不動産業 | 収益認識に関する論点

質問1-1: リース会計の規定はどのようになっているのでしょうか?

(設例)
当社は賃貸ビルを保有し、テナントに賃貸することをコアのビジネスとしています。当社が、リース会計を適用する場合には影響が大きいのでしょうか。IFRSではどのような会計処理が求められるのでしょうか。

答

1-1: 原則的な処理は日本基準のものと大きな相違はないと考えられます。

(解説)
保有ビルのテナントへの賃貸は通常リース取引に該当しますので、リース取引としての会計処理を検討することになります。IAS17号では、リース取引をファイナンスリース(以下FL)とオペレーティングリース(以下OL)とに区分した上で会計処理することになります(IAS17号4項)。所有に伴うリスクと便益が実質的に全て借り手に移転するものはFLとし、それ以外のものはOLとされます。FLでは、借り手はFLに基づく資産と対応する負債を認識し、当該資産の減価償却を行い、また、貸し手はリース資産を債権として認識することになります。他方、OLに関しては、借り手は資産を認識せず、貸し手が引き続きリース資産を認識して減価償却を行うとともに、通常、リース料は借り手の費用として計上され、貸し手には収益が計上されることになります。このように原則的な処理は日本基準のものと大きな相違はないと考えられます。しかし、日本基準のようなリスクと便益の移転について具体的な数値基準はなく、少額・短期間の例外規定がないといった点は実務上の影響が考えられます。さらに、ディスカッションぺーパー「リース-予備的見解」が公表されており、それによるとFLとOLの区分をなくし、使用権モデルにもとづく、使用権資産(資産)とリース料支払義務(負債)の計上が提案されています。貸し手についても同アプローチによる会計処理を要するものと考えられますが、投資不動産については特別な取り扱いの必要性の有無等の検討がなされているようです。

質問1-2: 不動産リースの規定はどのようになっているのでしょうか?

(設例)
当社の通常の賃貸借契約では土地と建物とは特段区分しておらず、適切な土地の賃料も契約書には明示していません。そのため、両者を区分せずに、FLの判定を行っています。IFRSでは、どのように取り扱われるのでしょうか。

答

1-2: 土地と建物のリースで、土地の要素の金額に重要性がないリースについては、リースの分類上は一体として取り扱い、判定を行うことができます(IAS17号17項)。

(解説)
ただし原則的には、最低リース料総額を、土地と建物の要素の賃借権持分の相対的公正価値に比例してそれぞれに配分する必要があり、信頼性をもってこれらの要素に配分できない場合には、原則として、全体をFLとして分類することになります(IAS17号16項)。なお、ここでの「公正価値」はリース部分だけを対象とするため(IAS17号BC11項)、その算出は困難である場合も考えられます。

また、土地の賃借は土地には経済的な耐用年数がないことから、一定の場合を除き、通常、OLとして取り扱われますが(同14項)、不動産に対する権利が長期リースにより取得され、リースの実質が不動産を購入することとほとんど異ならない国において懸念事項となる(IAS17号BC5項)とされているように、わが国の定期借地権や普通借地権について権利金の収受を行う際のリース会計の適用には慎重な検討を要するものと考えられます。

質問1-3: テナントリーシングに係る費用等はどのように処理されるのでしょうか?

(設例)
当社は不動産を賃貸するにあたり、仲介手数料、広告料または専門家報酬等を支払うまたはフリーレントを設定することがあります、IFRSではこのような費用等はどのように会計処理する必要があるのでしょうか。

答

1-3: リース契約の獲得・交渉に際して直接的に発生した外部費用は資産計上し、その後、受取リースの収益認識基準と同じ基準でリース期間にわたって費用計上される必要があります(IAS17号4項)。

(解説)
また、賃借人に対し、インセンティブとして、フリーレントと呼ばれる一定期間の賃料を無料とするプログラムを付与することや一定期間賃料を減額すること、引越し費用を負担する等を行うことがありますが、こうしたものは、通常リース期間にわたり、リース収入のマイナスとして処理されます(SIC15号5項)。なお、賃借人がリース契約を延長する権利を有し、ある程度合理的にその権利行使が見込まれるのであれば、その期間を含めた期間をリース期間として考える必要があり(IAS17号4項)、必ずしも契約期間とは一致しない場合があり留意が必要と考えられます。

加えて、投資不動産として公正価値モデルを適用する場合でも、このようなリーシング費用は繰り延べ処理し、評価損益の算定の際に調整されることとなります。

質問1-4: 賃料保証はどのように会計処理されるのでしょうか?

(設例)
当社が、不動産を購入するにあたって、一定の稼働率を満たさないと投資基準を満たさないため、売り手に対して売買日から1年の賃料保証を求めたところ、先方と合意に至りました。こうした取引はどのように会計処理されるのでしょうか。

答

1-4: 賃料保証がIAS39号に定めるデリバティブとしての定義を満たす場合は、原則として公正価値で評価し計上することとなります。

(解説)
賃料保証がIAS39号に定めるデリバティブとしての定義を満たす場合があり、その場合には購入不動産とは区分して当該賃料保証を金融資産として会計処理する必要があり、原則として公正価値で評価・計上されます。

売り手がマスターレッシーとしてエンドテナントとの間に入り、買い手と賃貸借契約をすることで同様の経済的効果となる場合がありますが、こういった契約についても同様な検討が必要になるものと考えられます。また、売買後の継続的関与の程度からも検討を要する場合があると思われます。

質問1-5: 工事進行基準の適用はどのようになるのでしょうか?

(設例)
当社ではグループで住宅等の分譲の業務を行っています。こうした取引での収益認識はどのようになるのでしょうか?

答

1-5: 限定的な仕様変更しかできないのであれば、IAS18号に基づいて、通常、引き渡し時に収益を認識することとなります。

(解説)
物品の販売についてはIAS18号が適用されますが、役務の提供である場合には、IAS11号に基づいて、工事の進捗度に応じて収益を認識することとなります。具体的には契約上、買い手が工事前または工事中に不動産の設計構造上の主要部分についてその仕様を決定することができる場合には、買い手がその権利を行使するかどうかにかかわらず、当該契約はIAS11号の定義に合致しますが(IFRIC15号11項)、他方、契約上、買い手が不動産の設計について限定的な仕様決定しかできない場合(たとえば用意されているオプションを選択する場合等)には、このような契約はIAS18号が適用されます(IFRIC15号12項)。

なお、IASBからディスカッションペーパー「顧客との契約における収益認識に関する予備的見解」が公表されており、工事中の資産が継続的に顧客に対して移転しない工事契約については、完成引渡し時に一時に収益認識することが提案されており今後の議論の進展に注意する必要があると思われます。