製造業(一般) | 収益認識の会計分野

質問 1-1:収益を製品の出荷時点で認識する「出荷基準」は認められるか?

(設例)
当社は、主として国内の顧客に対して、顧客の指定する場所に当社製品を納入しています。販売契約書には明確に所有権の移転について述べた条項はありませんが、製品の受渡が完了するのは納品日であると記載されています。また、出荷してから得意先の指定する場所(国内)へ納品するまでの所要期間は1日ないし2日程度です。過去の取引では、製品の納入後、検品は速やかに実施されて検収されており、検品後に返品されることはほとんどありませんでした。
現在当社は、製品を出荷した日に売上を計上する「出荷基準」を採用しています。IAS18号の基準に照らした場合、これは容認されるでしょうか?


答

1-1:通常、事例のような場合、顧客に向けて出荷した段階で収益を認識することはできないと考えられます。


(解説)
日本では、企業会計原則において収益の認識は実現主義によることが示されていますが、収益に関する包括的な会計基準は存在しません。実務上は、通常の物品販売の収益認識に関して、引渡基準や検収基準と並んで出荷基準についても継続的な適用を条件として広く採用されていると思われます。規格品を大量に出荷している場合、多くのケースにおいては、製品を運送業者に引き渡すなど、いったん顧客に向けて発送してしまえば、その後、当該商品が確実に顧客に届けられて受領されると考えられるため、そのような条件が満たされている限り、継続的に出荷基準を採用して収益を認識することで実現主義の趣旨に適った、実績成果情報を提供することができると考えられてきたものと思われます。
一方、IASBの概念フレームワークでは、「収益とは、当該会計期間中の資産の流入もしくは負債の減少による経済的便益の増加であり、資本取引以外で持分の増加を生じさせるもの」と定義した上で、IAS18号において収益の認識要件を(1)財の販売、(2)サービスの提供、(3)企業資産の第三者による利用に分けて定めています。
このケースではIAS18号14項に規定される(1)財の販売に係る5つの収益認識要件のうち、特に「(a)売手が物品の所有に伴う重要なリスク及び経済価値を買い手に移転したこと」が会社の製品出荷の時点で満たされたかどうかが問題となります。

<14項の5つの要件>
14.物品の販売からの収益は、次の条件すべてが達成されたときに認識しなければならない。

  • (a)物品の所有に伴う重要なリスク及び経済価値を企業が買手に移転したこと。
  • (b)販売された物品に対して、所有と通常結びつけられる程度の継続的な管理上の関与も実質的な支配も企業が保持していないこと
  • (c)収益の額を、信頼性をもって測定できること
  • (d)その取引に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと
  • (e)その取引に関連して発生した又は発生する原価を信頼性を持って測定できること

もちろん、最終的な判断にあたっては、契約上の所有権移転条項、輸送中の付保(保険料負担関係と保険金受取人)、過去の滅失毀損の補償、代金回収条件(検品を条件としているか)等の分析が必要となります。

IAS18号16項では、販売契約内容によって所有に伴うリスクおよび経済価値の移転が認められないケースについて以下の例示を挙げています。

  • 企業が通常の保証条項ではカバーされない不十分な履行に対する義務を留保している場合:例えば一定の性能を保証した新製品を出荷した場合、その製品が約束されたレベルの性能を満たさない場合に返金をする条件の付いた販売契約
  • 売手が特定の販売からの収益を受け取るために、買手がその物品の販売によって収益を得ることが条件となっている場合:例えば代理店に販売したが、販売代金の回収は当該代理店が第三者に販売した時に行われる契約
  • 物品が据付けが必要な状態で出荷され、その据付けが契約の重要な部分であり、企業がそれをまだ完了していない場合
  • 買手が販売契約に明記された理由により購入を取り消す権利を有し、企業にとって返品の可能性が不確実である場合

また、運送中の保険契約が収益認識のタイミングに影響する可能性があることも記載されています。
それでは、契約条件に注目した場合、次のようなケースはどう考えればいいでしょうか?

質問 1-2:代金回収まで所有権を留保するという契約条件を入れた場合、代金回収まで収益を認識することができないのでしょうか?

(設例)
当社は、得意先の不払いによるリスクを回避するため、製品を引き渡しても、その所有権を代金回収まで留保する文言の入った販売契約を結んでいます。この文言により得意先が倒産した場合に、速やかに製品を取り返すことができるため、債権保全のためにこのような条項を入れています。販売契約にこのような文言を追加している場合、収益は代金回収まで認識できないのでしょうか?


答

1-2:代金回収まで所有権を留保するという文言により、当社に残された当該製品のリスクと 経済的便益に重要性がない場合、得意先に製品を引き渡した時点で収益を認識することが できると考えられます。

(解説)
IAS18号17項では代金の回収を確保するために法的所有権を代金回収まで保留するケースについて記載しています。実際には、法的所有権は代金の回収を担保しませんし、このような場合の所有権留保は通常、稀なケースですが得意先が倒産した場合にのみ所有権を主張することができます。所有権留保条項はあるものの、顧客は製品受領後代金支払までの間に当該製品について実質的に自由処分権を有している(転売、自由な使用、担保提供など)場合には、このような条項が販売契約書に記載されていても、売主の所有に伴う重要なリスクと経済的便益は買主に移転していると考えられるため、収益の認識に影響を与えないと考えられます。