2012年01月12日
グローバル金融危機によって、世界の多くの金融機関が企業価値の毀損を経験しました。それは、バランスシート上の金融資産の毀損にとどまらず、社会からの信頼という最も重要な価値にまで影響を及ぼすほど深刻なものでした。
いま、銀行には、金融本来の機能発揮を通じて実体経済の発展に資するという使命が改めて求められています。中でも、銀行の企業価値として、顧客とのリレーション、地域社会とのネットワークといった無形の価値への注目がこれまで以上に高まっています。これまでに培ってきた金融商品開発やリスク管理といった金融技術を最大限に活用しつつ、有形・無形の企業価値を安定的に向上させていくことが期待されています。
銀行を取り巻く多様なステークホルダーの存在を踏まえると、企業価値を測る尺度や期待されるパフォーマンスは様々であり、時にそれが経営の舵取りを難しくさせる一面を有しています。そうしたもとでは、ステークホルダーの期待を踏まえつつ、銀行自らが主体的に企業価値のあり方を考えて、それに基づく経営を実現していくこと、ステークホルダーとの対話を通じてその考え方やパフォーマンスを丁寧に伝えていくことが重要です。
銀行企業価値研究会は、こうした問題意識のもと、リコー経済社会研究所 主席研究員 神津多可思氏を座長にお迎えしてスタートしました。日本総合研究所 理事 翁百合氏、中央大学 教授 鈴木一功氏、スタンダード&プアーズ 主席アナリスト 吉澤亮二氏、キャピタスコンサルティング 代表取締役 森本祐司氏、地域共創ネットワーク 代表取締役(兼プライスウォーターハウスクーパース総合研究所 客員研究員)坂本忠弘氏に有識者としてご参加いただくとともに、主要行・信託銀行・地方銀行を含む9つの銀行から研究会メンバーのご参加をいただき、5回の研究会にわたって議論を重ねてきました。なお、森本氏、坂本氏の両名には企画協力としてご支援をいただきました。
こうした研究の成果を、このたび「銀行企業価値研究会報告書~多様なステークホルダーを視野に入れた銀行の企業価値の把握に向けて~」として取りまとめ、公表することといたしました。公表にあたり、研究会でのプレゼンテーション、議論、資料提供などを通じて多大なるご尽力をいただいた座長はじめ有識者の方々、民間金融機関の方々に、厚く御礼申し上げます。
本報告書は、「第Ⅰ部 総論」と「第Ⅱ部 各論」から構成されています。第Ⅰ部では研究会メンバーの議論を通じてコンセンサスが得られた問題意識とフレームワークを、第Ⅱ部では定量的な評価・定性的な評価それぞれからのアプローチ、銀行のビジネスモデルを特徴付ける公器的側面、ステークホルダーとのコミュニケーション、金融行政といったテーマに関する議論の概要を取り上げています。
なお、研究会における参加者からの発表資料を、報告書に添付させていただいております。資料の作成にご尽力いただきました発表者の方々には、重ねて厚く御礼申し上げます。
プライスウォーターハウスクーパース総合研究所では、本研究会での成果を踏まえて、銀行経営に関する更なる調査・研究を継続するとともに、その成果を広く共有していきたいと考えています。
株式会社プライスウォーターハウスクーパース総合研究所
理事長 五味 廣文
*なお、第3回研究会における吉澤委員の資料は非公開とさせていただきます。