優れたデザイン:イノベーションと新製品開発

Jette Egelund氏

Vipp 会長/デンマーク/家庭用品メーカー

Vippは、北欧スタイルのエレガントで実用的な家庭用品で世界的に知られています。しかし、これは実はゴミ箱から出発した成功物語なのです。

Holger Nielsen氏は金属工で、スチール加工という本業の傍ら、妻のMarie氏のヘアサロンのためにペダル式のゴミ箱を作っていました。Nielsen氏が亡くなると、会社を受け継いだ娘のJette氏は、ゴミ箱のデザインをビジネスに生かそうと考えました。「失敗しても自分のリスクだと思った」と彼女は語っています。

彼女は工場で働き始め、金属プレスの技術を習得しました。「製品を開発するにも、最良の製造パートナーを見つけるにも、その知識が必要だったから」です。この現場体験に加え、彼女はコペンハーゲンビジネススクールでビジネス理論を学びました。ちょうどその頃、息子のKasper氏と娘のSophie氏は、マーケティングとグラフィックデザインの知識を会社にもたらしました。「突然、ビジネスに役立つ多くのスキルが手に入った」のです。

以降、Vippの製品群は、当初のペダル式ゴミ箱にトイレブラシや洗濯物入れを加え、どんどん強化されました。イノベーション、新製品開発、すっきりしたデンマークデザインが一貫してVippの成功を支えています。Jette氏は語っています。

「全てに目的があります。その上、ブランドには明確なデンマークらしさがあります。」

2009年、ペダル式ゴミ箱は、ニューヨーク近代美術館の建築・デザイン部門の永久収蔵品に選ばれました。

Jette Egelund氏 Vipp 会長

Jette Egelund氏 Vipp 会長


同社の成功要因の一つは、Jette氏、主任デザイナーのMorten Bo Jensen氏、CEOのKasper氏、主任エンジニアで構成するデザイングループにあります。この「非常に戦略的」な4人組が新製品や市場に関するアイデアを検討する一方、デザイングループに「平和を維持する」会計士と法務担当者を加えた6人委員会が全体的な戦略を承認します。

同社の最新製品は、2014年に発売されたVipp Shelter、すなわち自分だけの「隠れ家」として使える55m2の組み立て式の建物です。「建物の中に入るものは全て作りました。あと必要なのは建物だけ」だったからです。この一族は今でも製造業者という自覚を持っていますが、今ではコンセプトから、製品開発、消費者への販売までエンドツーエンドに事業を展開しています。

「アイデアが浮かんだらすぐに行動して実現する。それがファミリービジネス企業のあり方です。」

Vipp Shelter

Vipp Shelter

近年、同社の売上高の70%はデンマーク外です。Jette氏の娘のSophie氏は、ニューヨークシティの拠点を統括し、トライベッカのショールームでインテリアデザイナーや建築家と働いています。アジアとオーストラリアの市場を開発するため、在オーストラリアのセールスディレクターもこのほど指名されました。そして南アフリカ、イスラエル、ドイツ、スイス、米国では、市場シェア拡大の重点であるハイエンドのVippキッチンが販売されています。

現在、社内には、エンジニア、製品開発エキスパート、マーケティング、PR、デザインスペシャリストなど40人がいます。Jette氏は他の業界から人材を採用することが少なくありません。

「彼らは新しい方法と異なる材料を使った経験を持ち込んでくれます。」

10年前から勤務している主任デザイナーはかつて自転車メーカーで働き、エンジニアの一人は補聴器を開発し、マイクロテクノロジーとシリコーンなどの材料に携わっていました。今ではシリコーンもVipp製品群の一環です。

66歳のJette氏は完全に引退する気はまったくありません。

「私はこの会社が大好き。お客様と接するのも大好きです。」

彼女は子どもたちと相続について話し合い、会社が存続できるよう専門家に法律上の助言も求めました。会社は、現在、会社の株式は均等に3分割されていますが、Jette氏が亡くなった場合、Kasper氏が株式の過半数を所有し、会社の経営と意思決定を継続することにより、行き詰まりを防ぎます。

ところでJette氏のお気に入りのVipp製品は?

「もちろんゴミ箱です。全ての出発点ですから。」

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小林 和也

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越田 勝

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