(設例)
当社では、棚卸資産として不動産を保有しているほか、固定資産として賃貸ビルを保有しています。IFRSでは区分する必要があるのでしょうか?
(解説)
会社が不動産を保有する場合、IFRSでは、その保有目的や状況等によって棚卸資産、売却目的保有資産、有形固定資産、投資不動産等のいくつかの類型に区分した上で、会計処理を検討する必要があります。不動産会社は通常、賃貸収益および資本増価を目的として賃貸ビル等を保有することが多いと思われますが、IAS40号5項では投資不動産を「物品の製造若しくは販売又はサービスの提供、または経営管理目的のために使用されたり、通常の営業過程において販売される不動産ではなく、賃貸収益若しくは資本増価又はその両方を目的として保有する不動産である」としていますので、これに該当する場合、投資不動産とした上で会計処理を検討することとなります。
(設例)
当社では、日本基準に従い、賃貸等不動産について2010年3月期より時価の開示を行いますが、これと投資不動産の範囲は異なるのでしょうか?
(解説)
IFRSではその名目が何であれ、付随的なサービスが相対的に重要である場合には自己使用の固定資産とされるため、投資不動産には含まれません。他方、日本基準では賃貸という形式的な区分を重視し、賃貸されている一定の不動産は一律に開示対象とされています。このため、賃貸等不動産とIFRSの投資不動産とは範囲が異なってくる場合があると考えられます。また、IFRSの投資不動産には一定のOLによる賃借権についても含まれる場合がありますが、これも、日本基準での賃貸等不動産には通常含まれないと考えられます。
(説例)
当社では投資不動産に該当する不動産を保有していますが、どのような会計処理となるのでしょうか。
(解説)
原価モデルは通常の有形固定資産と同様、IAS16号に従い、取得原価を耐用年数にわたって定期的に償却を行うものです。減価償却を行う際に検討すべき事項は「製造業」で説明した通りです。また、減損についても固定資産と同様に適用されることになります。ただし、原価モデルを選択した場合でも、公正価値等の開示が必要とされます。これに対して公正価値モデルでは、原則として全ての投資不動産を公正価値で毎期評価替えを行い、その変動から生ずる評価損益を発生した期の損益に含めて処理します。このように選択適用ではありますが、PwCが行った、欧州での投資不動産のIFRSの適用に関する調査の結果によると、調査対象会社50社中48社が公正価値モデルを選択しており、特に不動産ファンドや不動産会社においては公正価値モデルの選択が主流となっているようです。
なお、取得にかかわる付随費用は、原価モデルまたは公正価値モデルであれ、当該不動産の取得原価に含められます。
正価値とは「独立第三者間取引条件において、取引の知識がある自発的な当事者の間で、資産が交換され得る価額」とされています(IAS40号5項)。公正価値として最も適当なものは、同一所在地および状況で類似する賃貸借契約を有する類似した不動産の活発な市場における類似した不動産の価格とされています(IAS40項45項)が、このような価格は通常稀であり、ない場合には、類似した資産の取引価格や不活発な市場での取引価格または将来キャッシュフロー等を各種の情報に基づいて検討した上で(IAS40号46項)、最も信頼性の高い公正価値をもって評価額を決定することになります。IAS40号B53項によれば、国際評価基準委員会が公表している国際評価基準での時価の概念と公正価値は実質において同一であるとされていますので、不動産評価が当該国際評価基準と整合しているのであれば、原則として、そこでの評価額を元に検討することが考えられます。
IAS40号B56 項によると、推奨はされるものの必ずしも外部の独立した鑑定評価会社による評価は求められていません。しかしながら、前述のPwCの調査によれば、ほとんど全ての会社が、投資不動産の評価にあたり、外部の鑑定評価会社による評価を利用しています。また、その取得の頻度は1年が最も多く、四半期ごとから3年ごとまでと幅があるようです。