不動産業  |  特別目的会社(SPC)連結の範囲に関する論点

質問 2-1: 連結の範囲でSPCはどのように取り扱われるのでしょうか?

(設例)
当社ではSPCを利用して不動産の開発や運用を行っています。このような取引についてはどのような規定があるのでしょうか?

答

2-1: IFRSでは、特別目的事業体(SPE)が実質的に支配されているのであれば、連結に含められることになります。

(解説)
日本基準では、一定のSPCについては、子会社に該当せず、連結子会社に含めていない場合があると考えられます。これに対して、IFRSでは「商社」で説明しているとおり、IAS27号により、支配力基準により連結の範囲を検討し、全ての子会社を連結するよう規定しています。その上で、SPEについては、議決権や持分を有している会社が実質的に存在しない場合や判断が難しい場合があるため、追加的にSIC12号「連結―特別目的事業体」を設けて、支配の有無と連結の要否の判定をする構成となっています。

SIC12号1項 では、一定の目的を達成するために設立された企業をSPEとし、SPEに対する持分をほとんどまたは全く保有していない場合であっても、以下のような場合には、支配が存在し、連結の可能性があるとされています(SIC12号10項)。

  1. 実質的に、SPEの事業活動が企業の特定の事業上の必要に従ってその企業のために行われ、それにより企業はSPEの事業運営から便益を得ている。
  2. 実質的に、企業はSPEの事業活動の便益の大半を獲得するための意思決定の権限を保有し、または、「自動操縦」の仕組みを設定することによって企業はこの意思決定の権限を委託している。
  3. 実質的に、企業はSPEの便益の大半を獲得する権利を持つゆえにSPEの事業活動に伴うリスクに晒されている。
  4. 実質的に、その企業は、SPEの事業活動からの便益を得るために、SPEまたはその資産に関連した残余価額または所有者リスクの大半を負っている。

IAS27号の連結範囲の考え方は、一般に支配力基準に基づくものと説明されていますが、SPEに対しては、一部リスク・経済価値モデルが適用されているように考えられます。いずれにせよ、SPEが実質的に支配されていると示されるのであれば、連結に含められることになり、日本基準でいうところの「一定の要件を満たした特別目的会社」に対する子会社でないことの推定のようなものはありません。

なお、公開草案ED10号「連結財務諸表」が公表されており、このED10号では支配を「ある企業が自らのためリターンを生み出すように、他の企業の活動を左右するパワーを有していること」と定義し、リターンという視点を追加しています。また、ED10 号における支配の概念では、他の企業の営業および財務の方針を左右することができる場合だけではなく、その他の手段による場合も支配が存在しうるという点も明示されています。

質問 2-2: SPCに対する不動産の売却に関する特別な規定はあるのでしょうか?

(設例)
当社では、自社で保有していた不動産をSPCに移転しファンドとして運用することがありますが、このような売却取引ではどのような点に留意する必要があるでしょうか?

答

2-2: 買手の属性がSPCであることによる特別な規定を設けられていませんが、リスク・経済価値の移転について、数値基準は明示されていませんので、特殊な条件が付されていないか留意が必要と思われます。

(解説)
日本基準では、一般的には、「特別目的会社を活用した不動産の流動化にかかる譲渡人の会計処理に関する実務指針」等に基づいてスポンサー側での不動産の譲渡損益の計上を検討した上で、譲渡先のSPCを当該スポンサー会社の連結の範囲として含めるか否かの検討、その他FLや関係会社取引等の必要な検討を行うことになると思われます。

IFRSでは、IAS40号によれば、投資不動産の処分日の決定に際しては、IAS18号における商品の販売収益を計上するための規定を適用して検討され(IAS40号67項)、不動産の売却損益の認識について特別の規定は設けられていません。

IAS18号14項の物品の販売に係る規定では、次の条件の全てが満たされた時に収益を認識しなければならないとされています。

  1. 物品の所有に伴う重要なリスクおよび経済価値を企業が買手に移転したこと
  2. 販売された物品に対して、所有と通常結び付けられる程度の継続的な管理上の関与も実質的な支配も企業が保持していないこと
  3. 収益の額を、信頼性をもって測定できること
  4. その取引に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと
  5. その取引に関連して発生したまたは発生する原価を信頼性をもって測定できること

ただし、多くの場合、所有に伴うリスクおよび経済価値の移転は、法律上の所有権や占有の買手への移転と同時に発生する(IAS18号15項)とされ、さらにIAS18号付録5項では、買戻条件付販売契約においては、契約の条件を分析し、売手が実質的に所有に伴うリスクおよび経済価値を買手に移転しているかどうかを確かめる必要があるとされています。