(設例)
顧客(ユーザー)から依頼を受けて、ソフトウェアの請負製作を行う場合、1つの開発プロジェクトをいくつかのフェーズに分け、ユーザーがフェーズごとに受入・検収を行い、都度支払いがされる場合があります。このような場合、どのタイミングで収益を認識すればよいでしょうか。
さらに、契約によっては、機器の販売やメンテナンスサービスなど複数の要素をまとめて受注する場合がありますが、それぞれの要素ごとにどのような収益認識基準を当てはめるべきでしょうか。
(解説)
一般的に受注請負製作のソフトウェア販売は、あらかじめ顧客との間で要件定義がなされ、当該要件に合わせて開発を進められると考えられます。既製のパッケージ製品を販売する場合には、製作の進捗段階においては特定の顧客が想定されていないのに比べ、顧客の仕様に合わせて製作するソフトウェアの場合には、最終的な顧客の検収時よりも早い段階で開発の進捗に応じて提供すべき役務の提供を実質的に完了しているものと考えられます。
収益認識の基準であるIAS18号によれば、顧客仕様のソフトウェア開発などサービス提供にかかる収益は、以下の要件が満たされる場合に、サービス進捗度合に応じた収益認識が求められます。
進捗度合を測定する方法は、一般的には総原価に対する原価発生の割合等が用いられると考えられますが、サービスの提供に伴う成果の価値が合理的に測定できる場合には、契約総金額に対する提供済みの成果の価値の割合で進捗度を測定する方法のほうが、より妥当なものと考えられます。なお、IAS18号では、ユーザーからの支払は進捗度合を測る指標として適切でない場合が多いことが明記されています。また、もし上記の要件が満たされない場合には、収益は、回収可能であることが明らかな範囲での発生した原価金額までしか認識できません。
またIAS18号によれば、1つの取引に含まれる複数の要素は識別可能な単位にわけて、それぞれの収益認識基準を当てはめることが求められます。識別可能な要素は、個々の取引によって慎重に判断されるべきものですが、一般的に、顧客にとって単独で価値を有すると判断できる個々の要素は、それぞれを識別可能な要素として分割して会計処理するとの解釈が一般的です。したがって、システムインテグレーション等の契約において、機器の販売、システム開発およびメンテナンスサービスがひとつの契約に含まれているような場合には、機器の販売収益は、納入時など所有権とリスクの移転したタイミングで認識し、システム開発に係る収益はサービスの提供に応じて認識し、また、メンテナンスサービスに係る収益は一般的には契約期間に応じて認識する、といったように、それぞれ別個に該当する収益の認識基準に照らして認識されるものと考えられます。
(設例)
キャラクターコンテンツ、映画、音楽、アニメ等のライセンス取引において、そのライセンス使用料(ロイヤルティ)は、ライセンス先における当ライセンスの利用による売上高にライセンス元と合意した一定率を乗じて決定されることが多く見られますが、それに加えて、ライセンス期間開始に先立ち、ライセンス先がライセンス元へミニマムギャランティ(返還不要な最低保証金)を支払い、その後のロイヤルティ発生額を当該ミニマムギャランティに充当していく場合があります。この場合、ライセンス契約終了時に未充当額があっても、ライセンス元からライセンス先への返還はされません。ライセンス先からこのミニマムギャランティを受取ったライセンス元は、ミニマムギャランティの受取時にその全額を収益計上することが認められるでしょうか。
(解説)
IAS18号は、ロイヤルティのように企業資産を第三者が利用することにより生ずる収益は、以下の条件を満たす場合に限り、取引先との契約条件に基づき発生主義にて収益を認識することとされています(29項)。
ミニマムギャランティ付きライセンス取引契約において、ライセンス元がミニマムギャランティを受取った後、ライセンス期間においてライセンス先のために広告宣伝や各種素材の提供等の一切の業務を行わず、ライセンス先におけるライセンス利用に関して影響を及ぼさないことが契約で定められている場合があります。この場合、ライセンス元はライセンス契約で求められる全ての義務を履行したとして、ライセンス期間の始めに受け取った、もしくは受け取ることが確実なミニマムギャランティを一括してライセンス期間開始日に収益計上することが可能であると考えられます。
一方で、ライセンス元がライセンス期間に亘って、ライセンス対象物に関する広告宣伝をすること等が契約上要請されている場合や取扱物のマスター素材やマスターテープの引渡しをライセンス先へ継続的に行っていく場合など、ランセンス元になんらかの重要な未履行の義務がある場合には、ライセンス期間の初めに一括して収益計上することはできず、契約実態を考慮した上で、ライセンス先からの報告に基づくライセンス使用料によりミニマムギャランティを取り崩して収益を計上していく方法や、ライセンス期間にわたって定額で収益認識をしていく方法による会計処理が求められます。