(設例)
当社は、大手化学品メーカーです。当社は、多種多様な有形固定資産を多く抱えており、有形固定資産管理の効率化を図るため、総合償却(耐用年数が異なる異種資産または、耐用年数の等しい同種資産や性質・用途などの共通性を有するいくつかの資産を1グループとした各グループについて、平均耐用年数を用いて総合的に減価償却の計算および記帳を行う方法)を採用しています。IFRS適用後もこの総合償却を継続することは認められるでしょうか? なお、当社の樹脂シート製造工程には以下の設備を含みますが、当社ではこれらの設備を1グループとして総合償却をしています。(a)原材料樹脂受入設備、(b)樹脂押出設備、(c)スリット設備、(d)シート巻取設備
(解説)
日本においては、上記のような樹脂シート製造工程全体を1つのグループとし、各設備(原材料樹脂受入設備、樹脂押出設備、スリット設備、シート巻取設備)ごとの管理(記帳や減価償却)をせず、総合償却することが実務慣行として認められています。
一方、IFRSでは、有形固定資産の認識を行う際の単位、すなわち、どのような項目が有形固定資産を構成するのかについての定めはありません(IAS16号9項)。しかし、IFRSでは、ある有形固定資産の構成要素の取得原価が、その有形固定資産の取得原価合計と比較して重要性がある場合、その構成要素は別個に減価償却する必要があります(IAS16号43項。一般的に「コンポーネントアプローチ」と呼ばれています)。
したがって、設例に記載の各設備(樹脂シート製造工程の構成要素)の取得原価が、樹脂シート製造工程全体の取得原価と比較して重要性がある場合には、設備ごと(構成要素ごと)に減価償却する必要があります。したがって、仮に各設備の見積耐用年数が異なる場合には、それぞれの見積耐用年数で減価償却することになります。ただし、樹脂シート製造工程を除却(現物の処分)する際には、設備ごとの除却ではなく工程全体を除却する予定であり(すなわち各設備(各構成要素)の見積耐用年数が同一である)、かつ減価償却方法が同じである場合には、総合償却を継続する余地があると考えられます(IAS16号45項)。以上から現在、総合償却を採用している場合には、たとえば、以下の検討が必要であると考えられます。
上記検討結果を踏まえ、各構成要素が重要であると判定された環境下においては、個々の設備(各構成要素)ごとに除却(現物の廃棄)をする場合や、異なる減価償却方法を採用する必要がある場合には、総合償却は認められないと考えられます。
(設例)
当社は、エチレンプラントのスクラップ&ビルドをしております。当該新エチレンプラントは建設開始から稼動開始まで18カ月間かかる見込みであるため、IAS23号「借入費用」5項に記載されている適格資産(意図した使用または販売が可能となるまでに相当の期間を必要とする資産)に該当すると当社では判断しています。なお、当社では当該新エチレンプラント建設を目的とした特別の借入を過去において行っておらず、今後も追加の特別借入の予定もありませんが、一般的な資金需要を目的として、社債の発行、長期借入、短期借入を行っております。これらの概要は以下のとおりです。
(1) 新エチレンプラントについて
(2) 社債・借入金について
このような状況において借入費用を資産化する必要はありますか?また、資産化する必要がある場合は、資産化すべき金額はいくらになりますか?
(解説)
適格資産を購入するための特別借入がない場合でも、一般的な資金需要目的の社債や借入金等がある場合には、適格資産の購入のために使用されたとみなされるため(IAS23号14項)、資産化する必要があります。
資産化すべき金額は以下のとおり計算されます。
| (百万円) | ||
| 社債利息 | 1,250 | =75,000百万円×5%×(4/12) |
| 長期借入金利息 | 250 | =25,000百万円×3%×(4/12) |
| 短期借入金利息 | 25 | =10,000百万円×1.5%×(2/12) |
| 1,525 |

1.45%=1,525百万円/105,000百万円
年率: 4.35% = 1.45% × 12/4

689百万円=47,500百万円×4.35% × 4/12
通常、建設仮勘定の詳細(支払時期、金額、目的等)は検収時点で把握することができると思います。しかし、適格資産に係る借入費用の資産化に当たっては、資産化に適格な借入費用を識別し、資産化の開始および終了の時点を明確にするために、以下の事項を把握・集計しておくことが必要になりますので留意が必要です。