(設例)
当社は、得意先に対する売掛金を一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権の3区分に分けてそれぞれの区分に応じた引当金を算定・計上しています。当社では、一般債権について、過去3年分の貸倒実績率を計算し、期末時点の一般債権金額に当該貸倒実績率を乗じた額を引当金として計上しています。IFRSを適用すると貸倒引当金は金融資産の減損の基準で取り扱われることになるということですが、明らかな減損の兆候がない一般債権については貸倒引当金を計上することはできなくなるのでしょうか? また、貸倒引当金という勘定科目は使用されなくなるのでしょうか?
(解説)
IFRSでは、金融資産の減損の兆候を金融資産全般について規定し、さらに持分金融商品の減損に追加的な規定が設けられています。また、有価証券の減損についての規定と貸付金・債権についての減損(貸倒見積高)の算定方法について別々に規定されています。以下の解説は現行IAS32号、IAS39号、IFRS7号を基にして記載しており、2009年11月13日に公表された「金融商品:償却原価及び減損」の内容は反映していません。
貸付金・債権の減損金額(貸倒見積高)は、見積将来キャッシュフローを当初実効金利で割引いた現在価値と帳簿価額との差額として測定されます。
また、期末時点の発生損失のみ計上することとされ(期末時点で既に減損の事実が発生しているが、企業によって未だ認識されず、翌期以降の期間(損失確定期間)に認識される事象の減損損失を含む)、将来損失(将来発生する減損の事実を見込んだ形での減損損失)の認識は禁じられています(IAS39号.AG90)。

設例の場合、一般債権についての質問ですが、いわゆる一般債権として減損の客観的証拠が認められない場合、または、減損の客観的証拠が認められるが重要でない場合は、債権を同様の与信リスク(以下クレジットリスク)、すなわち債権者が契約どおり債権を支払う能力別にグルーピング(IAS39号AG87)することが必要になります。すなわち、過去の実績率を用いて貸倒引当金額を機械的に計算することはできませんが、業種別、地域別、担保別その他の要素で同水準のクレジットリスクに分類した上で過去の情報に基づき見積将来キャッシュフローを算定し、その現在価値と簿価を比較することが必要になります。
また、損失確定期間を合理的に見積もり、その期間にすでに事実が発生しているが未だ認識されていない事象を計上することが必要になります。
貸倒実績は、現在の観測可能なデータに基づいて修正を行い、実績の基礎となった期間には影響を及ぼさなかった現在存在する影響を反映し、貸倒実績の基礎となった期間における状況のうち現在では存在しない状況の影響を除去することが必要です(IAS39号AG89)。
(設例)
会社は、一般債権に分類される売掛金のほかに懸念債権に分類される売掛金や破産更生債権を有しています。これらの債権についての貸倒引当金はどのように算定するのでしょうか?
(解説)
現在、貸倒懸念債権に分類されている売掛金や破産更生債権については、減損の客観的証拠がある場合で、かつ個々に重要である場合は個別に減損を計算します。
将来のキャッシュフローを合理的に見積もり、債権の当初の実効金利で割引いた現在価値と簿価との差額を減損金額(貸倒見積高)として測定します。また、入手可能である場合には、観測可能な時価を用いた公正価値を用います。
債権に担保が設定されている場合は、その担保価額について処分費用等のコストを勘案した合理的な価額を見積もり、かつ、担保権行使の可能性を見積った上で、そのタイミングに配分し割引計算が必要です。
将来のキャッシュフローは、当初の実効金利で割引計算します。