(設例)
当社は、変動利付借入金により外部から資金を調達しており、その支払金利のキャッシュフローを固定するために、変動受取・固定支払の金利スワップを締結しています。日本基準に準拠したヘッジ会計に関する正式な文書化といった要件は満たしています。ヘッジ対象である借入金とヘッジ手段である金利スワップは、想定元本、利息の受払条件および契約期間が完全に一致しているものであることから、いわゆる金利スワップの特例処理を適用して、金利スワップを公正価値で測定せず、発生主義にて認識しています。IFRSは原則主義だといわれていますが、このようにデリバティブを公正価値で測定しないヘッジ会計は認められるのでしょうか?
(解説)
日本基準では、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」や会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」にヘッジ会計を含む金融商品会計全般について規定されています。IFRSでは、IAS39号にヘッジ会計を含む金融商品の認識および測定について規定されています。
IAS39号は、全てのデリバティブを公正価値で測定することを求めており、ヘッジ会計を適用する場合でも、その原則に従う必要があります。したがって、日本基準において容認されている金利スワップの特例処理や為替予約等の振当処理といったヘッジ手段が公正価値で測定されないヘッジ会計は、IFRSにおいては認められません。
IAS39号におけるヘッジ関係の種類としては、公正価値ヘッジ、キャッシュ・フロー・ヘッジ、在外営業活動体に対する純投資ヘッジがあり、それぞれで会計処理が異なります。本設例は、支払金利を変動金利から固定金利に変換する金利スワップによりキャッシュ・フローを固定するヘッジ取引であるため、キャッシュ・フロー・ヘッジに該当します。したがって、ヘッジ会計の要件が満たされている場合には、ヘッジ手段であるデリバティブを公正価値で測定し、評価損益のうちヘッジ有効部分をその他の包括利益(資本)に認識し、ヘッジ非有効部分を損益として認識する必要があります。借入金と金利スワップは、主要な条件が完全に一致していることから非有効部分は全く存在しないように考えられますが、実際にはヘッジ対象とヘッジ手段の信用リスクなどが異なることから、非有効部分が存在する可能性があります。
なお、現在、IASBでは、IAS39号で規定している金融商品の認識および測定に関する基準の簡素化を目指しており、そのプロジェクトの一環で現行のIAS39号に規定されているヘッジ会計も簡素化される予定です。2010年第2四半期にはヘッジ会計の公開草案が公表される予定です。
(設例)
当社は、利率が通常の債券より高いものの、特定日における株価指数が一定の価格を下回った場合に償還金が減額されるタイプの株価指数リンク債を購入し、その他有価証券として保有しています。企業会計基準適用指針第12号「その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に関する会計処理」に従い、組み込まれたデリバティブを債券とは区分して公正価値で測定し、評価差額を損益として認識しています。これについて、当社はどのように会計処理すべきでしょうか?
(解説)
日本基準では、企業会計基準適用指針第12号にこのような組込デリバティブを含む複合金融商品に関する会計処理が規定されています。一方、IFRSではIAS39号に規定があります。
IAS39号は、以下の条件をすべて満たす場合、組込デリバティブを主契約から区分して、デリバティブとして会計処理することを求めています。
本設例の複合金融商品は、株価指数を基礎数値とする組込デリバティブ(オプション)により元本返済金額が変動することから、上記(a)に該当します。この複合金融商品を日本基準におけるその他有価証券と同様の処理を行う売却可能金融資産にIFRS上区分する場合、組込デリバティブを区分して公正価値で測定し、評価差額を損益認識する必要があります。
ただし、現行IAS39号で規定している金融商品の認識および測定に関する基準の簡素化プロジェクトの一環として、2009年11月に金融資産の分類と測定を扱うIFRS9号が公表されています。IFRS 9号は金融資産のみを対象とするものであり、2013年1月1日以降開始事業年度から適用されますが、早期適用も認められています。なお、金融負債については従前どおりIAS39号を適用することとしています。
IFRS9号は、以下の2つの要件を満たした金融資産を償却原価で測定することを求めています。それ以外の金融資産は公正価値に基づく測定を求めています。
ここでいう金利とは、ある特定期間の元本残高に対する貨幣の時間的価値および信用リスクの対価と定義されています。
本設例の複合金融商品は、金利として受け取るキャッシュフローの中にオプション料が含まれており、上記2つの要件のうち、(b)の要件を満たさないことになります。したがって、複合金融商品全体を公正価値で測定し、評価差額を損益として認識する必要があります。