てのAPECおよび非APEC諸国は以下の地域に区分されている。
南北アメリカ: カナダ、チリ、メキシコ、ペルー、米国
北東アジア: 台北、香港、中国、日本、台湾、韓国、ロシア
東南アジア: ブルネイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、タイ、ベトナム
オーストラリア他: オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア他、非APEC諸国
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