公会計の動向

2015-03-25

PwCあらた監査法人では、上場会社などの監査のみならず、国や地方公共団体などの公的部門への業務提供を行っています。公会計は、意外に皆様の身近な存在でありますが、本コラムでは、国や地方公共団体の財務書類の最近の動向について、その概要をご紹介します。

国の財務書類

平成25年度の「国の財務書類」が、平成27年1月30日財務省より公表されました。これは、国全体の資産や負債などのストックの状況、費用や財源などのフローの状況といった財務状況を表しています。一覧で分かりやすく開示するために、企業会計の考え方および手法(発生主義、複式簿記)を参考として作成されています。「国の財務書類」は、各省庁、国会、裁判所などの一般会計財務書類と特別会計財務書類を合算して作成されたものです。平成27年3月には、これに国の業務と関連する事務・事業を行っている独立行政法人などを連結した平成25年度の「連結財務書類」も公表される予定です。

平成25年度末における国の「資産合計」は652.7兆円、「負債合計」は1,143.1兆円で、「資産・負債差額」は▲490.4兆円となりました。また、平成25年度の「業務費用合計」は、139.6兆円、「財源合計」は105.1兆円で、業務費用と財源の差額である「財源不足」は、▲34.4兆円となりました。

地方公共団体の財務書類

平成27年1月に、総務省から各地方公共団体に対して、平成29年度までに「統一的な基準」による財務書類を作成することが要請されました。これまで、全国の約1800の都道府県市町村では、「地方公共団体財務書類作成にかかる基準モデル」または「地方公共団体財務書類作成にかかる総務省方式改訂モデル」による普通会計および連結ベースの財務諸表4表(貸借対照表、行政コスト計算書、資金収支計算書、純資産変動計算書)が作成公表されています。上記のモデルに加え東京都や大阪府などの方式があり、それぞれ作成方式や固定資産の評価、税収の取り扱いなどに違いがありました。

「統一的な基準」による財務書類は、発生主義によりストック情報やフロー情報を総体的、一覧的に把握することにより、現金主義会計による予算・決算制度を補完するものとして位置付けられます。現金主義会計では見えにくいコストやストックを把握することで、中長期的な財政運営への活用の充実が期待されています。

国際公会計基準による財務書類

国際会計士連盟の国際公会計基準審議会において、国際財務報告基準(IFRS)に公的部門の特徴を加味して、財務諸表の作成に必要なほぼ全てのテーマに関する基準が策定公表されています。

現在、約80の国や国際機関で国際公会計基準を採用済みまたは採用の検討がなされています。国際公会計審議会の目的は、高品質な公会計基準を設定し、それらの基準の採用および適用を促進し、世界中の実務の質および一貫性が向上し、公的部門の財務の透明性および説明責任が強化されることにより、公益に資することにあります。今後、わが国の公会計の整備においても一定の方向性を示唆しているものと考えられます。

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