(設例)
当社は、契約上、取引の当事者として行われる取引だけでなく、代理人として行われる取引についても、取引高(取扱高)の表示を重視するという従来からの日本の実務慣行に従い売上高を総額表示しています。
IFRS導入の検討において取引内容を確認していますが、例えば、自社のリスクにおいて在庫を保有し顧客に受け渡す場合や、在庫を保有せずメーカーから直送する場合など、さまざまな取引形態が存在します。また、貸倒れについては第一義的に当社がリスクを有していますが、実際は、メーカーに一部求償するケースもあります。また、商品移送中の事故に備えるため当社が保険を付していますが、当該保険見合いは価格に反映されています。
当社の場合、顧客との関係においてさまざまな取引形態があるのですが、どのような取引条件がある場合、純額表示しなければならないのでしょうか?
(解説)
IAS18号8項では、「代理の関係にある場合、経済的便益の総流入は、本人当事者のために回収した金額で企業の持分の増加をもたらさない金額を含んでいる。本人当事者のために回収した金額は収益ではない。その代わり、この場合には、手数料の額が収益となる。」と規定されており、同付録21項では総額・純額表示の検討における次の判断指針が示されています。
米国会計基準においても上記と類似の検討事項が掲げられていますが、米国会計基準ではそのうちのいくつかは他の要素よりも重視すべき旨が暗に示されています。しかし、IFRSにおいてはこうした検討事項の間の優劣は規定されていません。したがって、IFRSでは、上記5つの判断指針のうちどの要件を満たせば総額表示になる、といった判断基準や、いくつの要件を満たしたら総額表示になるという一律の判断基準が存在せず、上記5つの判断指針を個別に検討の上、取引の実態を総合的に判断し、その結果実質的に代理人として行われた取引であると判断されるときには、純額表示とする必要があります。
(設例)
当社では、金属、化学品関連や燃料関連の商品を取り扱っていますが、業界慣行上、商品の受け渡し時点では確定した価格ではなく、市場価格等を反映した価格を設定し、その後の市況等を反映して、当事者間の協議により過去に遡って価格が修正されることが通例になっています。現在、受渡時点でその時点で設定された価格で売上を計上し、後日価格が修正された時点で売上高の修正処理を行っています。
このように収益認識時点において価格が確定していない場合、IFRSを導入した際は、価格が確定するまで収益認識できないのでしょうか?
(解説)
IAS18号では、「収益は受領した又は受領可能な対価の公正価値により測定しなければならず、公正価値とは企業が許容した値引き及び割戻しの額を考慮した金額である」と規定されており、それに加えて、収益を認識するための要件の一つとして、「収益の額を信頼性を持って測定出来ること」が掲げられています。
したがって、商品の受渡時点で設定された価格が、将来変動等を考慮した価格であり、その時点における取引価格の公正価値の信頼性を持った見積額であると合理的に判断できる場合(例えば、過去の取引事例を考慮できるケース)には、商品の受渡時点で収益認識できるものと考えられます。一方、受渡時点で設定された価格が、将来変動等を考慮した当該取引の公正価値の信頼性を持った見積額であると合理的に判断できない場合(例えば、過去の取引事例がないケース)には、価格が合理的に判断できる時点(取引価格の公正価値を信頼性を持って見積もることができると判断できる時点)において収益認識することになると考えられます。