(設例)
エンターテインメント業界は、各種権利やコンテンツといった、無形の財を活用し、利益を生み出すビジネスです。したがって、エンターテインメント業界における企業買収においては、買収金額が被取得企業の貸借対照表の純資産を大きく超過することがよく見られます。この場合、企業買収の結果として、被取得企業では計上されていなかった各種権利等が無形資産として計上される可能性があります。このような場合、計上される無形資産はどのようなものでしょうか。
(解説)
IFRS3号(2008年改訂)では企業結合にかかる取得原価の配分の前提として、識別可能な取得した資産、引き受けた負債が、取得日時点で「財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク」における資産と負債の定義を満たすことを条件としています。ここにいう、識別可能とは、分離可能であるか、または契約その他の法的権利から発生していることを意味します。このため、企業買収等の企業結合の結果、被取得企業の貸借対照表に当初計上されていなかったブランドや著作権、取引先との関係を起因とする権利等が、買収時に新たに無形資産として計上されることが想定されます。
たとえば、エンターテインメント産業特有の項目として、ブランド、ビデオグラム化権およびその販売窓口権、映画制作出資権、ゲーム化権、テレビ化権、アーティストとの契約、ミュージックや映画等のライブラリー、取引先との関係等が考えられます。なお、これらの無形資産は契約等により権利期間が定められている場合には、権利期間における収益獲得に貢献する期間を検討した上で、当該権利期間を超えない期間にわたって償却されます。なお耐用年数を確定できない無形資産は償却しませんが、耐用年数が確定できるかどうか毎期見直し、状況の変化があれば耐用年数を有限へ変更することになります。また、耐用年数が確定できない期間については、減損の兆候にかかわらず、毎年減損テストが必要になります。
(設例)
国内のオンラインゲーム業界が取り扱うゲームは多種多様です。たとえば、多人数同時接続可能型オンライン・ロールプレイング・ゲーム(MMORPG: Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)においては、一般的に「商用化開始までのゲーム開発」と商用化開始後にも継続的にユーザーにゲームを楽しんでもらうためにゲーム内アイテムの多様化、ゲームキャラクターの新設、ゲームレベルにあったステージの増設、バグや不具合の調整を通じてゲームの魅力をより高めるための「継続開発」が行われます。これらに要した金額を全額無形資産として計上し、償却していくことは認められるのでしょうか。
(解説)
IAS38号では、下記6つの要件をすべて満たしている場合、開発費を資産計上することとされています(57項)。
商用化開始前のオンラインゲーム開発については、上記(1)の「技術上の実行可能性」を何に基づき立証するのかというのがポイントになります。これを概ねゲームが完成し、商用化開始前にユーザーや周囲の開発者によるゲームの試用(ベータテスト)においてその反響を聞いた段階とする考え方がある一方、過去においてビデオゲームなどのパッケージゲームとして成功したタイトルをオンラインゲーム化する場合には、その商用化に当たっての技術上の実行可能性は前者より早くなるという考え方もあります。
また、継続開発段階における支出についても、上記6つの要件を十分考慮した上で資産計上するか否かの検討が必要になります。たとえば、当支出において一時的な売上増加を狙った期間限定のオンラインゲーム内仮想アイテムの設置やゲームのバグや不具合の調整は、オンラインゲーム会社にとっては日常業務に関わる支出であり、上記6つの要件のうち、蓋然性の高い将来の経済的便益を創出できる段階にはないことや完成後においてそれを利用または売却するために必要となる適切な技術上、財務上およびその他の資源の利用可能性を説明できないため、発生時に費用処理されることになると考えられます。