財務諸表分析‐情報通信業界

2017年7月25日

今回は、国内情報通信業界の主要3社であるソフトバンクグループ株式会社(以下、ソフトバンク)、日本電信電話株式会社(以下、NTT)、KDDI株式会社(以下、KDDI)の連結財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書)に焦点を当てて、情報通信業界の財務諸表分析を行います。筆者が指定した3社は国内の通信インフラを担っており、積極的な投資活動を行っているため、投資活動に関連した財務数値に着目したいと思います。

まずは、上記3社が直近に公開した2017年3月期の有価証券報告書から連結貸借対照表の要約数値を抜粋し、【表1】で指標(固定資産構成比率)を計算してみます。

【表1】要約連結貸借対照表と指標

単位:百万円

企業名 ソフトバンク NTT KDDI
決算日 2017年3月31日 2017年3月31日 2017年3月31日
会計基準 IFRS 米国 IFRS
連結-流動資産[百万円] 5,723,975 5,312,423 1,966,025
連結-固定資産[百万円] 18,910,237 15,937,902 4,297,800
連結-総資産[百万円] 24,634,212 21,250,325 6,263,826
固定資産構成比率[%] 76.80% 75.00% 68.60%

※固定資産構成比率[%]:固定資産 ÷ 総資産

固定資産構成比率とは上記計算式のとおり、総資産に対する固定資産の占める割合を示しており、この比率が高いことは企業の総資本を優先的に固定資産投資に用いていることを示しています。【表1】のとおり、ソフトバンク、NTT、KDDIのいずれも固定資産構成比率が70%前後と高い比率を示しており、情報通信業界の主要3社はいずれも企業の総資本を積極的な固定資産投資に用いていることが連結貸借対照表から読み取れます。

それでは次に連結キャッシュ・フロー計算書の要約数値を分析してみましょう。

【表2】要約連結キャッシュ・フロー計算書
単位:百万円

企業名 ソフトバンク NTT KDDI
決算日 2017年3月31日 2017年3月31日 2017年3月31日
連結-営業CF[百万円] 1,500,728 2,917,357 1,161,074
連結-投資CF[百万円] -4,213,597 -2,089,311 -637,225
連結-財務CF[百万円] 2,380,746 -981,511 -485,784

※CF:キャッシュ・フロー

【表2】のとおり、ソフトバンク、NTT、KDDIのいずれも投資CFが多額のマイナスとなっており、連結キャッシュ・フロー計算書からも通信インフラを担う3社は積極的な投資活動を実施していることが分かります。この点、貸借対照表における固定資産構成比率が高いことと整合しており、通信インフラ設備の投資に加え、技術革新が非常に速い情報通信業界では多額の継続的な投資活動が求められ、今日も各社が積極的な投資活動を実施していると言えます。

また、NTTおよびKDDIは投資CFが営業CFを下回っており、営業活動で稼いだキャッシュの範囲内で安定的な投資活動を実施している一方、ソフトバンクは投資CFが営業CFを上回っており、営業活動で稼いだ金額以上の投資を実施するために借入などを実施した結果、財務CFがプラスの金額となっています。この点からソフトバンクはNTTやKDDIよりも投資活動に積極的であり、有利子負債に伴う財務費用を超過する投資利益の獲得を狙うといった企業戦略が読み取れます。

最後に情報通信業界主要3社の連結損益計算書の要約数値を見ていきます。

【表3】要約連結損益計算書
単位:百万円

企業名 ソフトバンク NTT KDDI
決算日 2017年3月31日 2017年3月31日 2017年3月31日
連結-売上高[百万円] 8,901,004 11,391,016 4,748,259
連結-営業利益[百万円] 1,025,999 1,539,789 912,976
営業利益率[%] 11.50% 13.50% 19.20%

※営業利益率[%]= 営業利益 ÷ 売上高

【表3】のとおり、ソフトバンク、NTT、KDDIのいずれも1兆円前後の営業利益、10%前後の営業利益率となっており、高利益を獲得していることが分かります。既述のとおり、いずれの企業も高い投資活動を実施しており、その結果として安定的な通信インフラを社会に提供することが可能となり、営業活動からの高利益獲得につながっていると言えます。また、大規模な投資活動が要求されることは参入障壁につながっているとも言え、積極的な投資活動は情報通信業界での優位性を高める結果につながっていると考えられます。

以上の分析から、技術革新のスピードが速い情報通信業界では積極的な投資活動が要求されるものの、その投資活動の成果が主要3社の高水準な利益獲得につながっていると読み取ることができます。

また、本分析のように、貸借対照表、損益計算書およびキャッシュ・フロー計算書を合わせて分析することにより、企業の利益水準やその源泉といったさまざまな情報を読み取ることができるため、各財務諸表は単独ではなく総合的に分析していくことが有用となります。

PwCあらた有限責任監査法人
第1製造・流通・サービス部

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