製造業(一般) |  固定資産の会計領域

質問 2-1:当社では、固定資産の耐用年数に法人税法により定められた耐用年数を採用しているが、耐用年数が実態と乖離している場合には変更が必要でしょうか?

(設例)
当社では、ある製造設備の耐用年数について税法で定める耐用年数7年を採用しています。しかしながら、実際に7年で当該設備を廃棄することはなく、引き続き使用されているため、固定資産台帳上では減価償却が終了した当該設備が未だに稼動している状況にあります。当該設備の使用期間を過去の廃棄実績等から検討したところ、平均して10年の使用実績が認められました。当該耐用年数については、会社の状況に照らし、耐用年数または残存価額に不合理と認められる事情がないとして当面監査上妥当なものとして容認されてきたと認識していますがこのまま耐用年数を変更しないことは容認されるでしょうか?


答

2-1: 固定資産の耐用年数が実態に即していないと判断された場合、変更が必要です。

(解説)
日本基準においても、耐用年数および残存価額に関しては、本来であれば各企業が独自の状況を考慮して自主的に決定すべきものですので、資産を取得する際には、適切な耐用年数および残存価額を見積もり、当該見積りに従って毎期規則的に減価償却を実施することが必要です。しかしながら、多くの企業が法人税法に定められた耐用年数を用いており、また同様に残存価額の設定についても、多くの企業が法人税法の規定に従っているのが現状です。したがって日本ではこのような事情に鑑み、「企業の状況に照らして耐用年数又は残存価額に不合理と認められる事情のない限り、当面、監査上妥当なものとして取り扱うことができる。(監査・保証実務委員会報告第81号2.(3))」とされてきました。

一方、IAS16号では、資産に具現化される将来の経済的便益は、主として企業が当該資産を使用することによって消費されるとして、資産の耐用年数は、当該資産を保有する企業にとっての期待効用の観点から検討されます。したがって資産の耐用年数の見積りは、同様の資産を有する企業の使用実績に基づいて判断されるとされています(IAS16号57項)。
また、資産の残存価額および耐用年数は、少なくとも各事業年度末に見直されなければならないとされていて、見積りに変更があった場合は、IAS8号「会計方針、会計上の見積りの変更、誤謬」に従って、会計上の見積りの変更として会計処理しなければならないと規定されています。

設例の場合、税法の基準による7年に対して使用実績は10年であり、3年の乖離があります。また、償却済みとされている設備が稼動している状況は、現在採用されている耐用年数が資産の使用実績と比較して実態を反映しているとはいいがたい状況にあると思われますので、IFRSへの移行にあたり耐用年数の変更を検討すべきと考えられます。ただし、会社の使用の意図、修繕の実績などを考慮し、最終的に7年を使用することが妥当であるとの結論が出る可能性もあります。

資産の使用状況を更に調査して以下の事実が判明した場合は、どのように考えればよいでしょうか?

質問 2-2:Q2-1の場合で、当該設備が9年目を超えると修繕の回数が増加して、期待どおりの稼動ができなくなることが分かった場合、耐用年数は何年にするのが妥当でしょうか?

(設例)
当社で、当該設備の稼働状況および修繕の回数の相関関係を調べてみたところ、9年を超えるとしばしばトラブルが発生し、修繕の回数が増えていることがわかりました。すなわち、9年を超えると当該設備は、当社が想定する本来の生産性を発揮できず、修繕をしながら何とか使用している状態となります。このような場合、耐用年数は10年でなく9年とすべきでしょうか?


答

2-2: 耐用年数は、当該資産を使用する会社の意思等により判断されるものです。9年が会社にとって当該資産を期待する効力をもって使用できる年数であると考えるなら、9年とすることが妥当と考えられるかもしれません。

(解説)
資産に具現化される将来の経済的便益は、企業が当該資産を使用することによって主に消費されます。
しかしながら、資産が遊休の状態にある間に、技術的あるいは商業的に陳腐化したり、損耗するといったその他の要因で、当該資産から得られたかもしれない経済的便益が減少する場合も多いので、資産の耐用年数を決定する際には、以下の要因全てを考慮するとされています。

  1. 資産の予想される使用量(資産の予想生産能力または実際生産高を参考にして検討)。
  2. 予想される物理的損耗。これは、資産の使用頻度、修復・保守作業や遊休時の資産の管理および保守といった営業上の要素に影響を受ける。
  3. 製造技術への変化や改善、あるいは、資産から製造される製品や提供されるサービスに対する需要の変化から生じる技術的又は商業的陳腐化。

資産の耐用年数は、当該資産を保有する企業にとっての期待効用の観点から定義されます。資産の耐用年数の見積りは、同様の資産を有する企業の経験に基づく判断の問題です(IAS16号57項)。

したがって、耐用年数は、固定資産が一般的な方法で使用されて物理的に何年持つかという年数ではなく、あくまでも会社がどのように使用するかという意思により決定されるものです。
仮に一般的な方法で使用して物理的に20年持つ設備でも、会社が10年使って、その後転売する意図を持ち、それが実態を表している場合には10年がその会社にとっての当該設備の耐用年数になります。