(設例)
映画業界においては、1本の映画の制作に際して複数の企業が制作費を出資する制作委員会方式が一般的になっています。映画のエンディング等で、「○○○制作委員会」や「△△△パートナーズ」といった記載をよく目にします。大半の制作委員会は、制作会社、映画会社、テレビ会社、音楽会社など当映画における各業務分担をまかなう企業からの出資によって構成されています。うち1社が制作委員会において過半数の出資を有している場合、その会社が制作委員会を連結子会社として取り扱うべきでしょうか。
(解説)
一般的に、映画の制作委員会は、民法上の任意組合と考えられます。また、制作委員会出資契約書もしくは共同事業契約書等において、主幹事会社が設定され、委員会における業務の分担などが定められるものの、マスター映画フィルムの所有権は出資者全員の共有物とされ、その加工や編集、複製は出資者全員の承諾が求められることが一般的です。また、委員会からの脱退や持分の譲渡、業務内容の変更などのあらゆる重要な決定において、出資者全員の合意が必要とされている場合があります。この状況では、出資比率と重要な意思決定への議決権比率は連動していないことになるため、出資比率だけで連結範囲を判定するのは妥当ではありません。
IAS31号「ジョイント・ベンチャーに対する持分」では、契約上の取決めにより、投資家同士の合意がなければ戦略的財務・経営の決定がなされない場合には、ジョイントベンチャーとして取り扱われることとされています。IAS31号では、ジョイントベンチャーを「共同支配の営業活動」、「共同支配の資産」および「共同支配企業」の3つの形態に分類していますが、映画制作委員会は、「共同支配企業」に分類されるケースがあると考えられます。この場合、出資者は持分法か比例連結によって会計処理することが求められています(比例連結については、廃止される方向で議論が進められています)。
なお、制作委員会方式において、一般企業のように議決権比率がその過半数を占める場合には、出資者は当委員会を連結子会社として取り扱うことになるものと考えられます。
(設例)
IT企業やエンターテイメント企業など、個人の技術やアイディアが企業の業績に大きく影響を与える企業においては、役員も含めて企業に貢献する人員を対象に株価連動型の報酬体系を導入するケースが多く、その形態は多種多様です。
中長期報酬制度の1つとして、ストックオプションのように実際の株式や新株予約権を付与するのでなく、株式増益権(基準価額を設けて、一定期間経過後の基準日における、基準価額からの株価増加分を現金として受領する権利)を付与し、権利者の権利行使に際し、現金決済するボーナスプランがあります。このようなボーナスプランを会計処理するにあたってどのようなことに留意すべきでしょうか。
(解説)
IFRS2号は、株式に基づく報酬取引について広範囲にわたって取り扱っていますが、現金やその他の資産を引き渡す義務を負う場合を現金決済型として、いわゆるストックオプションなど株式を引き渡す義務を負う持分決済型とは区分して取り扱っています。
現金決済型の場合、現金その他資産を引き渡す義務を負うことから負債が計上されます。計上額は、オプション価格モデルを用いて算定された株式増益権の公正価値になります。
もし権利の確定までに一定期間の労働役務の提供が必要な場合には、株式増益権の公正価値を、役務提供期間にわたって認識します。具体的には、権利の付与日から確定日までの期間にわたり、費用と負債を認識していきます。また、負債が計上された後も、決済されるまで毎期末に公正価値を見直す必要があります。見直した結果、評価差額が生じた場合には、損益として処理されることになります。