PwC、調査レポート「2050年の世界」を発表し、主要国のGDPを予測‐2020年以降、中国の成長は大幅に鈍化するものの、世界の経済力の新興国へのシフトは止まらず

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最新のPwC調査レポートの予測によると、

  • 中国は2030年までに世界最大の経済大国になることは明白だが、長期的には成長率が世界平均に収束する見通し
  • インドは2050年までに米国を抜いて世界第2位の経済大国となる可能性
  • インドネシア、メキシコ、ナイジェリアが、英国とフランスをトップ10の座から追い出す可能性
  • フィリピン、ベトナム、マレーシアも著しい伸びを示す見込み
  • コロンビアとポーランドは、2050年までブラジルとロシアよりも力強く成長


PwC Japan

本プレスリリースは、2015年2月10日にPwC英国が発表したプレスリリースの翻訳です。英語の原文と翻訳内容に齟齬がある場合には原文が優先します。

2015年2月10日 - 中国の経済成長は2020年頃を境に減速が予想されるものの、世界の経済力が、北米、西欧、日本といった既存の先進諸国からシフトする動きは、今後35年間にわたって続くでしょう。

上記は、PwCのマクロ経済担当チームが発表した最新の調査レポート「2050年の世界:世界の経済力のシフトは続くのか?」で明らかになった主な結果です。本レポートは、世界のGDP総額の84%を占める、経済規模でみた世界上位32カ国について、2050年までのGDPの潜在的成長に関する長期予想を示しています。

本レポートはまた、世界経済が2014年から2050年までに年平均3%強のペースで成長し、経済規模が2037年までに倍増、2050年までには3倍近くになると予想しています。しかし、2020年以降は、中国と一部の主要新興国の成長率がより長期的に持続可能な成長率へと鈍化し、多くの経済大国で労働年齢人口の伸びが鈍化するため、世界経済の成長は減速するとみられます。

PwCのチーフエコノミストで、本レポートの共同執筆者でもあるジョン・ホークスワース(John Hawksworth)は次のようにコメントしています。

「経済規模を比較するにはさまざまな方法がありますが、私たちは、2030年までにどの基準で見ても、中国が世界最大の経済大国になると予想しています。ただし、中国の成長率は2020年頃から著しく鈍化することが予想されます。人口が高齢化し、高い投資比率が限界利益の減少に直面し、生産性を上げるにはコピーではなくもっとイノベーションに頼らなければならないからです。日本や韓国に見られるように、かつて高成長を謳歌した国は、最終的には世界の平均成長率に収束するものであり、中国もその例外ではないと私たちは考えています」
「インドは中国よりも高成長を長く維持し、購買力平価(PPP)ベースでは2020年頃、市場為替レートベースでは2035年頃には、経済規模10兆ドルの経済大国になる可能性があります。しかし、これはインフラ投資と社会制度改革の分野でインドが進歩を続け、さらに国民全体の教育水準を引き上げられるかどうかにかかっています」

下表1はGDPの各国順位の変動予想を示しています(詳しくは本プレスリリースの末尾にある注記1をご覧ください)。

本レポートには、このような相対的な価格調整を行わない市場為替レートベースのGDP予測数値も記載しています。これによると、中国は2028年頃までに米国を抜くと予想されます。一方、インドは2050年までに世界第3位となるのは確実ですが、米国にはなお後れを取りそうです。

表1:予測GDPの世界順位(PPPベース、2014年基準の恒常米ドルベース)

  2014 2030 2050
PPPベースの
順位
国名 PPPベースのGDP
(2014年基準10億米ドル)
国名 PPPベースのGDP予測
(2014年基準10億米ドル)
国名 PPPベースのGDP予測
(2014年基準10億米ドル)
1 中国 17,632 中国 36,112 中国 61,079
2 米国 17,416 米国 25,451 インド 42,205
3 インド 7,277 インド 17,138 米国 41,384
4 日本 4,788 日本 6,006 インドネシア 12,210
5 ドイツ 3,621 インドネシア 5,486 ブラジル 9,164
6 ロシア 3,559 ブラジル 4,996 メキシコ 8,014
7 ブラジル 3,073 ロシア 4,854 日本 7,914
8 フランス 2,587 ドイツ 4,590 ロシア 7,575
9 インドネシア 2,554 メキシコ 3,985 ナイジェリア 7,345
10 英国 2,435 英国 3,586 ドイツ 6,338
11 メキシコ 2,143 フランス 3,418 英国 5,744
12 イタリア 2,066 サウジアラビア 3,212 サウジアラビア 5,488
13 韓国 1,790 韓国 2,818 フランス 5,207
14 サウジアラビア 1,652 トルコ 2,714 トルコ 5,102
15 カナダ 1,579 イタリア 2,591 パキスタン 4,253
16 スペイン 1,534 ナイジェリア 2,566 エジプト 4,239
17 トルコ 1,512 カナダ 2,219 韓国 4,142
18 イラン 1,284 スペイン 2,175 イタリア 3,617
19 オーストラリア 1,100 イラン 1,914 カナダ 3,583
20 ナイジェリア 1,058 エジプト 1,854 フィリピン 3,516
21 タイ 990 タイ 1,847 タイ 3,510
22 エジプト 945 パキスタン 1,832 ベトナム 3,430
23 ポーランド 941 オーストラリア 1,707 バングラデシュ 3,367
24 アルゼンチン 927 マレーシア 1,554 マレーシア 3,327
25 パキスタン 884 ポーランド 1,515 イラン 3,224
26 オランダ 798 フィリピン 1,508 スペイン 3,099
27 マレーシア 747 アルゼンチン 1,362 南アフリカ
共和国
3,026
28 フィリピン 695 ベトナム 1,313 オーストラリア 2,903
29 南アフリカ
共和国
683 バングラデシュ 1,291 コロンビア 2,785
30 コロンビア 642 コロンビア 1,255 アルゼンチン 2,455
31 バングラデシュ 536 南アフリカ
共和国
1,249 ポーランド 2,422
32 ベトナム 509 オランダ 1,066 オランダ 1,581

出典:2014年についてはIMF「World Economic Outlook」データベース(2014年10月)、2030年と2050年はPwCの予測

下表2は、上記予測GDP順位のベースとなっている年平均実質GDP成長率の予測です。ただし、人口増加と一人当たりの平均所得増加の影響を除いています。

表2:平均実質GDP成長率予測(年率、2015~2050年)

国名 人口増加率平均 一人当たり実質GDP
平均成長率
実質GDP平均成長率
ナイジェリア 2.5% 2.9% 5.4%
ベトナム 0.3% 5.0% 5.3%
バングラデシュ 0.7% 4.4% 5.1%
インド 0.7% 4.2% 4.9%
フィリピン 1.3% 3.2% 4.5%
インドネシア 0.7% 3.7% 4.3%
パキスタン 1.1% 3.3% 4.3%
南アフリカ共和国 0.5% 3.7% 4.2%
エジプト 1.1% 3.1% 4.1%
マレーシア 0.9% 3.2% 4.1%
コロンビア 0.7% 3.4% 4.1%
メキシコ 0.6% 3.0% 3.6%
タイ -0.2% 3.7% 3.5%
中国 0.0% 3.4% 3.4%
トルコ 0.6% 2.7% 3.3%
サウジアラビア 0.9% 2.4% 3.2%
ブラジル 0.4% 2.6% 3.0%
アルゼンチン 0.6% 2.1% 2.7%
オーストラリア 1.0% 1.7% 2.7%
ポーランド -0.3% 2.9% 2.6%
イラン 0.7% 1.8% 2.5%
米国 0.6% 1.8% 2.4%
英国 0.4% 2.0% 2.4%
韓国 0.1% 2.2% 2.3%
カナダ 0.7% 1.6% 2.2%
ロシア -0.5% 2.6% 2.1%
フランス 0.3% 1.6% 1.9%
スペイン 0.1% 1.9% 1.9%
オランダ 0.0% 1.9% 1.9%
イタリア -0.1% 1.6% 1.5%
ドイツ -0.4% 1.9% 1.5%
日本 -0.5% 1.8% 1.4%

出典:国際連合の人口予測に基づくPwCの分析

中国とインド以外の国について、表1と表2のPwCの予測から明らかになった点は次のとおりです。

  • インドネシア、ブラジル、メキシコなどの新興国の経済規模は、2030年までに英国とフランスを上回る可能性があり、特にインドネシアは成長を後押しする政策が継続すれば2050年までに4位まで浮上する可能性があります。
  • ナイジェリア、ベトナム、フィリピンは、2050年まで年平均でおよそ4.5~5.5%と比較的高い成長率が予想されているため、長期的にみると世界GDP順位が著しく上昇します。
  • マレーシアも2050年まで年平均で4%程度のペースで成長すると予想されています。これは同じ期間で3.5%程度の中国の年平均成長率予測よりも高く、すでに中所得国となっている国としては目覚ましい成長です。
  • コロンビアも、2050年まで年平均で4%程度と比較的健全な長期成長率が予想されます。これはブラジルやアルゼンチンといった規模の大きい南米の近隣諸国よりもかなり高い成長率です。
  • 日本は人口が漸減していることもあり、分析対象全32カ国中で全体として最も低い成長が予想されています。その結果、2050年までに世界のGDPランキングでの順位が4位から7位へ後退すると予想されています。
  • 欧州諸国は概ね順位を下げ、ユーロ圏主要国の2050年までの年平均成長率は1.5~2%程度にとどまると予想されています。
  • ポーランドはEUの経済大国の中で最も高い平均成長率になり、長期的にはロシアを追い越すと予想されています。

PwCはまた、自らの予測が購買力平価(PPP)でみた世界GDPのシェアにとってどういう意味を持つかを(今回調査対象外とされた小国を一つのグループとみなし、調査対象となった32の大国と同率で成長すると想定して)評価しています。下図1は次のことを示しています。

  • 世界のGDPに占める中国のシェアは、成長率が世界平均程度に収束することから、2020年代半ば以降は20%程度で横ばいに推移すると予想されます。
  • 米国のシェアは現在の17%程度から2050年までに14%程度へと徐々に低下していき、一方インドの成長率はPPPベースで現在のおよそ7%から今世紀の半ばまでには倍になり米国と接戦をしている可能性があります。
  • 世界のGDPに占めるEU全体のシェアは、現在の17.5%程度から2050年には12%程度にまで低下すると予想されます。これはEUのGDP総額が、今回調査の対象となったEUの7大国の合計と同率で成長することが前提となっています。

ジョン・ホークスワースは次のようにコメントしています。

「欧州は、この世界の経済力の歴史的なシフトに取り残されないために頑張らなければなりません。このままでは、世界経済は産業革命以前のアジア主導の時代に戻ることになります。米国は、技術分野で世界の最先端にとどまることができさえすれば、欧州よりも持ちこたえられるかもしれません」

図1:世界の経済力のシフト:世界GDPに占めるシェア予測(PPPベース)

Figure 1: Shifting global economic power: projected shares of world GDP in PPP terms

出典:2014年のIMF推定値を出発点とするPwCの予測

しかし、これらの予測は、新興国が政府の成長促進策に広く従うことが前提となっています。実際にはそうならない場合もあり、全ての国がPwCの成長予測に示されている可能性を実現するとは限りません。ただし、投資比率を高め制度改革を推し進められれば、予測を超える国も出てくるでしょう。

企業は新興国にどうアプローチすべきか?

PwCの分析は、新興国戦略を策定をしようとしている企業向けに数多くのヒントを提供します。

  • 経済的なボトルネックと社会制度上の不備を抱えている主要な新興国が、2000年から2012年までの成長率を今後も維持し続けることは難しいかもしれません。事業計画と投資評価にあたっては、ある程度の成長減速を考慮しておくべきです。
  • 新興国では、制度上の強み弱みに大きなばらつきがあるため、注意深い評価が必要です。また同じ国内でも、業種によって制度上の強みに大きなばらつきがある場合もあります。新興国の場合、現地に関する最新の知識を常に得ておくことが、事業を円滑に運営する上で必要不可欠です。現地の政治、法律、規制システムについて指南してくれる適切な現地パートナーを持つことも重要です。現地のビジネスや社会文化を外部者よりもよく理解している現地の人材を見つけ出し、育成することも他より優位に立つことを可能にするでしょう。
  • サハラ以南のアフリカなど、フロンティア市場への戦略的投資を行っている大企業にとってみると、現地の制度の枠組みの改善を試みることも貢献の一つといえるかもしれません。コーポレートガバナンス、財政政策、知的財産権保護といった分野での、適切な技術支援や助言を現地政府に提供することも含まれるでしょう。さらには、企業が地域で長期的に成功するのに必要不可欠な社会インフラや経済インフラ(学校や道路、鉄道、電力網や水道施設など)への投資もあり得ます。
  • 最後に、北米と欧州の成熟市場を忘れてはいけません。欧米諸国は、平均成長率が2%程度にとどまったとしても、今後も数十年にわたって世界経済で極めて重要な役割を果たし続けるでしょう。PwCの分析によると、例えば、一人当たり平均所得水準(PPPベース)は、2050年の時点でもなお中国が米国のおよそ40%、インドは25%程度にすぎません。また一般論で言えば、先進国は政治が安定し制度面もしっかりしているためビジネスをしやすく、リスクも低いでしょう。

ジョン・ホークスワースは以下のように結論づけています。

「最近の経験からも、新興国経済が比較的急速な成長を実現できる保証はもはやありません。例えばロシアやブラジルで最近起きている諸問題に目を向ければ、それは明らかです。成長のためには持続的で効果的なインフラ投資と、政治制度や経済制度、法制度、そして社会制度の改善が必要なのです」
「また、先進国に追いつく経済成長を遂げるための主要な原動力となるテクノロジーやアイデア、有能な人材の移動を自由にしておくことも必要です。ロシア、ナイジェリア、サウジアラビアなどの国々は、天然資源への過度な依存を改め、時間をかけて経済成長の源を分散していかなければ、長期成長は望めないでしょう」
「以上をまとめると、私たちの分析により、新興国には莫大な可能性があることが明らかになったものの、新興国の制度には目に見えない問題がはらんでいる危険性もあるため、経営者も投資家も注意深く前へ進む必要があります」

以上

注記:

  1. 購買力平価(PPP) 対 市場為替レート(MER):発展段階の異なる経済間の相対的規模を正確に測定する唯一の方法はありません。比較の目的に応じ、市場為替レート(MER)ベースのGDP、もしくは購買力平価(PPP)ベースのGDPのいずれかが最適な尺度になるでしょう。一般に、平均生活水準の指標、またはモノの出入りの指標としては、相対的な価格差を正確に測定できるPPPベースのGDPが適切です。一方、企業にとってのある時点における市場全体の相対的な規模を測定するにはMERベースのGDPが適切な尺度となります。しかし、過去の事例が示すように、一般的には、新興国のMERは長期的にゆっくりと上昇してPPPに近づく傾向があります。新興国の平均所得水準が、現在の先進国との差を少しずつ縮めていくからです。PwC長期成長モデルにおける計量経済学の方程式は、この歴史的関係を反映しており、本レポートにおけるMERベースのGDPを予測する際の基礎になっています。これはまた、PPPは長期にわたり実質的に一定であるという一般的な単純化した前提に立つことになります。これに対し、MERの予測にはとりわけ大きい不確実性が残りますので、本レポートとこのプレスリリースはいずれもPPPベースのGDP予測を主に採用しています。
  2. 調査レポート「2050年の世界:世界の経済力のシフトは続くのか?(The World in 2050: Will the shift in global economic power continue?)」はhttp://www.pwc.com/world2050に掲載されています。
  3. 本レポートは世界の経済開発と事業開発を形成するメガトレンドに関するPwCの広範な調査プログラムの一環として作成されています。詳しくはこちらをご覧ください。
  4. インドの成長可能性とこれを実現するための改革に関するさらなる分析は、最近の別のレポート「Future of India:勝利への飛躍(Future of India: The Winning Leap)」に掲載されています。
  5. 新興国向けの事業戦略に関する詳細なレポートは、PwC Growth Markets Centreのレポートをご覧ください。
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